勉強の姿勢(★P273)

\((4.6)\)を満足する\(S\)の点列\((x_n)\)は一般に一意的にはきまらないが,\((x_n)\)をどのようにとっても,\((4.7)\)の\(\tilde{x}^{\ast}\)は一意的にきまる.そのことも,\(((S^{\ast},d^{\ast}),\varphi)\)および\(((\tilde{S^{\ast}},\tilde{d^{\ast}}),\tilde{\varphi})\)に関する\(\mathrm{(ii)}\)から直ちに示される.

 

\begin{align*}
\mathrm{(ii)}\quad &\forall x,y\in S[d(x,y)=d^{\ast}(\varphi(x),\varphi(y))=\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(y),\tilde{\varphi}(y))]\\
(4.6)\quad &x^{\ast}=\lim_{n\to \infty}\varphi(x_n)\\
(4.7)\quad &\tilde{x}^{\ast}=\lim_{n\to \infty}\tilde{\varphi}(x_n)
\end{align*}

証明

\(x^{\ast}\)を\(S^{\ast}\)の任意の点とすれば\[x^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\varphi(x_n)\]となる\(S\)の点列\((x_n)\)が存在し,\(\tilde{S^{\ast}}\)において\[\tilde{x}^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\tilde{\varphi}(x_n)\]が存在する:\[\forall\epsilon>0\exists n_0\in \mathbb{N}\left[n>n_0 \Rightarrow \tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}^{\ast}(x_n),\tilde{x}^{\ast})<\frac{\epsilon}{3}\right]\](証明済みとする)ここで,\[x^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\varphi(x_n)=\lim_{n \to \infty}\varphi(x^{\prime}_n)\]となる\(S\)の点列\((x^{\prime}_n)\)が存在すると仮定する: \begin{align*} &\forall\epsilon>0\exists n_1\in \mathbb{N}\left[n>n_1 \Rightarrow d^{\ast}(\varphi(x_n),x^{\ast})<\frac{\epsilon}{3}\right]\\ &\forall\epsilon>0\exists n_2\in \mathbb{N}\left[n>n_2 \Rightarrow d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),x^{\ast})<\frac{\epsilon}{3}\right] \end{align*} このとき,示すべきことは\[\tilde{x}^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n)\]すなわち\[\forall\epsilon>0\exists n^{\prime}_0\in \mathbb{N}\left[n>n^{\prime}_0 \Rightarrow \tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{x}^{\ast})<\epsilon\right]\]である.この示すべき\(n^{\prime}_0\)は\[n^{\prime}_0=\max\{n_0,n_1,n_2\}\]である.実際,\(\mathrm{(ii)}\)により \begin{align*} &d(x^{\prime}_n,x_n)=d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),\varphi(x_n))\\ &d(x^{\prime}_n,x_n)=\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{\varphi}(x_n)) \end{align*}に注意すれば,\(n>n^{\prime}_0\)のとき,
\begin{align*}
\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{x}^{\ast})\leq&\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{\varphi}(x_n))+\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x_n),\tilde{x}^{\ast})\\
=&d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),\varphi(x_n))+\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x_n),\tilde{x}^{\ast})\\
\leq&d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),x^{\ast})+d^{\ast}(x^{\ast},\varphi(x_n))+\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x_n),\tilde{x}^{\ast})\\
<&\frac{\epsilon}{3}+\frac{\epsilon}{3}+\frac{\epsilon}{3}\\
=&\epsilon
\end{align*}

証明終

数学の成績を上げるために「初見の問題を次々と浴びるように演習すればいい」と考えている人は少なくなくありません。1回見ただけあるいは解いただけで内容を理解しかつ覚えられる頭脳の持ち主ならば確かにそれが最善の勉強法だと思います。が,高くないレベルでもがいている時点で少なくともそのタイプには当てはまらない。いわゆる普通の生徒がそのような勉強をしても,勉強した気になるだけで右の耳から左の耳,知識が頭に残らず何の意味もない。「考える力がつくから」と思うかもしれませんがそれも実質的には意味がない。その「考える力」なるものも知識を土台にして成り立つものだからです。そして試験というのはこの意味で「頭の中の知識を吐き出す場」であって,当然ながらないものは出せず,点数にすら結びつかない。

だから,数学の勉強をする際はこれと決めた本で,しかも新しい問題ではなく同じ問題を出来るようになるまで繰り返し,まず必要な知識(何を知っていれば/どう考えれば解けたのか,間違えたのであればその原因は何だったのか,等々)を頭に定着させることが最初の一歩だと僕は考えています(もちろん,必然性を伴って!)。その地道な作業の過程で長い時間がかかるものの確実に点数は上がっていく。

