囲まれる部分の面積 その6


上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{12}\]で表される.

証明

\(a>0\)のとき.まず\(\gamma\)を求める.そのためには,\(l_{1}(x),~l_{2}(x)\)を求めて連立すればよい.
\(l_{1}(x)\)を求めるために,\(f(x)-l_{1}(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)で接している,すなわち\(f(x)-l_{1}(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\alpha\)である

ことに着目すると,\[f(x)-l_{1}(x) = a(x-\alpha)^2\]とかける.したがって\(l_{1}(x) = f(x) – a(x-\alpha)^2\).同様に考え,\(l_{2}(x) =f(x)- a(x-\beta)^2\).この\(2\)式から,
\begin{align*}
&f(x) – a(x-\alpha)^2 = f(x)- a(x-\beta)^2 \\
\Longleftrightarrow ~& (x-\alpha)^2 = (x-\beta)^2\\
\Longleftrightarrow ~& -2\alpha x +\alpha^2 = -2\beta x +\beta^2\\
\Longleftrightarrow ~& 2(\beta – \alpha) x = \beta^2 – \alpha^2\\
\Longleftrightarrow ~& x = \frac{\alpha + \beta}{2}\\
\end{align*}ゆえに\(\gamma = \frac{\alpha + \beta}{2}\).よって,求める面積\(S\)は,
\begin{align*}
S = \displaystyle &\int_\alpha^\gamma \{f(x)- l_{1}(x)\}dx + \int_\gamma^\beta \{f(x)- l_{2}(x)\}dx\\
=&\int_\alpha^\gamma a(x-\alpha)^2 dx + \int_\gamma^\beta a(x-\beta)^2 dx\\
=&a\left[\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_\alpha^\gamma + a\left[\frac{(x-\beta)^3}{3}\right]_\gamma^\beta\\
=&\frac{a}{3}\left\{(\gamma-\alpha)^3 – (\gamma-\beta)^3\right\}\\
=&\frac{a}{3}\left\{\frac{(\beta-\alpha)^3}{8} – \frac{(\alpha-\beta)^3}{8}\right\}\\
=&\frac{a}{3\cdot 8}\left\{(\beta-\alpha)^3 + (\beta-\alpha)^3\right\}\\
=&\frac{a(\beta-\alpha)^3}{12}\\
=&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{12}
\end{align*}

\(a<0\)のときも同様に計算すると,やはり\(\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{12}\)となる.

証明終

接線同士の交点が(接点がどのような位置であっても)結局\(\frac{\alpha+\beta}{2}\)で表されることは記憶しておくべきでしょう.

・・・ここまで数Ⅱ範囲で役立つ面積公式を6つ(,6)紹介しましたが,いずれも結果そのものよりもその導出過程の方が重要です.後半の公式になればなるほど使用頻度が低くなるので,当然,使わないがゆえに忘れ易くなる.したがって必要なときに自分で作れるようにしておくべきでしょう.導出過程さえ理解しておけば,「ああなんかそんなのあったなあ」くらいの意識さえあればその場で作れます.なにより使用頻度の低い公式の記憶を維持しようとするのはコスパ悪すぎですから.(テスト直前に付け焼き刃的に覚えるのはいいかな?邪道だけど・・・^^;)

囲まれる部分の面積 その5


上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}\]で表される.

証明

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(f(x)-g(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(4\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)と\(x=\beta\)で接する,すなわち\(f(x)-g(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\alpha,\beta,\beta\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x) = a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2 dx \\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^5}{30}\tag{3}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)
上と同様に考え,
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2 dx \\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^5}{30}\tag{3}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}
\end{align*}

以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}\]で表されることになる.

証明終

\((3)\)はここの公式有名な定積分によります.

囲まれる部分の面積 その4


上の放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}\]で表される.

証明

\(a>0\)の場合と\(a<0\)の場合とで場合を分けて考える.

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(\alpha\)が重解,すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\alpha\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x)=a(x-\alpha)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2 dx = &a\left[\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_{\alpha}^{\beta} = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)

上と同様に考え,
\begin{align*}
\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2 dx = &-a\left[\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_{\alpha}^{\beta} = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}
\end{align*}

以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}\]で表されることになる.

