\(0=1\)の証明?

youtubeのおもしろ動画。これを不思議と思うか,あるいは一目でツッコミを入れられるかどうか,論理の勉強になる動画だと思います。

(\(0=1\)の証明?)

\begin{align}
-20 &=-20 \tag{1}\\
16-36 &= 25-45 \tag{2}\\
4^2-4\cdot 9 &= 5^2 – 5\cdot 9 \tag{3}\\
4^2-4\cdot 9 + \frac{81}{4} &= 5^2 – 5\cdot 9 + \frac{81}{4} \tag{4}\\
4^2-2 \cdot 4\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 &= 5^2 – 2 \cdot 5\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 \tag{5}\\
\left(4 – \frac{9}{2}\right)^2&= \left(5 – \frac{9}{2} \right)^2 \tag{6}\\
4 – \frac{9}{2}&= 5 – \frac{9}{2} \tag{7}\\
4 &= 5 \tag{8}\\
4 -4 &= 5 – 4 \tag{9}\\
0 &= 1 \tag{10}
\end{align}私たちは一般に計算問題が与えられば式を次々と改行・羅列して「答え」を求め,とにもかくにも「答え」さえ手に入れば,とくに疑問も抱くことなくそれを解答欄に書いてさっさと次の問題に進みがちです。しかし,細かいことをいえば本来はその各行の式と式の間には論理的にどういう関係があるのか,まで考える必要があります:
たとえば,\(-20 =-20\)と\(16-36 = 25-45 \)の間にはどんな関係があるでしょうか。\(16-36=-20\)そして\(25-45=-20\)という等式が成り立ちますから,\(-20 =-20 \)という仮定から\(16-36 = 25-45 \)が導けます。すなわち,\[-20 =-20 \Longrightarrow 16-36 = 25-45\]逆に,\(16-36 = 25-45 \)という仮定から\(-20 =-20 \)も確かに導けます。\[-20 =-20 \Longleftarrow 16-36 = 25-45\]この二つをあわせて,\[-20 =-20 \Longleftrightarrow 16-36 = 25-45\]と書きます。

式\((1)\)と式\((2)\)はいわば互いに‘行き来’できる関係(これを以後「同値」と呼ぶことにします)がありましたが,一般には必ずしもこのような関係が成り立つとは限りません(感覚的にたとえると「犬ならば哺乳類」ですが「哺乳類ならば犬」とは限りません)。この点に注意して,各行における「式と式の論理関係」を同様に調べていくと\((1)\)から\((6)\)までの式,また\((7)\)から\((10)\)までの式が互いに同値であることは一目でわかります。怪しいのは\((6)\)式と\((7)\)式の間の論理関係です。見た目がうるさいので,ここでは\(4 – \frac{9}{2} = a\),\(5 – \frac{9}{2} = b\)とおいて考えることにします。

\(a^2=b^2 \Leftarrow a=b\)は言えるか?
これは明らかに言えます。仮定\(a=b\)の両辺を\(2\)乗すればいいだけですから。

\(a^2=b^2 \Rightarrow a=b\)は言えるか?
これはいけない。なぜなら,\(a^2=b^2\)という仮定からは,\(a=b\)だけでなく,\(a=-b\)という可能性も考えられますから。実際,
\begin{align*}
&a^2=b^2\\
\Longrightarrow~&a^2-b^2=0\\
\Longrightarrow~&(a-b)(a+b)=0\\
\Longrightarrow~&a-b=0\text{または}a+b=0\\
\Longrightarrow~&a=b\text{または}a=-b
\end{align*}(※逆も成り立つ)

以下,正しい論理(式)を書いてみます(または,を\(\lor\)と書くことにします)。
\begin{align}
&-20 =-20 \\
\Longleftrightarrow &~16-36 = 25-45 \\
\Longleftrightarrow &~4^2-4\cdot 9 = 5^2 – 5\cdot 9 \\
\Longleftrightarrow &~4^2-4\cdot 9 + \frac{81}{4} = 5^2 – 5\cdot 9 + \frac{81}{4} \\
\Longleftrightarrow &~4^2-2 \cdot 4\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 = 5^2 – 2 \cdot 5\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 \\
\Longleftrightarrow &~\left(4 – \frac{9}{2}\right)^2= \left(5 – \frac{9}{2} \right)^2 \\
\Longleftrightarrow &~4 – \frac{9}{2}= 5 – \frac{9}{2} \lor 4 – \frac{9}{2}= – \left( 5 – \frac{9}{2}\right)\\
\Longleftrightarrow &~4 = 5 \lor 9 = 9 \\
\Longleftrightarrow &~9 = 9\\
\end{align}結局,\((1)\)から\((5)\)はいわば‘目くらまし’で,\(-20=-20\)という面白みのない仮定から,\(9=9\)というやはり面白みのない結論が得れらた,ということに過ぎない,ということでした。

ベータ関数と\(\frac{(\beta-\alpha)^3}{6}\)公式

天下りですが以下のような\(2\)変数関数\(B(p,~q)\)を定義します.

ベータ関数\[\displaystyle B(p,~q):=\int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\]

(「\(:=\)」は「左辺を右辺で定義する」という意味です.)
この関数をベータ関数と呼びます.こいつを計算してみましょう.

