部分積分の公式

部分積分法\[\int f(x)g(x)dx=F(x)g(x)-\int F(x)g'(x) dx\]

(証明)

積の微分法より\[(F(x)g(x))’=f(x)g(x)+F(x)g'(x)\]
この式は「微分して\(f(x)g(x)+F(x)g'(x)\)になるような関数が,\(F(x)g(x)\)」ということですから,不定積分が原始関数を表すことを思い出すと\[F(x)g(x)=\int \big( f(x)g(x)+F(x)g'(x) \big)dx\]と書けます.不定積分の線形性より,
\[F(x)g(x)=\int f(x)g(x)dx+\int F(x)g'(x) dx\]
移項すると,\[\int f(x)g(x)dx=F(x)g(x)-\int F(x)g'(x) dx\](証明終)

教科書等だと部分積分の公式は\[\int f'(x)g(x)dx=f(x)g(x)-\int f(x)g'(x) dx\]などと書かれていることが多いので,「まず被積分関数(の一部)を\(f'(x)\)の形にしてから公式を適用する」と認識されがちですが,その使い方はちょっと面倒だと思います.そうではなく,上のように\[\int f(x)g(x)dx=F(x)g(x)-\int F(x)g'(x) dx\]と認識しておけば,結局「片方\(f(x)\)の原始関数(の1つ)を求めて,もう片方\(g(x)\)を微分する」と読め,やるべきことが明解です.もちろん,やっていることは同じなんですがこんな地味なレベルでの認識の違いで覚えやすさ,計算のスピードが変わってくるので意外と大事です.

覚え方:代ゼミの荻野暢也先生の言葉をお借りすれば…「片方積分して,放っておかれたほう微分して引く積分」です!(僕はこの荻野先生の覚え方で覚えました^^;.部分積分するときは未だにこれを頭の中で唱えながら部分積分しています.おすすめです)

ベータ関数と\(\frac{(\beta-\alpha)^3}{6}\)公式

天下りですが以下のような\(2\)変数関数\(B(p,~q)\)を定義します.

ベータ関数\[\displaystyle B(p,~q):=\int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\]

(「\(:=\)」は「左辺を右辺で定義する」という意味です.)
この関数をベータ関数と呼びます.こいつを計算してみましょう.

直接的に求まりそうにないので,部分積分してみます(\(x^{p-1}\)を積分側,\((1-x)^{q-1}\)を微分側にしましょう).すると,

\[\displaystyle
\begin{align*}
&\int^1_0 x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\\
=&\biggl[\frac{x^p}{p}(1-x)^{q-1}\biggl]^1_0+\int^1_0\frac{x^p}{p}(q-1)(1-x)^{q-2}dx\\
=&\frac{q-1}{p}\int^1_0x^p(1-x)^{q-2}dx\\
=&\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)
\end{align*}
\]
より,
\[B(p,~q)=\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)\]という漸化式を得ます.この漸化式から,
\[
\begin{align*}
&B(p,~q)=\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)\\
&B(p+1,~q-1)=\frac{q-2}{p+1}B(p+2,~q-2)\\
&B(p+2,~q-2)=\frac{q-3}{p+2}B(p+3,~q-3)\\
&B(p+3,~q-3)=\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\\
&\hspace{40mm}\vdots
\end{align*}
\]

が得られますが,例えば上の四つの式から,

\[B(p,~q)=\frac{q-1}{p}\frac{q-2}{p+1}\frac{q-3}{p+2}\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\]

が得られますので,この調子で続ければ\(B(\text{☆},\text{★})\)の\(\text{★}\)がどんどん小さくなり,うまく計算が出来そうです.

では,★はどこまで下げましょうか?\(B(\text{☆},\text{★})\)の定義をみると,★は1であると計算しやすいですね.なぜなら\((1-x)^{q-1}\)が\(0\)乗で1になってくれますから.

