上限の定義

\(A\)を集合\(S\)の空でない部分集合とします。

上限の定義\(A\)が上に有界であるとき,もし\(A\)の上界のうちに最小元\(a\)があるならば,\(a\)を\(A\)の上限といい,\[\sup A=a\]と表す.

この定義を詳しく見ると,上限とは,

\((1)\) \(a\)は\(A\)の上界である
\((2)\) \(a\)は\(A\)の上界の最小元である

の2つで特徴付けられていることがわかります。これらを論理記号を用いて記述してみると
\begin{align*}
&\forall x\in A[x \leq a]\tag{1}\\
&\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]\Longrightarrow a\leq a^{\prime}\tag{2}
\end{align*}そこで,\((2)\)を変形してみます。すると
\begin{align*}
&\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]\Longrightarrow a\leq a^{\prime}\tag{2}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]} \lor a\leq a^{\prime}\\
\Longleftrightarrow~&a\leq a^{\prime} \lor \overline{\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{a > a^{\prime}} \lor \exists x\in A[x > a^{\prime}]\\
\Longleftrightarrow~& a > a^{\prime} \Longrightarrow \exists x\in A[x > a^{\prime}]\tag{2′}
\end{align*}つまり,\((2′)\)は「\(a\)より少しでも小さい\(a^{\prime}\)を持ってくると,その\(a^{\prime}\)よりも大きい\(A\)の元が存在してしまう」すなわち「\(a\)より少しでも小さい\(a^{\prime}\)を持ってくると,それはもはや上界ではない」ということになります。したがって上の\((1),(2)\)は

\((1)\) \(a\)は\(A\)の上界である
\((2′)\) \(a^{\prime}\)を\(a^{\prime} < a\)を満たす\(S\)の任意の元とすれば,\(a^{\prime}\)は\(A\)の上界ではない

と言い換えらえれることになります。

\(*\)\(*\)\(*\)

\((2)\)と書かれている本と\((2′)\)と書かれている本があって気になっていたので整理してみました。

中間値の定理

中間値の定理
\(f(x)\)が閉区間\([a,~b]\)で連続で,\(f(a)\neq f(b)\)ならば,\(f(x)\)はこの区間で\(f(a)\)と\(f(b)\)との中間の値をすべてとる.

「\(f(x)\)が閉区間\([a,~b]\)で連続で,\(f(a)\neq f(b)\)」を大前提として奉っておき(ここでは\(f(a) < f(b)\)とする),「\(f(x)\)はこの区間で\(f(a)\)と\(f(b)\)との中間の値をすべてとる」を論理式で記述すると \[\exists c \in [a,~b]\big[f(a) < k < f(b) \Longrightarrow f(c)=k \big]\] となる.言い換えれば(同値変形すれば), \[ \begin{align*} &\exists c \in [a,~b]\big[f(a) < k < f(b) \Longrightarrow f(c)=k \big]\\ \Longleftrightarrow~ & \exists c \in [a,~b]\big[f(a)-k < 0 < f(b)-k \Longrightarrow f(c)-k=0 \big]\\ \Longleftrightarrow~ & \exists c \in [a,~b]\big[F(a) < 0 < F(b) \Longrightarrow F(c)=0 \big] \end{align*} \] 最後の式は「\(F(x)\)が閉区間で\([a,~b]\)で連続で,\(F(a) < 0\)かつ\(F(b) > 0\)ならば,\(F(c)=0\)をみたす\(c\)がこの区間に存在する」となる.

中間値の定理’
\(F(x)\)が閉区間で\([a,~b]\)で連続で,\(F(a) < 0\)かつ\(F(b) > 0\)ならば,\(F(c)=0\)をみたす\(c\)がこの区間に存在する.