証明終

教科書等でもよく見るシチュエーションですが,教科書のように展開してゴチャゴチャ計算するのは悪手です.いつも通り\(f(x)-g(x)\)を特徴付ける情報に目をつけ,得られた被積分関数は(数学Ⅱのみの履修であっても)合成関数(のちに記事にします)とみなすべきです.公式として覚えてもよいですが,見ての通り証明は容易なので,これは結果を覚えるというより上のように計算した方がよいでしょう.

囲まれる部分の面積 その3

上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}\]で表される.

証明

(① \(a>0\)で\(f(x)\)が上の場合)

被積分関数\(f(x)-g(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(3\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)で交わり\(x=\beta\)で接する,すなわち\(f(x)-g(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta,\beta\)である

ことに着目すると,\[g(x)-f(x) = a(x-\alpha)(x-\beta)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)(x-\beta)^2 dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(② \(a>0\)で\(f(x)\)が下の場合)

上と同様に考え,
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{g(x)-f(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\displaystyle a\int_{\beta}^{\alpha} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(③ \(a<0\)で\(f(x)\)が上の場合)

\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{f(x)-g(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)^2(x-\beta) dx\\
=~&\displaystyle -a\int_{\beta}^{\alpha} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(④ \(a<0\)で\(f(x)\)が下の場合)

\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{g(x)-f(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)(x-\beta)^2 dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表されることになる.

証明終

やはり,交点\(\alpha,\beta\)と\(a\)さえ分かってしまえば面積は求まってしまいます。\((2)\)はここの公式によります.

囲まれる部分の面積 その2


上の\(2\)つの放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,\[S = \frac{|a’-a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表される.

証明

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a’-a\)で,
      • \(x=\alpha,x=\beta\)で交わる,すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta\)である

ことに着目すると,\[g(x)-f(x) = (a’-a)(x-\alpha)(x-\beta)\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} (a’-a)(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle (a-a’)\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{(a-a’)(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a’-a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}証明終

\(|a’-a|\)はもちろん\(|a-a’|\)でもいいです.要は上下関係なく機械的に‘係数の差’の絶対値をとればいい,ということです.\((1)\)はここの公式によります.

囲まれる部分の面積 その1


上の放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表される.

証明

\(a>0\)の場合と\(a<0\)の場合とで場合を分けて考える.

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(-a\)で,
      • 交点が\(\alpha,\beta\)すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x)=-a(x-\alpha)(x-\beta)\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)

被積分関数は\(f(x)-g(x)\)であるから,上と同様に考え,\[f(x)-g(x) = a(x-\alpha)(x-\beta)\]したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}
以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表されることになる.

証明終

大事なポイントは被積分関数\(g(x)-f(x),~f(x)-g(x)\)を書くところです。これを実際に書き出して項を整理して因数分解を考え…などと愚直に計算するのは間違いではありませんがあまりよい手とは言えません。上で見たように,\(g(x)-f(x),~f(x)-g(x)\)を特徴付ける(3つの)要素さえ分かってしまえば即答できるわけですから。また,\((1)\)は定積分の有名公式によります。あの公式は具体的にはこんなシチュエーションで役に立つ,ということです。

結局,交点\(\alpha,\beta\)と係数\(a\)という情報だけで面積が求まってしまうということになります.

模試以上の問題ならばこの公式は(そのレベルの問題だとこれは単なる‘途中計算’に過ぎませんから)証明抜きで使っても問題ないと思われます.しかし学校のテストなどは立式~定積分の計算を問う意図もあるかと思うのでもしかしたら嫌がられるかもしれません.とはいえ,学校のテスト(=教科書の例題・練習題)だとぐちゃぐちゃ計算させようとする問題も多く,そんなのに付き合わせられるのもうざったらしいので,この証明を解答欄の脇にでもササっと記述して以降の問題を公式で済ませてしまうというのもひとつの手だと思います(証明する必要があるかどうかは,作問する先生に事前に確認しておくとよいでしょう).

他にも覚えておくと便利な公式があります。随時更新していきます.