そしてこの解き直しという周回作業には強力な副産物がある。いやむしろ「数学」の学習という意味ではこっちが主産物かも知れない。

それは「分からなかったところが分かるようになる」「自分の過去の理解や解釈の誤りに気付く」「新たな疑問(=新たな視点)が得られる」ということ…総じて,「理解が深まる」ことだ。

卑近な例だけど上での証明もそう。僕は粘りに粘ってもどうしても理解できないところは泣く泣く理解を保留し,付箋を貼っておいて未来の自分に希望を託している。その付箋の箇所のひとつを,最近,改めて考えたら上のように片付いた。これは自分の成長の証でとても嬉しいことだし,なにより自信がつく。少なくとも数学はこのような姿勢で学ぶことが重要と思う。

数学で点数がとれないと悩んでいる人は,頭の中に知識を入れなければ何も始まらないという現実にまず向き合おう。そのために,あれこれと問題を食い散らかさず,できなかった問題を出来るようになるまで繰り返し解こう。分からない問題があってももいい。いずれわかる。そうして本が手垢でボロボロになるまで読み込もう。

学校であれ予備校であれ塾であれ,なんとなく授業をうけてなんとなく解いていても残念ながら成績が上がることはない。

覚悟を決めよう。

★P106

…その場合,\((W_{\lambda},\leq _{\lambda}),(W_{\lambda^{\prime}},\leq _{\lambda^{\prime}})\)のいずれか一方は他方の切片,したがって部分順序集合であるから…

 

松坂先生の集合・位相入門,理解できない箇所はところどころあるけどここもその一つ。周回後のレベルアップした(であろう)自分に期待するんだけど読むたびにやっぱりなんか釈然としない。多分しょーもないことなんだろうけど…。色々考えた末,以下の理解に落ち着いた:

理解

たとえば\((W_{\lambda},\leq _{\lambda})\)が\((W_{\lambda^{\prime}},\leq _{\lambda^{\prime}})\)の切片であるとする.切片\[(W_{\lambda^{\prime}},\leq _{\lambda^{\prime}})\langle a \rangle(= \{x|x \in W_{\lambda^{\prime}},x \leq_{\lambda^{\prime}} a\})\]これ自体は(あくまで\(W^{\prime}\)の元から順序\(\leq_{\lambda^{\prime}}\)で\(a\)よりも小さい元を集めたものに過ぎないから)ただの\(W_{\lambda^{\prime}}\)の部分集合であり,順序は定義されていない.しかし,一般に,順序集合\(A\)の空でない任意の部分集合\(M\)は,順序が与えれれていなくても,「\(A\)における順序を\(M\)上に制限した」と考えることで\(A\)と同じ順序が与えれられる(※).したがって,部分集合\((W_{\lambda^{\prime}},\leq _{\lambda^{\prime}})\langle a \rangle\)は順序集合\[((W_{\lambda^{\prime}},\leq _{\lambda^{\prime}})\langle a \rangle , \leq_{\lambda^{\prime}})\]となる.これが\((W_{\lambda},\leq _{\lambda})\)に等しいから\[\leq_{\lambda^{\prime}}=\leq _{\lambda}\]となる.

理解終

※は89,90ページの部分順序集合についての記述から判断したもののちょっと自信ない。
…まあ,さしあたりこの理解でいいや^^;

「存在することを示せ」と言われたら(その2)(★P105問題2 )

順序集合\(A\)の元の列\((a_n)_{n\in\mathbb{N}}\)で,\(a_1<a_2<\cdots<a_n<\cdots\)となるものを\(A\)における昇鎖という.これと相対的に\(A\)における降鎖が定義される.\(A\)が全順序集合であるとき,\(A\)が整列集合であるための必要十分条件は,\(A\)において降鎖が存在しないことであることを示せ.

存在を追え!

証明

(\(\Rightarrow\))
\(A\)が整列集合で,\(A\)において降鎖が存在すると仮定する.このとき,\(A\)の元の列\((a_n)_{n\in\mathbb{N}}\)で,\[a_1>a_2>\cdots>a_n>\cdots\]となるものが存在するが,\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)には最小元が存在せず,矛盾である.