証明(田島一郎 解析入門 P99問5)

★解析学演習(デデキントの公理\(\Rightarrow\)上に(下に)有界なら上界(下界)の最小数(最大数)が存在)

下に有界な集合\(M\)の下界には必ず最大数が存在する.(田島一郎解析演習P44問3)

(証明)

証明の流れは「①切断をつくる→②デデキントの公理から2通りの場合に状況が分類できる→③片方を仮定して矛盾を導く」

まず①.\(M\)の下界の集合\(A\)と,その他の数の集合\(B\)とする.するとこれは実数の切断となる.以下,その証明.\(b \in B\)をとる.これは定義より\(M\)の下界でないので,
\[
\begin{align*}
\overline{\text{\(b\)が\(M\)の下界}\hspace{8mm}}\Longleftrightarrow~&\overline{\forall x \in M\big[b \leq x \big]}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \in M\big[x < b\big]\\
\end{align*}
\]
この存在する\(x\)を\(x_0\)とおくと,
\[x_0 < b \tag{1}\]
が成り立つ.
また,\(a \in A\)をとると,\(a\)は定義より\(M\)の下界であるから
\[\forall x \in M \big[a \leq x\big]\]
\(x\)は任意だから先ほどの\(x_0\)を考えると
\[a \leq x_0 \tag{2}\]
が成り立つ.\((1),~(2)\)より,
\[a \leq x_0 < b \text{すなわち} a < b\]
が成り立つ.よって\(A\),\(B\)という組分けは切断となる.

➁デデキントの公理から,

(ア)\(A\)に最大数が存在し,\(B\)には最小数が存在しない.
(イ)\(A\)に最大数が存在せず,\(B\)には最小数が存在する.

という2通りの場合が考えられる.

③(イ)を仮定する.\(B\)に最小数が存在するので,これを\(\beta\)とおく.\(\beta \in B\)すなわち\(\beta\)は\(M\)の下界ではないから,
\[
\begin{align*}
\overline{\text{\(\beta\)が\(M\)の下界}\hspace{8mm}}\Longleftrightarrow~&\overline{\forall x \in M\big[\beta \leq x \big]}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \in M\big[x < \beta\big]\\
\end{align*}
\]
ここで,この存在する\(x\)を\(x_1(\in M)\)とおくと,
\[x_1 < \beta\]
が得られる.ここで,
\[x_1 < \beta’ <\beta\]をみたす\(\beta’\)を考える.\(x_1 < \beta’\)より,
\[\exists x \in M\big[x < \beta’\big]\]
と言えることになるが,これは\(\beta’\)が下界でないことを示している.すなわち\(\beta’ \in B\).

以上より,\(\beta,~\beta’\in B\)かつ\(\beta’ < \beta \)で,\(\beta\)は\(B\)の最小数であることになるが,これは矛盾である.したがって(ア)\(A\)に最大数が存在し,\(B\)には最小数が存在しないと言える.(証明終)

★解析学演習

\(\displaystyle \lim_{x \rightarrow a}g(x)=\beta\)で\(g(x)\neq 0,~\beta \neq 0\)のとき,\(\displaystyle \lim_{x \rightarrow a} \frac{1}{g(x)}=\frac{1}{\beta}\)であることを証明せよ.
(田島一郎解析入門P16問16)

(証明)

与えられた仮定は\(\displaystyle \lim_{x \Rightarrow a}g(x)=\beta\)すなわち
\[\forall \epsilon>0 \exists \delta>0 \big[0<|x-a|<\delta \Longrightarrow |g(x)-\beta|<\epsilon \big]\tag{\(\ast\)}\] である.問15より,この仮定から \[\beta >0 \text{のとき,}0 < \frac{|\beta|}{2} < g(x) < \frac{3}{2}|\beta|\tag{1}\]
\[\beta <0 \text{のとき,}-\frac{3}{2}|\beta| < g(x) < -\frac{|\beta|}{2} < 0\tag{2}\]
という結論を得たのだった.\((1),(2)\)から,
\[
\begin{align*}
(1)\Longrightarrow~& \frac{|\beta|}{2} < |g(x)| < \frac{3}{2}|\beta|\\
(2)\Longrightarrow~&-\frac{3}{2}|\beta| < g(x) < -\frac{|\beta|}{2}\\
\Longrightarrow~&-\frac{3}{2}|\beta| < -|g(x)| < -\frac{|\beta|}{2}\\
\Longrightarrow~&\frac{|\beta|}{2} < |g(x)| < \frac{3}{2}|\beta|\\
\end{align*}
\]
となり結局\(\beta\)の正負に関わらず\[\frac{|\beta|}{2} < |g(x)| < \frac{3}{2}|\beta|\tag{\(\ast\ast\)}\]が得られることになる.