有名な定積分

\[\displaystyle \int_\alpha^\beta -(x-\alpha)(x-\beta)dx = \frac{(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\]

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \int_\alpha^\beta -(x-\alpha)(x-\beta)dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta -(x-\alpha)\{x-\alpha-(\beta-\alpha)\}dx \\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{-(x-\alpha)^2+(\beta-\alpha)(x-\alpha)\}dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{-(x-\alpha)^2+(\beta-\alpha)(x-\alpha)\}dx\\
= &\left[-\frac{(x-\alpha)^3}{3}+(\beta-\alpha)\frac{(x-\alpha)^2}{2}\right]_\alpha^\beta\\
= &-\frac{(\beta-\alpha)^3}{3}+\frac{(\beta-\alpha)^3}{2}\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}証明終

一行目でいきなり\(-(x-\alpha)(x-b)\)を展開するひとがいますが,それは悪手です.上のように,\((x-a)\)で展開しましょう.同様に,

\[\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)(x-\beta)^2dx = \frac{(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\]

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)(x-\beta)^2dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)\{x-\alpha-(\beta-\alpha)\}^2dx \\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{(x-\alpha)^3-2(\beta-\alpha)(x-\alpha)^2+(\beta-\alpha)^2(x-\alpha)\}dx\\
= &\left[\frac{(x-\alpha)^4}{4}-2(\beta-\alpha)\frac{(x-\alpha)^3}{3}+(\beta-\alpha)^2\frac{(x-\alpha)^2}{2}\right]_\alpha^\beta\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^4}{4}-2\frac{(\beta-\alpha)^4}{3}+\frac{(\beta-\alpha)^4}{2}\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}証明終

これらの定積分はを覚えておくととても嬉しいことがあります.「\(6\)分の\(3\)乗公式」(マイナス注意),「\(12\)分の\(4\)乗公式」として記憶しておくとよいでしょう.

おまけ

\[\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^2(x-\beta)^2dx = \frac{(\beta-\alpha)^5}{30}\tag{3}\]

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^2(x-\beta)^2dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^2\{x-\alpha-(\beta-\alpha)\}^2dx \\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{(x-\alpha)^4-2(\beta-\alpha)(x-\alpha)^3+(\beta-\alpha)^2(x-\alpha)^2\}dx\\
= &\left[\frac{(x-\alpha)^5}{5}-2(\beta-\alpha)\frac{(x-\alpha)^4}{4}+(\beta-\alpha)^2\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_\alpha^\beta\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^5}{5}-\frac{(\beta-\alpha)^5}{2}+\frac{(\beta-\alpha)^5}{3}\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^5}{30}
\end{align*}証明終

ちなみに,これらの式を一般化したものが,これです.

階差数列

ここに数列\((a_n)_{n\in\mathbb{N}}\)があるとします.
\[a_1,~a_2,~a_3,~\cdots,a_n\]\(a_n\)を求めましょう.\(a_n\)を求めるためには,
と考えることで
\[
a_n=a_1+(a_2-a_1)+(a_3-a_2)+(a_4-a_3)+\cdots+(a_n-a_{n-1})
\]とかけることがわかります.ただし,この式は\(n=1\)のときは\(a_0\)が出現してしまい成り立たないので,\(n \geq 2\)のもとで成り立つ式であることに注意します.ここに現れる数列\((a_n-a_{n-1})_{n\in\mathbb{N}}\)を,階差数列と呼びます.この式を\(\sum\)記号を用いて少し変形すると
\begin{align*}
a_n=&a_1+(a_2-a_1)+(a_3-a_2)+(a_4-a_3)+\cdots+(a_n-a_{n-1})\tag{1}\\
=&a_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}(a_{k+1}-a_{k})\tag{2}\\
=&a_1+\displaystyle \sum_{k=2}^{n}(a_k-a_{k-1})\\
=&a_1+\displaystyle \sum_{k=0}^{n-2}(a_{k+2}-a_{k+1})
\end{align*}などと変形できることも分かります.さらに,\((2)\)の\(a_{k+1}-a_{k}\)を\(b_k\)とおいたものが,教科書でもお馴染みの公式\[a_n=a_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}b_k\tag{3}\]ですね.