\(B(\text{☆},\text{★})\)の\(\text{★}\)が1になるまで下げてみます.

\[
\begin{align*}
&B(p,~q)=\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)\\
&B(p+1,~q-1)=\frac{q-2}{p+1}B(p+2,~q-2)\\
&B(p+2,~q-2)=\frac{q-3}{p+2}B(p+3,~q-3)\\
&B(p+3,~q-3)=\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\\
&\hspace{40mm}\vdots\\
&B(p+(q-2),~q-(q-2))=\frac{q-(q-1)}{p+(q-2)}B(p+(q-1),~q-(q-1))
\end{align*}
\]
(4行目の\(\displaystyle B(p+3,~q-3)=\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\)の「\(4\)」を「\(q-1\)」に,「\(3\)」を「\(q-2\)」に置き換えるイメージ!)

したがって,

\[
\begin{align*}
B(p,~q)&=\frac{q-1}{p}\frac{q-2}{p+1}\frac{q-3}{p+2}\frac{q-4}{p+3}~\cdots~\frac{q-(q-1)}{p+(q-2)}B(p+(q-1),~q-(q-1)\\
&=\frac{q-1}{p}\frac{q-2}{p+1}\frac{q-3}{p+2}\frac{q-4}{p+3}~\cdots~\frac{1}{p+q-2}B(p+q-1,~1)\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}B(p+q-1,~1)\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}\int^1_0x^{p+q-2}(1-x)^0dx\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}\int^1_0x^{p+q-2}dx\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}\biggl[\frac{x^{p+q-1}}{p+q-1}\bigg]^1_0\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}
\end{align*}
\]

できました.\(\displaystyle B(p,~q)=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\).定義より\(\displaystyle B(p,~q)=\int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\)でしたから,結局,

\[\displaystyle \int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\]

が得られたことになります.

さて次に,\(\displaystyle \int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\)の積分区間\([0,~1]\)が,\([\alpha,~\beta]\)となるような置換を考えてみましょう.すなわち右のような置換です(新たな変数\(t\)としました).この場合,どのように置換すればよいでしょうか?\(t\)が\(\alpha\)のとき\(x\)が\(0\)ですから,さしあたり\[x=t-\alpha\]という置換が思い浮かびます.しかし,\(t=\beta\)のとき\(x\)は\(\beta-\alpha\)ではなく\(1\)であってほしい.であれば,\(t-\alpha\)を\(\beta-\alpha\)で割ればいいのでは?と考え,\[\displaystyle x=\frac{t-\alpha}{\beta-\alpha}\]という置換に気付きます.置換してみましょう.\(\displaystyle dx=\frac{1}{\beta-\alpha}dt\)ですから,

\[
\begin{align*}
\displaystyle \int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx&=\int^{\beta}_{\alpha}\left(\frac{t-\alpha}{\beta-\alpha}\right)^{p-1}\left(1-\frac{t-\alpha}{\beta-\alpha}\right)^{q-1}\frac{1}{\beta-\alpha}dt\\
&=\frac{1}{(\beta-\alpha)^{p+q-1}}\int^{\beta}_{\alpha}(t-\alpha)^{p-1}(\beta-t)^{q-1}dt
\end{align*}
\]

ゆえに,

\[\displaystyle \frac{1}{(\beta-\alpha)^{p+q-1}}\int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)^{p-1}(\beta-x)^{q-1}dx=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\]

すなわち,

\[\displaystyle \int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)^{p-1}(\beta-x)^{q-1}dx=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}(\beta-\alpha)^{p+q-1}\]

が得られたことになります(ダミー変数を\(t\)から見慣れた\(x\)に変えました).

…で,結局何がいいたいの??というと…

この式の\((p,~q)\)に例えば\((2,~2),~(2,~3)\)と代入してみてください.前者は
\[\displaystyle \int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)(\beta-x)dx=\frac{1}{6}(\beta-\alpha)^3\]

後者は
\[\displaystyle \int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)(\beta-x)^2dx=\frac{1}{12}(\beta-\alpha)^4\]
となり,例の有名公式が得られます.つまり,数学Ⅱで学ぶ例の有名公式は,実はベータ関数の特殊な場合でもあった,ということがわかります.

このベータ関数は大学の微分積分学で学ぶかと思いますが,実は今回のこの記事の内容自体が大学入試問題として出題されたこともあります.実際,上の解説を見て分かるように導出には部分積分,漸化式,置換積分と高校数学範囲の知識しか使っていません.