さて,今示したいのは \[\displaystyle \lim_{x \rightarrow a} \frac{1}{g(x)}=\frac{1}{\beta}\] すなわち \[\forall \epsilon>0 \exists \delta’>0 \left[0<|x-a|<\delta’ \Longrightarrow \left|\frac{1}{g(x)}-\frac{1}{\beta}\right|<\epsilon \right]\]
であった.ここで任意の\(\epsilon\)に対応する\(\delta’\)として\(\delta\)ととることにする.すると,この\(\delta\)のもとで
\[0<|x-a|<\delta \Longrightarrow \left|\frac{1}{g(x)}-\frac{1}{\beta}\right|<\epsilon\]
が成り立つかどうか,すなわち
\[
\begin{align*}
&\left|\frac{1}{g(x)}-\frac{1}{\beta}\right|=\left|\frac{\beta-g(x)}{\beta g(x)}\right|=\frac{|g(x)-\beta|}{|\beta| |g(x)|}
\end{align*}
\]
より
\[0<|x-a|<\delta \Longrightarrow \frac{|g(x)-\beta|}{|\beta| |g(x)|}<\epsilon\]
が成り立つかどうかが問題となるが,これは仮定\((\ast)\),\((\ast\ast)\)より
\[\frac{|g(x)-\beta|}{|\beta| |g(x)|}<\frac{\epsilon}{|\beta|\frac{|\beta|}{2}}=\frac{2\epsilon}{\beta^2}\]
となり確かに成り立つ.(証明終)

★解析学演習

\(\displaystyle \lim_{x \rightarrow a}g(x)=\beta\)で\(\beta \neq 0\)である.このとき,適当な\(\delta > 0\)を決めると,\(0 < |x-a| < \delta\)のすべての\(x\)について,\(g(x)\)は\(\beta\)と同符号であることを証明せよ.
(田島一郎解析入門P24問15)

(証明)

仮定\(\displaystyle \lim_{x \rightarrow a}g(x)=\beta\)より\[\forall \epsilon >0 \exists \delta \big[0<|x-a|<\delta \Longrightarrow |g(x)-\beta| < \epsilon \big]\] \(\beta > 0\)のときと\(\beta < 0\)のときとで場合分けをして考える.

\(\beta > 0\)のとき
仮定より,\(\epsilon\)は任意なので,\(\epsilon = \frac{|\beta|}{2}\)ととることにする.この\(\epsilon = \frac{|\beta|}{2}\)に対応して\(\delta\)が定まり,\(0<|x-a|<\delta\)をみたす\(x\)に対して\(|g(x)-\beta| < \epsilon= \frac{|\beta|}{2} ~\cdots(\ast)\)が成り立つ.\((\ast)\)を変形すると
\[
\begin{align*}
(\ast)&\Longleftrightarrow |g(x)-\beta| < \frac{|\beta|}{2}\\
&\Longleftrightarrow \beta – \frac{|\beta|}{2} < g(x) < \beta + \frac{|\beta|}{2}\\
&\Longleftrightarrow |\beta| – \frac{|\beta|}{2} < g(x) < |\beta| + \frac{|\beta|}{2}\\
&\Longleftrightarrow 0 < \frac{|\beta|}{2} < g(x) < \frac{3}{2}|\beta|\\
\end{align*}
\]
したがって\(g(x)\)は正.