さて,ここまでで見た式\((1),(2),(3)\)の中で覚えるべき式はどれでしょうか.一般的(教科書的)には,最終的な結果である\((3)\)だけでしょう.これを「公式」として覚えておいて,あとはこれを機械的に使うという人がほとんどかと思います.例えば,こういう問題

次の数列\((a_n)_{n \in \mathbb{N}}\)の一般項を求めよ.\[1,~3,~7,~13,~21,~\cdots\]

「あ,階差数列は\(b_n=2n\)だ!→公式!」と考え\[a_n = \displaystyle 1 + \sum_{k=1}^{n-1}2k \quad (n \geq 2)\]とすることと思います.他にも,

次の条件で表される数列\((a_n)_{n\in \mathbb{N}}\)の一般項を求めよ.\[a_1=1,~a_{n+1}-a_{n}=4^n\]

など.これもやはり「あ,階差数列だ!→公式!」と考え,
\[a_n=1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} 4^k \quad (n \geq 2)\]と計算することと思います.では,次はどうでしょう.大学入試問題です.

次の条件で表される数列\((a_n)_{n\in \mathbb{N}}\)の一般項を求めよ.
\[a_1=2,~(n-1)a_n=na_{n-1}+1 \quad (n=2,3,\cdots)\]

まずは両辺を\(n(n-1)\)で割って,
\[\frac{a_n}{n}=\frac{a_{n-1}}{n-1}+\frac{1}{n(n-1)}\]移項して,\(\frac{a_n}{n}=b_n\)とおくことで「階差」タイプに帰着します:
\[b_n-b_{n-1}=\frac{1}{n(n-1)}\]ここで,\((3)\)の結果だけを機械的に覚えていると,「あ,階差数列だ!→公式!」からの
\[b_n=b_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} \frac{1}{k(k-1)} \quad (n \geq 2)\quad \text{※誤答}\]
という式になります.で,あれ?\(k=1\)で分母が\(0\)になるぞ?教科書ではうまくいったはずだが??まあその辺はゴニョゴニョ….

一般に,教科書で扱う例題・練習題のほとんどは親切(?)にも公式を機械的に使いさえすれば正答が得られる問題によって構成されています.でも,入試問題がそんな忖度をしてくれるとは限りません.実戦の場で,恐る恐る怪しい解答を一か八かで作るくらいなら,上で見たように,階差数列の成り立ちに立ち戻って確実な解答を作成しよう,と考えるべきです:

解答

\(n \geq 2\)のとき,\[b_n=b_1+(b_2-b_1)+(b_3-b_2)+(b_4-b_3)+\cdots+(b_n-b_{n-1})\]が成り立つ.この式を\(\sum\)記号を用いて表す.今着目している漸化式が\(b_n-b_{n-1}\)という形であるから,これが利用できるように,\(\sum\)の後ろは\(b_k-b_{k-1}\)という形で表すことにする.これに伴い,始まりの\(k\)は\(2\),終わりの\(k\)は\(n\)であることに注意して
\begin{align*}
b_n&=b_1+\displaystyle \sum_{k=2}^{n}(b_k-b_{k-1})\\
&=b_1+\displaystyle \sum_{k=2}^{n}\frac{1}{k(k-1)}\quad(n \geq 2)
\end{align*}と変形する.(以下略)

解答終

このように,結果である\((3)\)を機械的に使おうとするのではなく,その結果に至るまでの過程を再現しようという姿勢で式を作れば,必然的に正答に辿り着くはずです.というわけで,覚えるなら以下のように覚えるのがおすすめです:

\(n\geq 2\)のとき
\begin{align*}
a_n=&a_1+(a_2-a_1)+(a_3-a_2)+(a_4-a_3)+\cdots+(a_n-a_{n-1})\\
=&a_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}(a_{k+1}-a_{k})\left(=a_1+\displaystyle \sum_{k=2}^{n}(a_k-a_{k-1})=a_1+\displaystyle \sum_{k=0}^{n-2}(a_{k+2}-a_{k+1})\right)\\
=&a_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}b_k
\end{align*}

とくに一行目!二行目は上のように与えられた問題に応じて調整して作る.一番有名な三行目はもはやオマケみたいなもの,というわけです.したがって結果的に,覚えるべきは一行目のみですが,しかしこれは「目的の項\(a_n\)に行きつくまでにはそこまでの差を次々と足し加えればいい」という至極アタリマエな事実に過ぎず,その意味でこれはもはや「覚える」という意識すら必要なくなります.