命題(条件)の分配法則

命題や条件は,分配することができます.すなわち,
\[(p\lor q)\land r \Longleftrightarrow (p \land r)\lor (q \land r)\]や\[(p\land q)\lor r \Longleftrightarrow (p \lor r)\land (q \lor r)\]などが成り立ちます.

証明

真理表で確認します.
まず,\(p,~q,~r\)の真偽は\(2^3=8\)通りあることに注意して,

と書けます.見やすさのためにFを赤色にしました.
次に\(p\lor q\)を書き,その列を埋めましょう.\(p\)の列と\(q\)の列に着目して,\(\lor\)の定義に従うと,

と書けます.次に\((p\lor q)\land r\)を書き,その列を埋めます.\(p\lor q\)と\(r\)の列に着目して,\(\land\)の定義に従うと,

と書けます.
今度は\( (p \land r)\lor (q \land r)\)について調べます.そのためにはまず\((p \land r)\)と\((q \land r)\)を調べなくてはなりません.なのでまず,\(p\lor r\)と\(q \land r\)を書き,それぞれの列を埋めましょう.\(p\)の列と\(r\)の列,そして\(q\)の列と\(r\)の列に着目して\(\land\)の定義に従うと,

と書けます.さて,準備ができたので\( (p \land r)\lor (q \land r)\)を書いてその列を埋めていきましょう.先ほど書いた\( (p \land r)\)と\((q \land r)\)の列に着目して\(\lor\)の定義に従うと,

と書けます.

さて,ここで\((p\lor q)\land r\)と\((p \land r)\lor (q \land r)\)の列に着目しましょう.すると,真理値が同じですね.同値\(\leftrightarrow\)の定義より,\((p\lor q)\land r\)と\((p \land r)\lor (q \land r)\)が同値であることが分かります.

これで,\((p\lor q)\land r \Longleftrightarrow (p \land r)\lor (q \land r)\)であることが証明できました.同様にして,\((p\land q)\lor r \Longleftrightarrow (p \lor r)\land (q \lor r)\)が証明できます.

「でない」「かつ」「または」「ならば」の定義

最初に「命題」「条件」という言葉の確認から.

命題:正しいか正しくないかを一意的に判定できる主張
条件:変数(変項ともいいます)を含む命題

これらは高校生は数学Ⅰで既習だと思います.

以下,\(p,~q\)を命題とします.\(\overline{p},~p\land q,~p \lor q,~p\rightarrow q\)を改めて定義します.

定義

\(p\land q\)
\(p\)と\(q\)が両方真のときのみ真で,その他の場合はすべて偽となるような命題.この命題を「\(p\)かつ\(q\)」と呼び,\(p \land q\)と表す.

\(p \lor q\)
\(p\)と\(q\)が両方偽ときのみ偽で,その他の場合はすべて真となるような命題.この命題を「\(p\)または\(q\)」と呼び,\(p \land q\)と表す.

\(\overline{p}\)
\(p\)が真のときに偽で\(p\)が偽のときに真となるような命題.この命題を「\(p\)でない」あるいは「\(p\)の否定」と呼び,\(\overline{p}\)あるいは\(\lnot{p}\)と表す.

\(p\rightarrow q\)
\(p\)が真で\(q\)が偽のときのみ偽で,その他の場合はすべて真となるような命題.この命題を「\(p\)ならば\(q\)」と呼び,\(p\rightarrow q\)と表す.

上が\(p\land q,~p \lor q,~\lnot p,~p\rightarrow q\)の定義です.…が,とても見にくいですね.そこで以下のような表でまとめてみます.Tは真(True)を,Fは偽(False)を表すとします.


大分見やすくなりました.これを,「真理表(または真理値表)」と呼びます.以後,\(p\land q,~p \lor q,~\lnot p,~p\rightarrow q\)を上の表に従う命題とし,これらの表に基づき各種命題の真偽判定していくことになります.