\(\beta < 0\)のとき
\(\beta > 0\)のときと同様に\(\epsilon = \frac{|\beta|}{2}\)ととると,同様の議論により,
\[\beta – \frac{|\beta|}{2} < g(x) < \beta + \frac{|\beta|}{2}\]
を得る.しかし今回は\(\beta < 0\)であるから\(\beta = -|\beta|\)であることに注意して変形すると,
\[
\begin{align*}
&~\beta – \frac{|\beta|}{2} < g(x) < \beta + \frac{|\beta|}{2}\\
\Longleftrightarrow &-|\beta| – \frac{|\beta|}{2} < g(x) < -|\beta| + \frac{|\beta|}{2}\\
\Longleftrightarrow &-\frac{3}{2}|\beta| < g(x) < -\frac{|\beta|}{2} < 0
\end{align*}
\]
したがって\(g(x)\)は負.(証明終)

★解析学演習

\(a>1\)のとき,次のことを証明せよ.ただし,\(n\)は自然数である.
\[(1)~\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{a^n}{n}=+\infty\hspace{25mm}(2)~\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{a^n}{n^2}=+\infty\]
(田島一郎解析入門P19問11)

\(a>1\)であるから,\(a=1+h~(h>0)\)とおくと,
\[
\begin{align*}
a^n&=(1+h)^n\\
&={}_n\mathrm{C}_0h^0+{}_n\mathrm{C}_1h^1+{}_n\mathrm{C}_2h^2+{}_n\mathrm{C}_3h^3+\cdots+{}_n\mathrm{C}_nh^n\\
&=1+nh+\frac{n(n-1)}{2}h^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{6}h^3+\cdots+\frac{n(n-1)(n-2)\cdots(n-(n-1))}{n!}
\end{align*}
\]
(証明)

\((1)\)(\(\frac{n(n-1)}{2}h^2\)の項に目をつけて)\(n\geq 2\)とする.
\[
\begin{align*}
\frac{a^n}{n}&=\frac{1}{n}+h+\frac{(n-1)}{2}h^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{6}h^3+\cdots\\
&>\frac{(n-1)}{2}h^2=(n-1)\frac{h^2}{2}
\end{align*}
\]
より
\[\frac{a^n}{n}>(n-1)\frac{h^2}{2}\]
であるから,\(\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}(n-1)\frac{h^2}{2}=+\infty\)すなわち
\[\forall K>0 \exists m \left[n>m \Longrightarrow (n-1)\frac{h^2}{2} > K \right]\]
が示せればよい.つまり任意の\(K\)に対して
\[m\frac{h^2}{2} > K,~(m+1)\frac{h^2}{2} > K,~(m+2)\frac{h^2}{2} > K,\cdots\tag{\(\ast\)}\]
が成り立つような\(m\)が提示できればよい.

ここで,アルキメデスの公理より,
\[\forall K \exists N \left[N\frac{h^2}{2} > K\right]\]
これは,任意の\(K\)に対して
\[N\frac{h^2}{2} > K,~(N+1)\frac{h^2}{2} > K,~(N+2)\frac{h^2}{2} > K,~\cdots\]
が言えるということに他ならない.したがって,\((\ast)\)をみたす\(m\)としてこの\(N\)を提示すればよい.(証明終)

