シグマ計算の工夫

教科書には次の式が公式として載っています.\[\sum^n_{k=1}ar^{n-1}=\frac{a(1-r^n)}{1-r}\]これは「公式」なのだから覚えるべきなのでしょうか?

結論から言えば,これは覚えるべき式ではありません.次のように考えましょう:

\[\sum\text{の後ろが\(r^{n}\)の形をしている}\]
ことからこれは等比数列の和であることが見て取れます.ここが最大のポイント.
等比数列の和の公式を思い出しましょう.等比数列の和の公式で必要な情報は,初項,公比,項数,の3つの情報でした.それらさえ分かればいい.\(\sum^n_{k=1}ar^{n-1}\)から読み取ってみましょう.

初項は?\(ar^{n-1}\)に\(n=1\)を代入すればよいでしょう.\(ar^{1-1}=ar^{0}=a\)です.

公比は?これは式の形からただちに\(r\)と分かります.

項数は?\(\sum^n_{k=1}\),すなわち項は\(1\)から\(n\)までありますから\(n\)個です.

したがって,等比数列の和の公式にこれらを代入し,\[\frac{a(1-r^n)}{1-r}\]が得られます.

練習に次の問題をやってみましょう.

\[(1)~\sum^{10}_{k=6}2\cdot 3^k\hspace{40mm}(2)~\sum^{2n-1}_{k=m}5^{2k-1}\]

\((1)\)

初項は?\(2\cdot 3^k\)に\(k=1\)と代入すればよいでしょう.\(2\cdot 3^1=6\)です.

公比は?式の形から,\(3\)です.

項数は?\(10-6+1=5\)です.

したがって,求める和は\[\frac{6(1-3^5)}{1-3}=\frac{6(3^5-1)}{2}=3^6-3=726\]となります.

\((2)\)

初項は?\(5^{2k-1}\)に\(k=m\)と代入すればよいでしょう.\(5^{2m-1}\)です.

公比は?\(5^{2k-1}=5^{2k}\cdot5^{-1}=\frac{1}{5}25^k\)であることに注意して,\(25\)です.

項数は?\((2n-1)-m+1=2n-m\)です.

したがって,求める和は\[\frac{5^{2m-1}(1-25^{2n-m})}{1-25}=\frac{5^{2m-1}(25^{2n-m}-1)}{24}\]となります.

以上,解答の過程に着目して欲しいのですが「\(\sum ar^{n-1}\)の公式」など必要ありませんし,覚えていても上ような形に添わないため使い物にすらなりません.

一般に,教科書が「公式」だと言っているから必ず覚えてなくてはならない,という訳では決してありません.教科書で「覚えろ」と言わんばかりの記述であっても,それが本当に覚える価値のある式なのか,それとも導出過程さえ押さえればいい式なのか,自分の頭で考え,疑う癖をつけることは数学を学ぶ上では非常に大事です.

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