(\(\Leftarrow\))
\(A\)が整列集合でないならば\(A\)において降鎖が存在することを示す(対偶).
仮定により,\(A\)は整列集合でないから

\begin{align*}
\neg (A\text{が整列集合})\Longleftrightarrow~&\neg (\text{空でない任意の部分集合が最小元をもつ})\\
\Longleftrightarrow~&\neg (M\neq \phi,M \subset A \Rightarrow M\text{は最小元をもつ})\\
\Longleftrightarrow~&\exists M[M\neq \phi,M \subset A, M\text{は最小元をもたない}\cdots (\ast)]
\end{align*}

\begin{align*}
\neg (M\text{が最小元をもつ})~\Longleftrightarrow~&\neg(\exists a\in M \forall x \in M [a\leq x])\\
\Longleftrightarrow~&\forall a\in M \exists x \in M [x < a]\cdots(\ast\ast)\\
\end{align*}

したがって\((\ast)\)を満たす\(M\)が存在する.この\(M\)の任意の元\(a\)に対して,\((\ast\ast)\)により,\( x <a\)となる\(x\in M\)が存在する.そこで,\(M\)の元を任意に\(1\)つとり(これを\(a_1\)とおく),それに応じて定まる(\(x <a_1\)を満たす)\(x\in M\)を\(a_2\)とおくと\[a_2 < a_1\]となる.さらにこの\(a_2\in M\)に対して,再び\((\ast\ast)\)により,上と同様に\(x < a_2\)となる\(x \in M\)が存在する.これを\(a_3\)とおけば,\[a_3 < a_2\]が成り立つ.これを繰り返して\(A\)の元の列\((a_n)_{n\in \mathbb{N}}\)を定めれば,これが示すべきものとなる.

証明終

\(\overline{a+b=c\text{日本語入力するとなんかはみ出すので,}}\)
なので上では\(\neg\)を使いました。

上限の定義

\(A\)を集合\(S\)の空でない部分集合とします。

上限の定義\(A\)が上に有界であるとき,もし\(A\)の上界のうちに最小元\(a\)があるならば,\(a\)を\(A\)の上限といい,\[\sup A=a\]と表す.

この定義を詳しく見ると,上限とは,

\((1)\) \(a\)は\(A\)の上界である
\((2)\) \(a\)は\(A\)の上界の最小元である

の2つで特徴付けられていることがわかります。これらを論理記号を用いて記述してみると
\begin{align*}
&\forall x\in A[x \leq a]\tag{1}\\
&\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]\Longrightarrow a\leq a^{\prime}\tag{2}
\end{align*}そこで,\((2)\)を変形してみます。すると
\begin{align*}
&\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]\Longrightarrow a\leq a^{\prime}\tag{2}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]} \lor a\leq a^{\prime}\\
\Longleftrightarrow~&a\leq a^{\prime} \lor \overline{\forall x\in A[x \leq a^{\prime}]}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{a > a^{\prime}} \lor \exists x\in A[x > a^{\prime}]\\
\Longleftrightarrow~& a > a^{\prime} \Longrightarrow \exists x\in A[x > a^{\prime}]\tag{2′}
\end{align*}つまり,\((2′)\)は「\(a\)より少しでも小さい\(a^{\prime}\)を持ってくると,その\(a^{\prime}\)よりも大きい\(A\)の元が存在してしまう」すなわち「\(a\)より少しでも小さい\(a^{\prime}\)を持ってくると,それはもはや上界ではない」ということになります。したがって上の\((1),(2)\)は

\((1)\) \(a\)は\(A\)の上界である
\((2′)\) \(a^{\prime}\)を\(a^{\prime} < a\)を満たす\(S\)の任意の元とすれば,\(a^{\prime}\)は\(A\)の上界ではない

と言い換えらえれることになります。

\(*\)\(*\)\(*\)

\((2)\)と書かれている本と\((2′)\)と書かれている本があって気になっていたので整理してみました。

★P270

\((a_n)_{n\in \mathbb{N}},(b_n)_{n\in \mathbb{N}}\)を\(\mathbb{R}\)の点列とする.このとき\[\lim_{n\rightarrow \infty} a_n =a,~\lim_{n\rightarrow \infty} b_n =b,~a_n\leq b_n \Longrightarrow a \leq b\]

証明の途中で出てきました。直観的にはマジで明らかだけどちょっと気になったので調べてみます。高校数学ではこれをアタリマエとして使っていると思います。\(a_n\leq b_n\)はもちろん\(\forall n \in \mathbb{N} [a_n\leq b_n]\)の略記です。