\((2)\)(\(\frac{n(n-1)(n-2)}{6}h^3\)の項に目をつけて)\(n \geq 3\)とする.
\[
\begin{align*}
\frac{a^n}{n^2}&=\frac{1}{n^2}+h+\frac{(n-1)}{2n^2}h^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{6n^2}h^3+\cdots\\
&>\left(1-\frac{1}{n}\right)(n-2)\frac{h^3}{6}\\
&\geq\left(1-\frac{1}{3}\right)(n-2)\frac{h^3}{6}=(n-2)\frac{h^3}{9}\\
\end{align*}
\]
より
\[\frac{a^n}{n^2}>(n-2)\frac{h^3}{9}\]
であるから,\(\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}(n-2)\frac{h^3}{9}=+\infty\)すなわち
\[\forall K>0 \exists m \left[n>m \Longrightarrow (n-2)\frac{h^3}{9} > K \right]\]
が示せればよい.つまり任意の\(K\)に対して
\[(m-1)\frac{h^2}{2} > K,~m\frac{h^2}{2} > K,~(m+1)\frac{h^2}{2} > K,\cdots\tag{\(\ast\)}\]
が成り立つような\(m\)が提示できればよい.

ここで,アルキメデスの公理より,
\[\forall K \exists N \left[N\frac{h^3}{9} > K\right]\]
これは,任意の\(K\)に対して
\[N\frac{h^3}{9} > K,~(N+1)\frac{h^3}{9} > K,~(N+2)\frac{h^3}{9} > K,~\cdots\]
が言えるということに他ならない.したがって,\((\ast)\)をみたす\(m\)として\(N+1\)と提示すればよい.(証明終)

★解析演習(アルキメデスの公理)

\(a\)が正の定数で,\(n\)が自然数ならば,
\[\text{\(n \rightarrow \infty\)のとき\(\frac{a}{n} \rightarrow 0\),すなわち\(\lim_{n \rightarrow \infty}\frac{a}{n}=0\)}\]
であることをアルキメデスの公理から導け.(田島一郎 解析入門 P19問10)

(証明)
示したいことは,\(a>0,~n\in \mathbb{N}\)であるから,
\[
\begin{align*}
&\forall \epsilon>0 \exists m \left[n>m \Longrightarrow \left|\frac{a}{n}-0\right|<\epsilon \right]\\ \Longleftrightarrow~&\forall \epsilon>0 \exists m \left[n>m \Longrightarrow \frac{a}{n}<\epsilon \right]\\ \Longleftrightarrow~&\forall \epsilon>0 \exists m \big[n>m \Longrightarrow n\epsilon >a \big]\tag{\(\ast\)}\\
\end{align*}
\]である.

ここで,アルキメデスの公理とは,\(h\)を正の定数として,
\[\forall K>0 \exists N \big[n>N \Longrightarrow nh > K \big]\]
というものであった.

今,この公理における大前提として与えられている正の定数\(h\)を\(\epsilon\)であるとする.すなわち
\[\forall K>0 \exists N \big[n>N \Longrightarrow n\epsilon > K \big]\]
\(K\)は任意であるから,\(K=a\)とすると,この\(a\)に対応して\(N\)が存在して,
\[n>N \Longrightarrow n\epsilon > a\]
が成り立つと言える\((\ast\ast)\).

ここで改めて\((\ast)\)について考える.\(\epsilon\)は任意に与えられるわけだが,いちど与えらえた以上それは定数であることに注意すると,結局
\[n>m \Longrightarrow n\epsilon >a\]
をみたす\(m\)の存在を示せばよいが,これは\((\ast\ast)\)により\(m=N\)と提示できる.(証明終)

★解析学演習(はさみうちの原理)

\(x_n \leq a_n \leq y_n\)であって,\(\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}x_n=\lim_{n \rightarrow \infty}y_n=a\)であれば,\(\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}a_n=a\)であることを証明せよ.(はさみうちの原理)
(田島一郎 解析入門 P14問7)

(証明)

