減衰曲線

減衰曲線\[y=e^{-x}\sin x\]


この曲線を減衰曲線といいます。入試でよく見られるのはこれに絶対値をとったもの,すなわち\[|y|=|e^{-x}\sin x|=e^{-x}|\sin x|\]です.これを\(f(x)\)とおき,その性質について見てみます.

\(f(x):=e^{-x}|\sin x|\)とする.\(f(x+\pi)\)について調べる.
\begin{align*}
f(x+\pi)&=e^{-(x+\pi)}|\sin (x+\pi)|\\
&=e^{-\pi}e^{-x}|\sin x|\\
&=e^{-\pi}f(x)
\end{align*}
これは翻訳すればいわば「現在地点より\(\pi\)だけ先の関数の値は,現在の関数の値を\(e^{-\pi}\)倍したもの」ということです.

これを減衰曲線の性質としてまとめておきます.

減衰曲線の性質\(f(x):=e^{-x}|\sin x|\)とおくと,\[f(x+\pi)=e^{-\pi}f(x)\tag{1}\]が成り立つ.

このことから,\(y=f(x)~((k-1)\pi \leq x \leq k\pi,k\in \mathbb{N})\)と\(x\)軸で囲まれる部分の面積を\(S(k)\)とおくことにすれば,となりの山に対して縦に\(e^{-\pi}\)だけ縮むわけですから,

\[S(k+1)=e^{-\pi}S(k)\tag{2}\]

が言えることが分かります.

これは,山の面積の間には等比数列の関係があることを意味します.※直観的に明らかですが,念のため計算して確かめておくと,
\begin{align*}
S(k+1)&=\displaystyle \int_{k\pi}^{(k+1)\pi}f(x)dx=\displaystyle \int_{k\pi}^{(k+1)\pi} e^{-x}|\sin x|dx\\
&=\displaystyle \int_{(k-1)\pi}^{k\pi} e^{-(x+\pi)}|\sin(x+\pi)| dx\\
&=\displaystyle e^{-\pi}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi} e^{-x}|\sin x| dx\\
&=\displaystyle e^{-\pi}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi} f(x) dx\\
&=\displaystyle e^{-\pi}S(k)\\
\end{align*}となり確かに成り立ちます.

さて,以上の準備のもとに次の問題を考えてみましょう.

次の極限を求めよ.\[\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}\int_0^{n\pi}e^{-x}|\sin x| dx\]

【解答】
\(\displaystyle \int_0^{n\pi}e^{-x}|\sin x| dx\)は下図の曲線と\(x\)軸で囲まれる部分の面積である.

\(f(x)=e^{-x}|\sin x|\)そして\(~y=f(x)~((k-1)\pi \leq x \leq k\pi,~k = 1,2,\cdots, n)\)と\(x\)軸で囲まれる部分の面積を\(S(k)\)とおくと,\[\displaystyle \int_0^{n\pi}e^{-x}|\sin x| dx= \sum_{k=1}^n S(k)\]となる.\((2)\)により,各山の面積は初項\(S(1)\),公比\(e^{-\pi}\)の等比数列であるから,これはさらに\[\displaystyle \frac{S(1)(1-e^{-n\pi})}{1-e^{-\pi}}\]とかける.\(S(1)\)を求める.
\begin{align*}
\displaystyle S(1)&=\int_{0}^{\pi}f(x)dx\\
&=\int_{0}^{\pi} e^{-x}|\sin x| dx\\
&=\int_{0}^{\pi}e^{-x}\sin x dx\\
&=\left[\frac{-1}{2}\left(e^{-x}\sin x+e^{-x}\cos x\right)\right]_0^\pi\\
&=-\frac{1}{2}(-e^{-\pi}-1)\\
&=\frac{e^{-\pi}+1}{2}
\end{align*}したがって,求める極限は\[\frac{e^{-\pi}+1}{2}\frac{1-e^{-n\pi}}{1-e^{-\pi}}\xrightarrow{n\rightarrow \infty}\frac{e^{-\pi}+1}{2(1-e^{-\pi})}\]となる.【解答終】

\(f(x)=e^{-x}|\sin nx|\)などでも同様に「山の面積は等比数列」が成り立ちますので(調べてみましょう),多少状況が変化しても同様の方針で計算できます。

極限の有名問題

数学Ⅲ極限の有名問題の論理的側面について考えてみます.

次の等式が成り立つように,定数\(a,~b\)の値を求めよ.\[\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}+b}{x-1}=2\]

(数研出版 数学Ⅲ「関数の極限」より抜粋)

\(x\rightarrow1\)とすると,左辺は\(\frac{a+b}{0}\)となり,もし\(a+b\neq 0\)とすると左辺は発散してしまいますが,この式は「左辺の極限は2に限りなく近づく(収束する)」ということを主張した式ですから矛盾してします.したがって,\(a+b=0\)であることが必要です(必要条件).そして\(b=-a\)を元の式に代入して極限計算すると・・・というおなじみの問題です.

ここでふとギモン.必要条件なのに教科書の解答では逆の考察をしていません.必要条件は逆の考察をしなければならないんじゃなかったの・・・??

これはどういうことか,論理式を用いて考察してみます.

【解答】
\begin{align*}
&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}+b}{x-1}=2\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}+b}{x-1}=2 \land a+b=0 \quad\cdots(\ast)\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}-a}{x-1}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a(\sqrt{x}-1)}{(\sqrt{x}-1)(\sqrt{x}+1)}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a}{\sqrt{x}+1}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&\frac{a}{2}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&a=4 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&a=4 \land b=-4\\
\end{align*}
【解答終】

模式的にかくと,\(P_1\Longrightarrow P_2\)のとき,\[P_1\Longleftrightarrow P_1\land P_2\]という同値関係が成り立つから(上の\((\ast)\))逆の考察をしなくてもいいのです.

\(a=4,~b=-4\)と答えるだけなら,上記の話は全く必要のない知識でしょう.これで正答ですし.しかし,他の記事でも書いたように,分野を超えて,それも教科書レベルの問題にすら論理の話題は潜んでいるということに注目すべきです.もっとも,数学は論理によって記述されるわけですから,当然と言えば当然ですが・・・.このような背景を理解しておくことは受験だけでなくその後の数学学習に大いに役立つと思います(例えば,数学系大学1年生を苦しめるかの悪名高き\(\epsilon\delta\)論法も,結局,高校のカリキュラムに述語論理が含まれていないがためだと個人的に思います).

ちなみに,このような\(\land,~\lor,~\Rightarrow,~\lnot\)(論理積,論理和,含意,否定)といった論理記号は,教科書では主に「ベン図」により理解したと思います.しかし正確には「真理値表」という表によって定義されます.上で言った「\(P_1\Longrightarrow P_2\)のとき,\(P_1\Longleftrightarrow P_1\land P_2\)が成り立つ」という事実も,真理値表により確かめられます.