証明

\[\lim_{n\rightarrow \infty} a_n =a,\lim_{n\rightarrow \infty} b_n =b,a_n\leq b_n \land a > b\]と仮定する.\(\forall \epsilon >0 \exists n_1\in \mathbb{N} [n>n_1 \Rightarrow d(a_n,a)<\epsilon]\)であるから\(\epsilon\)として例えば\(\frac{a-b}{3}>0\)をとると,
\begin{align*}
d(a_n,a)<\frac{a-b}{3}\Longleftrightarrow~&|a_n-a| < \frac{a-b}{3}\\ \Longleftrightarrow~&-\frac{a-b}{3}< a_n-a < \frac{a-b}{3}\\ \Longleftrightarrow~&a-\frac{a-b}{3}< a_n < a+\frac{a-b}{3}\\ \end{align*}他方,\(\forall \epsilon >0 \exists n_2\in \mathbb{N} [n>n_2 \Rightarrow d(b_n,b)<\epsilon]\)であるから上と同様に\(\epsilon=\frac{a-b}{3}>0\)として\[d(b_n,b)<\frac{a-b}{3}\Longleftrightarrow~b-\frac{a-b}{3}< b_n < b+\frac{a-b}{3}\]ここで,\[a-\frac{a-b}{3}-\left(b+\frac{a-b}{3}\right)=\frac{a-b}{3}>0\]これは\(a_n \leq b_n\)に反する.

証明終

これで安心(^^)!(死んだ目)

★P263(問題4の一部)

\[\forall \epsilon >0 \exists \delta >0[d^{\prime\prime}(x,y) \Longrightarrow d(x,y)<\epsilon]\]を示せ.ただし,\(d^{\prime\prime}(x,y):=\min\{1,d(x,y)\}\)

証明

与えられた\(\epsilon\)が\(\epsilon < 1\)であれば\(\delta = \epsilon\)と定め,\(\epsilon \geq 1\)であれば\(\delta = \delta^{\prime} < 1 (\leq \epsilon)\)と定めればよい.以下,それを確かめる.

\(\epsilon < 1\)のとき:
\(d^{\prime\prime}(x,y):=\min\{1,d(x,y)\}<\epsilon \).\(1 \leq d(x,y)\)とすれば\(\min\{1,d(x,y)\}=1<\epsilon\)となり矛盾.したがって\(1>d(x,y)\)である.このとき,\(\min\{1,d(x,y)\}=d(x,y)<\epsilon\)

\(\epsilon \geq 1\)のとき:
\(d^{\prime\prime}(x,y):=\min\{1,d(x,y)\}<\delta^{\prime}(<1)\).\(1 \leq d(x,y)\)とすれば\(\min\{1,d(x,y)\}=1<\delta^{\prime}<1\)となり矛盾.したがって\(1>d(x,y)\)である.このとき\(\min\{1,d(x,y)\}=d(x,y)<\delta^{\prime}<1\leq \epsilon\)より\(d(x,y)<\epsilon\)

証明終

多分簡単な問題だと思うんですけど任意に与えられた正数\(\epsilon\)をそのままで\(\delta\)探しして結構時間がかかってしまった…

これ記法や表現を適当に変えれば高校生向けの論理の問題に出来る気がします。

★P254

\(\mathbb{R}\)の開区間\(J=(0,\infty)\)の各点\(x\)に対し,\(f(x)=\frac{1}{x}\)として写像\(f:J\rightarrow \mathbb{R}\)を定義する.この写像は,明らかに(\(\mathbb{R}\)の部分距離空間としての)\(J\)から\(\mathbb{R}\)への連続写像である.