(補足1)
ところで,この定義の中で唯一違和感があるとしたら,「『\(p\)ならば\(q\)』は,\(p\)が偽のとき\(q\)の真偽に関わらず真とする」という点かと思います.定義なんだからつべこべ言わず受け入れましょう,と言いたいところですが(「定義する」と言われたら受け入れるしかない?),あえて感覚的な説明をするとしたら,次のように考えると受け入れやすいかもしれません:

とある家庭で父親が息子に言いました「テストで満点をとったら,スマホを買ってあげるよ」と.

このとき,次の4つのケースが考えられます.

    1. 息子が満点をとり,父親がスマホを買ってあげる
    2. 息子が満点をとり,父親がスマホを買ってあげない
    3. 息子は満点をとれず,父親がスマホを買ってあげる
    4. 息子は満点をとれず,父親がスマホを買ってあげない

このうち,父親が「約束を守った・破った」ことになるのはどれかを考えてみます.1.これは父親はきちんと約束を守っています.2.これは父親は明らかに約束を破っていますね.さて,3と4についてはこのように考えられないでしょうか:

そもそも息子が満点を取ってない以上,父親が買ってあげようとも(満点とれなかったのにラッキーですね)買ってあげずとも,約束を破ったことにはならない,すなわち約束を守ったことになる.

このように考えると「ならば」を上のように定義することが感覚的に受け入れられるのではないでしょうか.

(補足2)
命題\[p \longrightarrow q\]
が真であることを,
\[p \Longrightarrow q\]
と表します.ですから,「\(p \Rightarrow q\)」は「\(p \rightarrow q\)が真である(成り立つ)」と読み替えられます.

ビュッフォンの針の問題

\(2h\)の間隔で無数の平行線が引いてある平面に,長さ\(2l\)の針を1本無作為に落とすとき,この針が平行線と交わる確率\(p\)を求めよ.ただし,\(l<h\)とする.

「ビュッフォンの針問題」と呼ばれる問題です.確率の問題なのに\(\pi\)が出てくるのでなんか不思議だよねーみたいな文脈で語られることが多いと思います.今回はこの確率を実際に求めてみます.

まず,「針が交わるか交わらないか」がどんな要素に依存するかを考えてみます.それは単純に,針がどこに落ちたか,そして,落ちた針がどんな角度で横たわっているか,という2つの要素であることは容易に予測できます.

ここで,前者「針がどこに落ちたか」について少し掘り下げて考えてみましょう.「どこに」というのはいわゆる位置情報ですから,縦・横という情報を含みます.「縦方向においてどの位置にいて・横方向においてどの位置にいるか」ということですね.しかし,この問題においては横方向においてどこにいるかによって針が交わるか交わらないかというその事実が変わることはありません.

したがって「針がどこに落ちたか」に関しては縦方向のみを考えればよいことになります.

「針がどこに落ちたか(縦方向)」と「落ちた針がどんな角度で横たわっているか」をそれぞれ文字で表すことにします.

まず,「針がどこに落ちたか(縦方向)」:針の中心から,最寄りの平行線までの距離を\(d\)とします.

今,「最寄りの」と定義したので,この\(d\)は\(0\leq d \leq h\)です.

次に「落ちた針がどんな角度で横たわっているか」:最寄りの平行線と針のなす角を\(\theta\)とおきます.\(0\leq \theta \leq \pi\)です.

以上の準備の下に,「針が平行線と交わる」ことを数式に翻訳しましょう.図を用いて考えてみます.

このようにみると,どうやら\[d\leq l\sin\theta\]のとき針が交わることが分かります.

次に確率を求めます.

ここで,前述したように「針が平行線と交わるか交わらないか」は(平行線との縦方向の)距離\(d\)と角度\(\theta\)に依存するのでした.この二つの要素が問題なのですから,以下のような横軸が\(\theta\),縦軸が\(d\)であるような座標系を考えます.


この座標系における点のひとつひとつが,落ちた針の状況を表しています.例えば\(\left(\frac{\pi}{4},~\frac{h}{8}\right)\)なら,「最寄りの平行線からの距離が\(\frac{h}{8}\)で,その直線とのなす角が\(\frac{\pi}{4}\)」,例えば\(\left(\frac{5}{6}\pi,~\frac{3}{4}h\right)\)なら,「最寄りの平行線からの距離が\(\frac{3}{4}h\)で,その直線とのなす角が\(\frac{5}{6}\pi\)」のように.