このように,「結果を覚える」だけでなく,その成り立ちまで含めて理解しておく,つまり単純記憶ではなく理屈によって知識を保持しておくと,余計な記憶をせずに済みますし,なにより自信をもって解答を記述できます.その意味で,天下り的に与えれらた見かけ上の結果だけを貰って満足するのではなく,論理を頼りに根っこの方を追いかけて,そのリクツを知ろうとする姿勢は大事だと思います.「結果を覚えるだけ」の勉強に比べ,一見遠回りですが,そんな姿勢は結果的にはより汎用性のある力に繋がりますから.

減衰曲線

減衰曲線\[y=e^{-x}\sin x\]


この曲線を減衰曲線といいます。入試でよく見られるのはこれに絶対値をとったもの,すなわち\[|y|=|e^{-x}\sin x|=e^{-x}|\sin x|\]です.これを\(f(x)\)とおき,その性質について見てみます.

\(f(x):=e^{-x}|\sin x|\)とする.\(f(x+\pi)\)について調べる.
\begin{align*}
f(x+\pi)&=e^{-(x+\pi)}|\sin (x+\pi)|\\
&=e^{-\pi}e^{-x}|\sin x|\\
&=e^{-\pi}f(x)
\end{align*}
これは翻訳すればいわば「現在地点より\(\pi\)だけ先の関数の値は,現在の関数の値を\(e^{-\pi}\)倍したもの」ということです.

これを減衰曲線の性質としてまとめておきます.

減衰曲線の性質\(f(x):=e^{-x}|\sin x|\)とおくと,\[f(x+\pi)=e^{-\pi}f(x)\tag{1}\]が成り立つ.

このことから,\(y=f(x)~((k-1)\pi \leq x \leq k\pi,k\in \mathbb{N})\)と\(x\)軸で囲まれる部分の面積を\(S(k)\)とおくことにすれば,となりの山に対して縦に\(e^{-\pi}\)だけ縮むわけですから,

\[S(k+1)=e^{-\pi}S(k)\tag{2}\]

が言えることが分かります.

これは,山の面積の間には等比数列の関係があることを意味します.※直観的に明らかですが,念のため計算して確かめておくと,
\begin{align*}
S(k+1)&=\displaystyle \int_{k\pi}^{(k+1)\pi}f(x)dx=\displaystyle \int_{k\pi}^{(k+1)\pi} e^{-x}|\sin x|dx\\
&=\displaystyle \int_{(k-1)\pi}^{k\pi} e^{-(x+\pi)}|\sin(x+\pi)| dx\\
&=\displaystyle e^{-\pi}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi} e^{-x}|\sin x| dx\\
&=\displaystyle e^{-\pi}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi} f(x) dx\\
&=\displaystyle e^{-\pi}S(k)\\
\end{align*}となり確かに成り立ちます.

さて,以上の準備のもとに次の問題を考えてみましょう.

次の極限を求めよ.\[\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}\int_0^{n\pi}e^{-x}|\sin x| dx\]

【解答】
\(\displaystyle \int_0^{n\pi}e^{-x}|\sin x| dx\)は下図の曲線と\(x\)軸で囲まれる部分の面積である.