直接的に求まりそうにないので,部分積分してみます(\(x^{p-1}\)を積分側,\((1-x)^{q-1}\)を微分側にしましょう).すると,

\[\displaystyle
\begin{align*}
&\int^1_0 x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\\
=&\biggl[\frac{x^p}{p}(1-x)^{q-1}\biggl]^1_0+\int^1_0\frac{x^p}{p}(q-1)(1-x)^{q-2}dx\\
=&\frac{q-1}{p}\int^1_0x^p(1-x)^{q-2}dx\\
=&\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)
\end{align*}
\]
より,
\[B(p,~q)=\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)\]という漸化式を得ます.この漸化式から,
\[
\begin{align*}
&B(p,~q)=\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)\\
&B(p+1,~q-1)=\frac{q-2}{p+1}B(p+2,~q-2)\\
&B(p+2,~q-2)=\frac{q-3}{p+2}B(p+3,~q-3)\\
&B(p+3,~q-3)=\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\\
&\hspace{40mm}\vdots
\end{align*}
\]

が得られますが,例えば上の四つの式から,

\[B(p,~q)=\frac{q-1}{p}\frac{q-2}{p+1}\frac{q-3}{p+2}\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\]

が得られますので,この調子で続ければ\(B(\text{☆},\text{★})\)の\(\text{★}\)がどんどん小さくなり,うまく計算が出来そうです.

では,★はどこまで下げましょうか?\(B(\text{☆},\text{★})\)の定義をみると,★は1であると計算しやすいですね.なぜなら\((1-x)^{q-1}\)が\(0\)乗で1になってくれますから.

\(B(\text{☆},\text{★})\)の\(\text{★}\)が1になるまで下げてみます.

\[
\begin{align*}
&B(p,~q)=\frac{q-1}{p}B(p+1,~q-1)\\
&B(p+1,~q-1)=\frac{q-2}{p+1}B(p+2,~q-2)\\
&B(p+2,~q-2)=\frac{q-3}{p+2}B(p+3,~q-3)\\
&B(p+3,~q-3)=\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\\
&\hspace{40mm}\vdots\\
&B(p+(q-2),~q-(q-2))=\frac{q-(q-1)}{p+(q-2)}B(p+(q-1),~q-(q-1))
\end{align*}
\]
(4行目の\(\displaystyle B(p+3,~q-3)=\frac{q-4}{p+3}B(p+4,~q-4)\)の「\(4\)」を「\(q-1\)」に,「\(3\)」を「\(q-2\)」に置き換えるイメージ!)

したがって,

\[
\begin{align*}
B(p,~q)&=\frac{q-1}{p}\frac{q-2}{p+1}\frac{q-3}{p+2}\frac{q-4}{p+3}~\cdots~\frac{q-(q-1)}{p+(q-2)}B(p+(q-1),~q-(q-1)\\
&=\frac{q-1}{p}\frac{q-2}{p+1}\frac{q-3}{p+2}\frac{q-4}{p+3}~\cdots~\frac{1}{p+q-2}B(p+q-1,~1)\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}B(p+q-1,~1)\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}\int^1_0x^{p+q-2}(1-x)^0dx\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}\int^1_0x^{p+q-2}dx\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-2)!}\biggl[\frac{x^{p+q-1}}{p+q-1}\bigg]^1_0\\
&=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}
\end{align*}
\]

できました.\(\displaystyle B(p,~q)=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\).定義より\(\displaystyle B(p,~q)=\int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\)でしたから,結局,

\[\displaystyle \int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\]

が得られたことになります.

さて次に,\(\displaystyle \int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\)の積分区間\([0,~1]\)が,\([\alpha,~\beta]\)となるような置換を考えてみましょう.すなわち右のような置換です(新たな変数\(t\)としました).この場合,どのように置換すればよいでしょうか?\(t\)が\(\alpha\)のとき\(x\)が\(0\)ですから,さしあたり\[x=t-\alpha\]という置換が思い浮かびます.しかし,\(t=\beta\)のとき\(x\)は\(\beta-\alpha\)ではなく\(1\)であってほしい.であれば,\(t-\alpha\)を\(\beta-\alpha\)で割ればいいのでは?と考え,\[\displaystyle x=\frac{t-\alpha}{\beta-\alpha}\]という置換に気付きます.置換してみましょう.\(\displaystyle dx=\frac{1}{\beta-\alpha}dt\)ですから,

\[
\begin{align*}
\displaystyle \int^1_0x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx&=\int^{\beta}_{\alpha}\left(\frac{t-\alpha}{\beta-\alpha}\right)^{p-1}\left(1-\frac{t-\alpha}{\beta-\alpha}\right)^{q-1}\frac{1}{\beta-\alpha}dt\\
&=\frac{1}{(\beta-\alpha)^{p+q-1}}\int^{\beta}_{\alpha}(t-\alpha)^{p-1}(\beta-t)^{q-1}dt
\end{align*}
\]

ゆえに,

\[\displaystyle \frac{1}{(\beta-\alpha)^{p+q-1}}\int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)^{p-1}(\beta-x)^{q-1}dx=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}\]

すなわち,

\[\displaystyle \int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)^{p-1}(\beta-x)^{q-1}dx=\frac{(p-1)!(q-1)!}{(p+q-1)!}(\beta-\alpha)^{p+q-1}\]

が得られたことになります(ダミー変数を\(t\)から見慣れた\(x\)に変えました).

…で,結局何がいいたいの??というと…

この式の\((p,~q)\)に例えば\((2,~2),~(2,~3)\)と代入してみてください.前者は
\[\displaystyle \int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)(\beta-x)dx=\frac{1}{6}(\beta-\alpha)^3\]

後者は
\[\displaystyle \int^{\beta}_{\alpha}(x-\alpha)(\beta-x)^2dx=\frac{1}{12}(\beta-\alpha)^4\]
となり,例の有名公式が得られます.つまり,数学Ⅱで学ぶ例の有名公式は,実はベータ関数の特殊な場合でもあった,ということがわかります.

このベータ関数は大学の微分積分学で学ぶかと思いますが,実は今回のこの記事の内容自体が大学入試問題として出題されたこともあります.実際,上の解説を見て分かるように導出には部分積分,漸化式,置換積分と高校数学範囲の知識しか使っていません.

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