まず,針と平行線が交わるような点\((\theta,~d)\)たちを求めてみましょう.上で見たように「針と平行線が交わるような点\((\theta,~d)\)」とは,「\(d \leq l\sin\theta\)をみたす\((\theta,~d)\)」です.図示すると,下図の赤い点たちですね(イメージ).

です.この赤い部分の面積を求めると,

\[\displaystyle \int^{\pi}_0 l\sin\theta d\theta=l\Bigl[-\cos\theta\Bigl]^{\pi}_0=2l\quad\cdots(1)\]

となります.

他方,起こり得るすべての点\((\theta,~d)\)たちはどんな点たちでしょうか.今,\(\theta\)軸が\(0\leq \theta \leq \pi\),\(d\)軸が\(0\leq d \leq h\)ですから,起こり得るすべての点の集合は以下のような図になります(イメージ).

この部分の面積は\[h\times \pi=\pi h\quad\cdots(2)\]です.

以上より,題意の確率は,\((2)\)の面積を分母とし,\((1)\)の面積を分子として割合を作り,

\[\frac{\text{(1)の面積}}{\text{(2)の面積}}=\frac{2l}{\pi h}\]

となります.

以前,生徒に聞いたのですが,とあるクイズ番組で東大生がこの問題を問われた瞬間に結果を即答したそうです^^;結果を覚えていたのか,それとも・・・?

法線ベクトル

\[
\begin{align*}
&ax+by+c=0\\
\Longleftrightarrow~&a\left(x+\frac{c}{2a}\right)+b\left(y+\frac{c}{2b}\right)=0\\
\Longleftrightarrow~&\left(\begin{array}{c}a\\b\end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c}x+\frac{c}{2a}\\y+\frac{c}{2b}\end{array}\right)=0\\
\Longleftrightarrow~&\left(\begin{array}{c}a\\b\end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c}x-\left(-\frac{c}{2a}\right)\\y-\left(-\frac{c}{2b}\right)\end{array}\right)=0\\
\end{align*}
\]
最後の式の主張は「点\((x,~y)\)と点\(\left(-\frac{c}{2a},~-\frac{c}{2b}\right)\)を結んだベクトルが,ベクトル\((a,~b)\)と垂直になる」ということ(内積が0ですから).そのような条件をみたす点\((x,~y)\)の集まりは当然,直線となるわけですが,同値変形の元の式を見ると,その直線は\(ax+by+c=0\)という直線です.したがって直線\(ax+by+c=0\)に垂直なベクトル(の1つ)が\((a,~b)\),であると言えます.

「\(ax+by\)という1次結合の形が現れたら,内積とみる」という視点は受験数学においても大切な視点です.

完全順列(その3・一般化)

前回前々回は「5人のプレゼント交換会」を行いました.

「\(n\)人のプレゼント交換会」ならどうでしょうか?この場合の完全順列の総数を求めてみましょう.

以下,\(i\)は自然数とします.

完全順列とは,「\(i\)番目に\(i\)が来ないような並び方\((1\leq i \leq n)\)」,すなわち\[\text{\(1\)以上\(n\)以下のすべての\(i\)に対して,\(i\)番目に\(i\)が来ない}\quad\cdots(\ast)\]という意味でした.この総数を求めたい,というわけですね.

今まで見てきた通り,これが一筋縄ではいかない問題でした.まして今回は\(n\)人です.そこで,お馴染みのアイデア:直接求めるのが難しいのなら,全体からその否定を除けばいい,という「余事象」の考え方で攻めてみることにしましょう.というわけで,\((\ast)\)の否定を考えてみます.

