連立方程式

数学検定1級1次試験の問題.

次の\(x\)に関する方程式の実数解を求めなさい.
\[3x^2-12x+8=\frac{8\sqrt{x-1}}{\sqrt{3}}\]

方針:\(y=\frac{\sqrt{x-1}}{\sqrt{3}}\)とおく.

【解答?】

\(\left\{\begin{array}{l}3x^2-12x+8=8y\\y=\frac{\sqrt{x-1}}{\sqrt{3}}\end{array}\right.\)

を解く.第2式を\(x=3y^2+1\)と変形し,第1式に代入すると,\[27y^4-18y^2-8y-1=0\]という高次方程式を得る.これを解くと,\[y=-\frac{1}{3}\text{または}y=1\]が得られ,これを第2式に代入することで解\[x=\frac{4}{3}\text{または}x=4\]を得る.【解答?終】

これは間違いです.\(x=\frac{4}{3}\)が不適解だからです.以前紹介した通り,「逆(十分性)の考察」をしていないがための誤りです.実際,\((\frac{4}{3},-\frac{1}{4})\)を代入すると与式は成り立ちません.

はじめから同値変形する方針だと以下のようになります.

【解答】
\begin{align*}
&3x^2-12x+8=8y\land y=\frac{\sqrt{x-1}}{\sqrt{3}}\\
\Longleftrightarrow &3x^2-12x+8=8y\land \sqrt{3}y=\sqrt{x-1}\\
\Longleftrightarrow &3x^2-12x+8=8y\land 3y^2=x-1 \land y>0 ~~(\ast)\\
\Longleftrightarrow &3x^2-12x+8=8y\land x=3y^2+1 \land y>0\\
\Longleftrightarrow &27y^4-18y^2-8y-1=0\land x=3y^2+1 \land y>0\\
\Longleftrightarrow &27(y-1)\left(y+\frac{1}{3}\right)^3=0\land x=3y^2+1 \land y>0\\
\Longleftrightarrow &(y=-\frac{1}{3}\lor y=1)\land x=3y^2+1 \land y>0\\
\Longleftrightarrow & y=1\land x=3y^2+1 \\
\Longleftrightarrow & y=1\land x=4
\end{align*}

\((\ast)\)だけが注意すべき同値変形で,他の部分は実質いつもの計算です.

同値変形に慣れていない人が安易に同値記号を乱用すると,十分性が言えないのに命題同士を同値記号で結んでしまい,結果大きく減点されたりと痛い目にあうでしょう.がしかし,同値記号を使うことは必要性や十分性を意識するきっかけにもなりますから,どんどん使って間違いまくって,その間違いを指摘してもらいながら学んでいくのがいいのではないかと僕は思います(指摘してもらえる環境がなければ無理に使わない方がいいかもしれません).

また,同値性が不安なときは無理に同値記号を使わず,安全のため必要性(\(\Rightarrow\))だけを追っていき,後で十分性を確認する,という例の方法をとった方が無難でしょう.

いずれにしても,「\(\Leftrightarrow\)だけで考える」「\(\Rightarrow\)のあとに\(\Leftarrow\)を確認する」のうち必ずどちらか一方で攻める・・・!という偏った姿勢ではなく,臨機応変に使い分けてください.このブログでも,それぞれの考え方が役立つ場面を取り扱っていきたいと思います.

合同式の有用性

数学Aの整数分野に「合同式」という話題があります.しかし,学校の授業だと時間の関係上割愛されることも多い.実際,僕も学校で授業するときは時間が一杯一杯で余裕がなく,ここはいつもとばしていました.そんなことをふと思い出したので,ちょっとこの話題について触れてみようと思います.

数学検定1級の1次の問題に,こんな問題がありました.\[23^{23^{23}}\text{の第一位の数を答えよ}\]「第一位の数を求めろ」問題の定石は,おなじみ「実験して推測しろ」なので,少し実験してみることにします.一の位の数のみに着目して計算すると,\[3\rightarrow9\rightarrow7\rightarrow1\rightarrow3\rightarrow9\rightarrow7\rightarrow1\rightarrow\cdots\]となり,\[3,9,7,1\]を繰り返していることが分かります.これはいわば繰り返しの周期が4であることを示しているので,結局,\(23\)の冪(べきと読みます)\(23^{23}\)に周期4がいくつあるか,すなわち,\[23^{23}\text{を}4\text{で割った余りはいくらか}\]という問題に帰着します.ここで,合同式を利用すると以下のように数行で終わります.\[\begin{align}23^{23}&\equiv (-1)^{23} \\&\equiv -1 \\ &\equiv 3\end{align}\]ゆえに,\[23^{23}=4\times Q+3\]したがって,求める答えは周期の前から3番目,すなわち7と分かります.かんたん!

このように合同式を学んでおくと解きづらい問題・考えづらい問題も明解に論述できることが少なくありません.というわけで,皆さんも合同式について学んでみてはいかがでしょうか.

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