\(f(x)=e^{-x}|\sin x|\)そして\(~y=f(x)~((k-1)\pi \leq x \leq k\pi,~k = 1,2,\cdots, n)\)と\(x\)軸で囲まれる部分の面積を\(S(k)\)とおくと,\[\displaystyle \int_0^{n\pi}e^{-x}|\sin x| dx= \sum_{k=1}^n S(k)\]となる.\((2)\)により,各山の面積は初項\(S(1)\),公比\(e^{-\pi}\)の等比数列であるから,これはさらに\[\displaystyle \frac{S(1)(1-e^{-n\pi})}{1-e^{-\pi}}\]とかける.\(S(1)\)を求める.
\begin{align*}
\displaystyle S(1)&=\int_{0}^{\pi}f(x)dx\\
&=\int_{0}^{\pi} e^{-x}|\sin x| dx\\
&=\int_{0}^{\pi}e^{-x}\sin x dx\\
&=\left[\frac{-1}{2}\left(e^{-x}\sin x+e^{-x}\cos x\right)\right]_0^\pi\\
&=-\frac{1}{2}(-e^{-\pi}-1)\\
&=\frac{e^{-\pi}+1}{2}
\end{align*}したがって,求める極限は\[\frac{e^{-\pi}+1}{2}\frac{1-e^{-n\pi}}{1-e^{-\pi}}\xrightarrow{n\rightarrow \infty}\frac{e^{-\pi}+1}{2(1-e^{-\pi})}\]となる.【解答終】

\(f(x)=e^{-x}|\sin nx|\)などでも同様に「山の面積は等比数列」が成り立ちますので(調べてみましょう),多少状況が変化しても同様の方針で計算できます。

三角関数の合成

結論から言うと,合成の公式は覚える式ではありません.覚えても使い物になりません.そして忘れてしまえば終わりです.

\(a \sin \theta + b \cos \theta\)を合成してみます.以下のように「導く」のがおすすめです.

証明

まず\(\sin\theta,\cos\theta\)の係数\(a,b\)の二乗の和のルートをくくりだす.すなわち
\[
\begin{align*}
a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin \theta + \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos \theta\right)\\
\end{align*}
\]ここで,点\(\displaystyle \left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)\)は\(\displaystyle\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2+\left(\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2=1\)をみたすことから単位円周上の点であるといえるので,その点と原点を結ぶ線分が\(x\)軸の正の方向となす角を\(\alpha\)とおけば
\[\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}=\cos \alpha,~\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}=\sin \alpha \tag{\(\ast\)}\]とおける.
したがって
\[
\begin{align*}
a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin \theta + \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\cos \alpha \sin \theta + \sin \alpha \cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\sin \theta \cos \alpha+\cos \theta \sin \alpha\right)
\end{align*}
\]
加法定理を逆向きに使うことで
\[=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta + \alpha)\]

証明終

これは証明のための操作ではなく,実際に合成する際も上の証明と全く同じように考え,変形します.ですからこの証明を理解するということは,すなわち具体的な合成の手法が手に入ったということを意味します.また,上のように理解しておくと,たとえば\((\ast)\)において,点\(\displaystyle \left(\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}},\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)\)であっても\(\displaystyle\left(\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2+\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2=1\)をみたすことからやはり単位円周上の点であるといえるので,\[\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}=\cos \alpha’,~\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}=\sin \alpha’\]ともおけることに気付きます.ここから上と同様の変形を行うと,
\[
\begin{align*}
a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin \theta + \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\sin \alpha’ \sin \theta + \cos \alpha’ \cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\cos \theta\cos \alpha’ + \sin \theta\sin \alpha’\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta + \alpha’)
\end{align*}
\]とも変形できることに必然的に気付きます.

\(\ast\)      \(\ast\)      \(\ast\)

公式を導出するまでのに多くの時間と労力を要するのなら,その結果を覚えることも確かに必要です.しかし,そうでないのなら,必要に応じてその場で作ってしまえばいいと割り切ってしまうのもひとつの姿勢です.

結果を覚えるのではなく,導出できるようにしておけば,万が一忘れてもすぐに再現できる.忘れてもいいやと開き直れる.導出過程自体が解法の糸口になることもある.他の公式との共通点が見えきて機会が深まことだって珍しくない.いいことづくめ.

公式を結果だけ覚えろ,あるいは覚えるしかないなどと言われたら相手が誰であれ警戒しましょう.一旦立ち止まり,本当に覚える必要のある式なのか?記憶に頼らずにかわす方法はないか?を自分自身の頭で考える癖を持ちしましょう.自分ひとりで判断できなければ,友人をはじめいろいろな人に意見を求めましょう.数学においても「セカンドオピニオン」は重要です.

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