「すべての」の否定は「存在する」でしたから(なぜ?),\((\ast)\)の否定は次のようになります.\[\text{\(i\)番目が\(i\)になる\(1\)以上\(n\)以下の\(i\)が存在する}\quad\cdots(\ast\ast)\]

この総数を数え,そして並べ替えの総数\(n!\)から引いてやりましょう.ここで,\(i\)番目が\(i\)となるような事象を\(A_i~(1\leq i \leq n)\)とおくことにします.すると\((\ast\ast)\)となる総数は
\[n(A_1\cup A_2\cup A_3 \cup \cdots \cup A_n)=n \left( \bigcup^n_{i=1}A_i \right)\]と表せることになります.したがって,求める完全順列の総数は
\[n!-n\left(\bigcup^n_{i=1}A_i\right)\]
となります.さて,この式の二項目\(n(\bigcup^n_{i=1}A_i)\)ですが,これは以下のように計算できます(なぜ?).

\[
n\left(\displaystyle\bigcup_{i}^{n} A_i\right)=\displaystyle\sum_{i}^{n} n(A_i)-\displaystyle\sum_{i<j}^{n}n(A_i \cap A_j)+\displaystyle\sum_{i<j<k}^{n}n(A_i \cap A_j \cap A_k)-\cdots+(-1)^{n-1}\displaystyle\sum^{n}_{i<j<\cdots} n(A_i \cap A_j \cap \cdots )
\]

ここで,\[\displaystyle\sum_{i}^{n} n(A_i),~\sum_{i<j}^{n}n(A_i \cap A_j),~\sum_{i<j<k}^{n}n(A_i \cap A_j \cap A_k),\cdots,\sum^{n}_{i<j<\cdots} n(A_i \cap A_j \cap \cdots)\]を求めてみると,
\[
\begin{align*}
&\displaystyle\sum_{i}^{n} n(A_i)={ }_n\mathrm{C}_1\times (n-1)!\\
&\sum_{i<j}^{n}n(A_i \cap A_j)={ }_n\mathrm{C}_2\times(n-2)!\\
&\sum_{i<j<k}^{n}n(A_i \cap A_j \cap A_k)={ }_n\mathrm{C}_3\times(n-3)!\\
&\qquad\qquad\vdots\\
&\sum^{n}_{i<j<\cdots} n(A_i \cap A_j \cap \cdots)={ }_n\mathrm{C}_n\times(n-n)!
\end{align*}
\]
ですから結局,
\[n\left(\displaystyle\bigcup_{i}^{n} A_i\right)={ }_n\mathrm{C}_1\times (n-1)!-{ }_n\mathrm{C}_2\times(n-2)!+{ }_n\mathrm{C}_3\times(n-3)!-\cdots+(-1)^{n-1}{ }_n\mathrm{C}_n\times(n-n)!\]
よって,求める完全順列の総数は,
\[
\begin{align*}
n!-n\left(\bigcup^n_{i=1}A_i\right)=~&n!-\left({ }_n\mathrm{C}_1\times (n-1)!-{ }_n\mathrm{C}_2\times(n-2)!+{ }_n\mathrm{C}_3\times(n-3)!-\cdots+(-1)^{n-1}{ }_n\mathrm{C}_n\times(n-n)!\right)\\
=~&n!-\left(\frac{n!}{1!}-\frac{n!}{2!}+\frac{n!}{3!}-\cdots+(-1)^{n-1}\frac{n!}{n!} \right)\\
=~&n!-\frac{n!}{1!}+\frac{n!}{2!}-\frac{n!}{3!}+\cdots+(-1)^{n}\frac{n!}{n!} \\
=~&n!\left(1-\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}+\cdots+(-1)^{n}\frac{1}{n!}\right)\\
=~&n!\sum^{n}_{k=0}\frac{(-1)^k}{k!}\\
\end{align*}
\]
となります.

実験してみましょう.\(n=5\)と代入してみます.
\[
\begin{align*}
5!\sum^{5}_{k=0}\frac{(-1)^k}{k!}&=5!\left(1-\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}-\frac{1}{5!}\right)\\
&=5\cdot 4\cdot 3-5\cdot 4 +5-1\\
&=60-20+5-1\\
&=44
\end{align*}
\]

おっけい!

「すべて」「存在する」の否定

以下,\(x\in \{x_1,~x_2,~x_3,\cdots ,x_n\}\)とする.