仮定より,
\[\forall \epsilon >0 \exists N_1\big[n>N_1 \Longrightarrow |x_n-a|<\epsilon \big]\] \[\forall \epsilon >0 \exists N_2\big[n>N_2 \Longrightarrow |y_n-a|<\epsilon \big]\] であるから,\(N=max\{N_1,~N_2\}\)ととれば,\(n>N\)のとき,
\[|x_n-a|<\epsilon,\quad|y_n-a|<\epsilon\]
すなわち
\[a-\epsilon < x_n < a+\epsilon,\quad a-\epsilon < y_n < a+\epsilon\]
これと仮定\(x_n \leq a_n \leq y_n\)から
\[a-\epsilon < x_n \leq a_n \leq y_n < a+\epsilon\]
より
\[a-\epsilon < a_n < a+\epsilon \Longleftrightarrow |a_n-a|<\epsilon\] が言える.以上まとめると, \[\forall \epsilon >0 \exists N\big[n>N \Longrightarrow |x_n-a|<\epsilon \big]\]
すなわち
\[\lim_{n \rightarrow \infty}a_n=a\]
となる.(証明終)

★解析学演習

\(\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a,~\lim_{n\rightarrow \infty}y_n=b\)のとき,\[(1)\quad\lim_{n\rightarrow \infty}x_ny_n=ab\hspace{30mm}(2)\quad\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{x_n}{y_n}=\frac{a}{b}\]を示せ.\((2)\)では\(y_n\neq 0,~b\neq 0\)とする.

仮定は
\[\forall \epsilon>0 \exists N_1 \big[n>N_1 \Longrightarrow |x_n-a|<\epsilon\big]\tag{ア}\] および \[\forall \epsilon>0 \exists N_2 \big[n>N_2 \Longrightarrow |y_n-b|<\epsilon\big]\tag{イ}\]
である.

\((1)\)の証明(割愛)

\((2)\)の証明

\(\displaystyle \frac{x_n}{y_n}=x_n\cdot\frac{1}{y_n}\)だから,もし\(\displaystyle\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{1}{y_n}=\frac{1}{b}\)が証明できれば,\((2)\)より
\[\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{x_n}{y_n}=\lim_{n\rightarrow \infty}x_n\cdot\frac{1}{y_n}=a\cdot\frac{1}{b}=\frac{a}{b}\]
となり証明が完了する.以下,その証明:

示したいことは
\[\forall \epsilon>0 \exists N \left[n>N \Longrightarrow \left|\frac{1}{y_n}-\frac{1}{b}\right|<\epsilon\right]\]
である.一部計算すると,
\[
\begin{align*}
\left|\frac{1}{y_n}-\frac{1}{b}\right|&=\left|\frac{b-y_n}{by_n}\right|=\frac{|y_n-b|}{|b||y_n|}
\end{align*}
\]
より
\[\forall \epsilon>0 \exists N \left[n>N \Longrightarrow \frac{|y_n-b|}{|b||y_n|}<\epsilon\right]\tag{\(\ast\)}\]
である.

任意に与えれらた\(\epsilon\)に対して\(n>N_2\)とすれば,仮定(イ)により\(\displaystyle \frac{|y_n-b|}{|b||y_n|}<\frac{\epsilon}{|b||y_n|}\)と言えるが,しかしそれだけでは分母に\(y_n\)(\(n\)の式)が残っていて\(\epsilon\)(を含む定数)にならない.そこで仮定(イ)において,\(\epsilon\)として\(\displaystyle \epsilon < \frac{|b|}{2}\)をみたす\(\epsilon\)をとる.この\(\epsilon\)に対応する番号\(n\)を\(N’\)とする.すると\(n>N’\)をみたす\(n\)に対して
\[|y_n-b|<\epsilon<\frac{|b|}{2}\]
すなわち
\[b-\frac{|b|}{2} < y_n < b+\frac{|b|}{2}\]
が成り立つ.この式を以下のように考え,変形する:

\(b\geq 0\)のとき,\(b\)の\(\epsilon(<\frac{|b|}{2})\)近傍はすべて正だからそこに入る\(y_n~(n>N’)\)たちももちろん正.ゆえに\(y_n=|y_n|\).また,\(b=|b|\).したがって,
\[
\begin{align*}
&b-\frac{|b|}{2} < y_n < b + \frac{|b|}{2}\\
\Longleftrightarrow~&|b|-\frac{|b|}{2} < |y_n| < |b| + \frac{|b|}{2}\\
\Longleftrightarrow~&\frac{|b|}{2} < |y_n| < \frac{3}{2}|b|
\end{align*}
\]

