位置ベクトルの利用

座標空間において,\(3\)点\(A(0,1,1),B(2,2,3),C(4,0,2)\)を通る平面に関して,点\(P(9,1,1)\)と対称な点の座標を求めなさい.

(実用数学検定\(1\)級 計算技能検定)

数検の計算問題ですが,「対称点の座標が欲しい」というのは大学入試問題でもよく出会うシチュエーションだと思います.いろいろな解法が考えられますが,ここでは位置ベクトルを用いて求めてみます.作戦はこうです:

求める点の座標を\(P’\)とします.位置ベクトルの定義により,空間上の座標\(P’\)とベクトル\(\overrightarrow{OP’}\)の成分は1対1に対応してますから,\(\overrightarrow{OP’}\)を求まるということそれは空間上の座標\(P’\)が求まることに等しい.そこで\(\overrightarrow{OP’}\)を求めることにします.点\(P\)から平面上に下した垂線の足の座標を\(H\)とおけば,\(\overrightarrow{OP’}=\overrightarrow{OP}+2\overrightarrow{PH}\)とできます.\(\overrightarrow{PH}\)を求めます.

ここで,正射影ベクトル\((\overrightarrow{AP}\cdot\overrightarrow{e})\overrightarrow{e}\)は\(\overrightarrow{HP}\)に等しい(\(\overrightarrow{e}\)は平面に垂直な単位ベクトル,外積によって直ちに求まる).したがって\begin{align*}
\overrightarrow{OP’}=&\overrightarrow{OP}+2\overrightarrow{PH}\\
=&\overrightarrow{OP}-2(\overrightarrow{AP}\cdot\overrightarrow{e})\overrightarrow{e}
\end{align*}となる.\(\overrightarrow{AP}=\left(\begin{array}{c}9\\0\\0\end{array}\right)\),そして\(\overrightarrow{e}=\dfrac{1}{3}\left(\begin{array}{c}1\\2\\-2\end{array}\right)\)であるから,
\begin{align*}
\overrightarrow{OP’}=&\left(\begin{array}{c}9\\1\\1\end{array}\right)-2\left(\left(\begin{array}{c}9\\0\\0\end{array}\right)\cdot \dfrac{1}{3}\left(\begin{array}{c}1\\2\\-2\end{array}\right)\right)\dfrac{1}{3}\left(\begin{array}{c}1\\2\\-2\end{array}\right) = \left(\begin{array}{c}7\\-3\\5\end{array}\right)
\end{align*}したがって求める座標は\((7,-3,5)\)と求まります.

「座標が欲しければ位置ベクトル調べればいいじゃん」というシンプルな発想で片付き,また未知数を設定する必要もなく,計算量も少ない.そして何よりその「(空間上の)座標を知りたい」なんて状況はそれこそ頻繁に出会うシチュエーションです(サイクロイド等の媒介変数表示,複素数の回転など).これが位置ベクトルの‘嬉しい点’であり,位置ベクトルを学ぶ意味だと思う.しかし教科書ではこれを強調しないし,教える側も教科書に右ならえ….が,受験生としては空間上の座標を求める際の強力な手法としてぜひ常識としてほしい手法の一つです.