\(\overline{\forall x~p(x)} \Longleftrightarrow \exists x~\overline{p(x)}\)

証明

\[
\begin{align*}
&\overline{\forall x~p(x)}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{p(x_1)\land p(x_2)\land p(x_2)\land \cdots \land p(x_n)}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{p(x_1)}\lor \overline{p(x_2)}\lor \overline{p(x_2)}\lor \cdots \lor\overline{p(x_n)}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x~\overline{p(x)}&\textbf{(証明終)}
\end{align*}
\]

\(\overline{\exists x~p(x)} \Longleftrightarrow \forall x~\overline{p(x)}\)

証明

\[
\begin{align*}
&\overline{\exists x~p(x)}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{p(x_1)\lor p(x_2)\lor p(x_2)\lor \cdots \lor p(x_n)}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{p(x_1)}\land \overline{p(x_2)}\land \overline{p(x_2)}\land \cdots \land\overline{p(x_n)}\\
\Longleftrightarrow~&\forall x~\overline{p(x)}&\textbf{(証明終)}
\end{align*}
\]

\(\forall\)(すべての)を否定すると\(\exists\)(存在する)となり,\(\exists\)(存在する)を否定すると\(\forall\)(すべての)となります.

点と直線の距離の公式の証明

点と直線の距離の公式を証明してみましょう.

直線\(l:ax+by+c=0\)と,この直線上にない点を\(\mathrm{P}(x_0,~y_0)\),そして下図に示す直線\(l\)上の点を\(\mathrm{A}(p,~q)\)とします.

まず\(l\)の法線ベクトルを求め,図示します.法線ベクトルは\(x\)と\(y\)との係数から\((a,~b)\)でしたね(なぜ?).また,\(\overrightarrow{\mathrm{AP}}\)を図示しておきます.(下図では\((a,~b)\)を列ベクトルで表記しています.)

求めたいものも図示しておきましょう.それは,

上図の赤い線分\(\mathrm{AH}(=|\overrightarrow{\mathrm{AH}}|)\)ですね.

気づいたでしょうか?これはほかならぬ正射影ベクトル(の大きさ)です.ですから結局,「点と直線の距離は,正射影ベクトルを求めて,その大きさを求めればよい」と分かります.

ここで正射影ベクトルの公式の出番です!

正射影ベクトルを求めるために,ベクトル\((a,~b)\)を正規化(大きさを1にすること)しておきましょう:
\[\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}
\left(\begin{array}{c}
a \\
b \\
\end{array}\right)
\]
このベクトルを\(\overrightarrow{n}\)とおきます.すると,正射影ベクトルの公式から,\(\overrightarrow{\mathrm{AH}}\)は\[(\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{n})\overrightarrow{n}\]と書けますね.\[\overrightarrow{\mathrm{AP}}=\left(\begin{array}{c} x_0\\ y_0\end{array}\right)-\left(\begin{array}{c} p\\ q\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c} x_0-p\\ y_0-q\end{array}\right)
\]
ですから,計算すると
\[
\begin{align*}
&\overrightarrow{\mathrm{AH}}=(\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{n})\overrightarrow{n}\\
=&\left\{\left(\begin{array}{c} x_0-p\\ y_0-q\end{array}\right)\cdot\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}
\left(\begin{array}{c}
a \\
b \\
\end{array}\right)\right\}\overrightarrow{n}\\
=&\frac{a(x_0-p)+b(y_0-q)}{\sqrt{a^2+b^2}}\overrightarrow{n}
\end{align*}
\]
\(\mathrm{AH}=|\overrightarrow{\mathrm{AH}}|\)ですから,\(\left| \overrightarrow{n}\right|=1\)であることに注意して,
\[
\begin{align*}
\mathrm{AH}=&|\overrightarrow{\mathrm{AH}}|\\
=&\left|\frac{a(x_0-p)+b(y_0-q)}{\sqrt{a^2+b^2}}\overrightarrow{n}\right|\\
=&\frac{|ax_0+by_0-ap-bq|}{\sqrt{a^2+b^2}}|\overrightarrow{n}|\\
=&\frac{|ax_0+by_0-ap-bq|}{\sqrt{a^2+b^2}}
\end{align*}
\]
ここで,\((p,~q)\)は直線\(l\)上の点でしたから,\[ap+bq+c=0\quad \text{すなわち}\quad c=-ap-bq\]が成り立ちます.したがって,上の式は結局
\[\mathrm{AH}=\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\]となります.