\(b < 0\)のとき,\(b\)の\(\epsilon(<\frac{|b|}{2})\)近傍はすべて負だからそこに入る\(y_n~(n>N’)\)たちももちろん負.ゆえに\(-y_n=|y_n|\).また,\(b=-|b|\).したがって,
\[
\begin{align*}
&b-\frac{|b|}{2} < y_n < b + \frac{|b|}{2}\\
\Longleftrightarrow~&-|b|-\frac{|b|}{2} < -|y_n| < -|b| + \frac{|b|}{2}\\
\Longleftrightarrow~&-\frac{3}{2}|b| < -|y_n| < -\frac{|b|}{2}\\
\Longleftrightarrow~&\frac{|b|}{2} < |y_n| < \frac{3}{2}|b|
\end{align*}
\]

つまり\(b\geq 0\),\(b<0\)に関わらず\(\frac{|b|}{2} < |y_n| < \frac{3}{2}|b|\)が成り立つ.整理すると,
\[\forall \epsilon <\frac{|b|}{2}\exists N’\left[n>N’ \Longrightarrow \frac{|b|}{2} < |y_n| < \frac{3}{2}|b|\right]\tag{ウ}\]
が言えたことになる.この準備のもとで,改めて\((\ast)\)を示す.

(イ),(ウ)により,任意の\(\epsilon < \frac{|b|}{2}\)に対して,\(N’\)が存在し,\(n>N’\)をみたす\(n\)について,次の式が成り立つ:
\[\frac{|y_n-b|}{|b||y_n|}<\frac{\epsilon}{|b|\cdot \frac{|b|}{2}}=\frac{2\epsilon}{|b|^2}\]

すなわち
\[\forall \epsilon<\frac{|b|}{2} \exists N’ \left[n>N’ \Longrightarrow \left|\frac{1}{y_n}-\frac{1}{b}\right|<\frac{2\epsilon}{|b|^2}\right]\]
したがって
\[\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{1}{y_n}=\frac{1}{b}\]

(証明終)

★解析学演習

すべての\(n\)で\(x_n>p\),かつ\(\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a\)ならば\(a\geq p\)であることを証明せよ.
(田島一郎 解析入門 P10問3(2))

(証明)

背理法で示す.与えられた命題は
\[\left(\forall n[x_n>p]\land \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a \right)\Longrightarrow a \geq p\]
である.この命題の否定をとると
\[\overline{\left(\forall n[x_n>p]\land \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a \right)\Longrightarrow a \geq p}\]
であるから,
\[
\begin{align*}
&\overline{\left(\forall n[x_n>p]\land \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a \right)\Longrightarrow a \geq p}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{\overline{\forall n[x_n>p]\land \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a} \lor a \geq p}\\
\Longleftrightarrow~&\forall n[x_n>p]\land \lim_{n\rightarrow \infty}x_n=a \land a < p\\ \Longleftrightarrow~&\forall n[x_n>p]\land \left(\forall \epsilon>0 \exists N\big[n>N \Longrightarrow |x_n-a|<\epsilon\big]\right) \land a < p\\
\end{align*}
\]

\(a<p\)より\(p-a>0\)だから,\(\epsilon=p-a\)ととると,\(n>N\)をみたす\(n\)に対して
\[|x_n-a|<p-a\]
すなわち
\[
\begin{align*}
|x_n-a|<p-a~\Longleftrightarrow~&a-(p-a)< x_n <a+(p-a)\\
\Longleftrightarrow~&2a-p< x_n < p
\end{align*}
\]
が成り立つが,これは\[\forall n[x_n>p]\]に反する.(証明終)

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