この証明のいいところは,まず簡潔で記述量(計算量)が少ない(=かっこいい)という点,それにこの公式の三次元バージョンとでもいいますか「点の平面の距離の公式」を導出する際もまったく同じように応用できるという点です.他にも,数学検定1級1次の問題でこのアイデアが使える問題がありました.いずれ紹介したいと思います.

また,この証明を通して「正射影ベクトルの公式」の使いどころも感じて貰えたかと思います.

今回はとりあえずここまでにして,「点と平面の距離の公式」も後ほど記事にしてみたいと思います.

完全順列(その2)

前回のプレゼント交換会を次ので考えます.例えば前回の例
\[
\left(
\begin{array}{ccc}
1 & 2 & 3 & 4 & 5\\
2 & 1 & 4 & 5 & 3
\end{array}
\right)
\]であれば

と表し,
\[
\left(
\begin{array}{ccc}
1 & 2 & 3 & 4 & 5\\
2 & 3 & 4 & 5 & 1
\end{array}
\right)
\]であれば

といった具合です.

以下,\(n\)個の完全順列の総数を\(f(n)\)で表すことにします(なので求めたいものは\(f(5)\)).また,\(i\)行\(j\)列にある欄を\((i,~j)\)と表すことにします.

ここで,まず1行目に着目します.1行目で〇が入り得るのは,2,3,4,5のいずれかです.

ここでは\((1,~2)\)に〇が入る場合を考えてみます.

こんな場合です.

次に,2行目に着目します.ここでは,

(ⅰ)\((2,~1)\)に〇が入る場合

と,

(ⅱ)\((2,~1)\)に入らない場合(\((2,~3)\)か\((2,~4)\)か\((2,~5)\)に入る場合)

が考えられますので,場合分けしてみます.表で表すと,

という具合です.

まず(ⅰ)の場合について考察してみます.
この場合,下図の黄色と緑のライン上に〇が来ることはありません(〇が同じ行または列でダブるとそれはプレゼントを2つ受け取るor与えることを意味してしまうから).なので,どうせ〇が来ないのならいっそのこと消しゴムで消して繋げてしまいましょう.

そうして出来上がった表を眺めると,この完全順列の総数は\(f(3)\)となることがわかります.これで(ⅰ)のときすなわち\((2,~1)\)に〇が入る場合その完全順列の総数は\(f(3)\)であることが分かりました.

次に(ⅱ)の場合について考えてみます.(ⅰ)のときと同様に考え,

出来上がった表を眺めると,この完全順列の総数は\(f(4)\)となることがわかります.これで(ⅱ)のとき\((2,~1)\)に〇が入らない場合その完全順列の総数は\(f(4)\)であることが分かりました.

ここまででしたことをまとめます.

最初の場合分けで4通り,この4通りそれぞれにおいて,(ⅰ)タイプと(ⅱ)タイプに分類したので,結局,求める\(f(5)\)は,
\[f(5)=4(f(3)+f(4))\]
となります.

以上の議論を\(5\)人のプレゼント交換会ではなく,\(n\)人で置き換えると,
\[f(n+2)=(n+1)(f(n)+f(n+1))\]という漸化式が得られます.これを利用すれば,

\[
\begin{align*}
&f(3)=2(f(1)+f(2))\\
&f(4)=3(f(2)+f(3))\\
&f(5)=4(f(3)+f(4))\\
\end{align*}
\]

\(f(1)=0,~f(2)=1\)ですから,順次計算することで
\(f(3)=2,~f(4)=9,~f(5)=44\)となり答えを得ます.

このように考えると,プレゼント交換会の人数がそれなりに多くても,漸化式\(f(n+2)=(n+1)(f(n)+f(n+1))\)を考えることで単純な計算により完全順列の総数を算出できることが分かります.

次は,完全順列の総数の一般化を考えてみます.

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