 
証明

示したいことは
\begin{align*}
&\forall a \in J \forall \epsilon >0 \exists \delta >0[d(x,a)<\delta \Rightarrow d'(f(x),f(a))<\epsilon]\\ \Longleftrightarrow~&\forall a \in J \forall \epsilon >0 \exists \delta >0\left[|x-a|<\delta \Rightarrow \left|\frac{1}{x}-\frac{1}{a}\right|<\epsilon\right]\\
\end{align*}である.\[\left|\frac{1}{x}-\frac{1}{a}\right|=\left|\frac{a-x}{xa}\right|=\frac{|x-a|}{|x||a|}<\frac{\delta}{|x||a|}<\epsilon\]
となるような\(\delta\)の存在を示したい.まず,\(0 <\delta < a\)と\(\delta\)を定める.すると\(|x-a| < \delta \Leftrightarrow (0 <)a-\delta < x < a+\delta\)より\((0 < )|a-\delta| < |x|\).また\((0 <)|a|-|\delta|\leq |a-\delta|\)であるから,\[\left|\frac{1}{x}-\frac{1}{a}\right| <\frac{\delta}{|x||a|} < \frac{\delta}{|a-\delta||a|} < \frac{\delta}{(|a|-|\delta|)|a|}=\frac{\delta}{(|a|-\delta)|a|} \tag{1} \]したがって\(\frac{\delta}{(|a|-\delta)|a|}<\epsilon\)を満たすように\(\delta\)を定めればよい.\(
(2)~\frac{\delta}{(|a|-\delta)|a|} < \epsilon \Leftrightarrow~\delta < \frac{\epsilon |a^2|}{1+\epsilon|a|}\)であるが,\(\delta\)は\(\delta < a\)と定めたのであったから,改めて\(\delta\)を\[\delta < \min \left\{a,\frac{\epsilon |a^2|}{1+\epsilon|a|}\right\}\]を満たす\(\delta\)として定めればよい.実際,こうして定まる\(\delta\)を\(\delta^{\prime}\)とおけば,\(\delta^{\prime} < a,~\delta^{\prime} < \frac{\epsilon |a^2|}{1+\epsilon|a|}\)が成り立つので,上の不等式\((1),(2)\)(の\(\delta\)を\(\delta^{\prime}\)に変えたもの)が成り立ち,その\(2\)式から\(\left|\frac{1}{x}-\frac{1}{a}\right| < \epsilon\)が得られる.

証明終

★P249

\(d(x,A)=0\)であることは,定義によって,いかなる正数\(\epsilon\)を与えた場合にも,\(d(x,y)<\epsilon\)となる\(y\in A\)が存在すること(中略)を意味する.

 
えっなんで?

証明

\(\{d(x,y)|y \in A\}=M\)とおく.
\begin{align*}
&~d(x,A)=0\\
\Longleftrightarrow &~\inf\{d(x,y)|y \in A\}=0\\
\Longleftrightarrow &~\inf M=0\\
\Longleftrightarrow &~\begin{cases}\forall c \in M [0\leq c] \quad\text{※ 恒真命題}\\ \forall c \in M [c^{\prime} \leq c]\Rightarrow c^{\prime}\leq 0\end{cases}\\
\Longleftrightarrow &~\forall c \in M [c^{\prime} \leq c]\Rightarrow c^{\prime}\leq 0\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in \mathbb{R}\left[\forall c \in M [c^{\prime} \leq c]\rightarrow c^{\prime}\leq 0\right]\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in \mathbb{R}\left[\overline{\forall c \in M [c^{\prime} \leq c]} \lor c^{\prime}\leq 0\right]\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in \mathbb{R}\left[\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0\right]\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in (-\infty,0]\cup(0,\infty)\left[\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0\right]\\
\Longleftrightarrow &~c^{\prime}\in (-\infty,0]\cup(0,\infty) \Rightarrow (\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0)\\
\Longleftrightarrow &~c^{\prime}\in (-\infty,0]\lor c^{\prime}\in(0,\infty)\Rightarrow (\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0)\\
\Longleftrightarrow &~\begin{cases}c^{\prime}\in (-\infty,0]\Rightarrow (\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0) \quad \text{※ 恒真命題}\\ c^{\prime}\in(0,\infty) \Rightarrow (\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0)\end{cases}\\
\Longleftrightarrow &~c^{\prime}\in(0,\infty) \Rightarrow (\exists c \in M [c^{\prime} > c] \lor c^{\prime}\leq 0)\\
\Longleftrightarrow &~(c^{\prime}\in(0,\infty) \Rightarrow \exists c \in M [c^{\prime} > c]) \lor (c^{\prime}\in(0,\infty) \Rightarrow c^{\prime}\leq 0\quad\text{※ 矛盾命題})\\
\Longleftrightarrow &~c^{\prime}\in(0,\infty) \Rightarrow \exists c \in M [c^{\prime} > c]\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in(0,\infty)\exists c \in M [c^{\prime} > c]\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in(0,\infty)\exists c \in \{d(x,y)|y \in A\} [c^{\prime} > c]\\
\Longleftrightarrow &~\forall c^{\prime}\in(0,\infty)\exists y \in A [c^{\prime} > d(x,y)]\\
\Longleftrightarrow &~\forall \epsilon >0 \exists y \in A [d(x,y) < \epsilon]
\end{align*}

証明終

★P218

一方,\(M\)は\(\mathbb{R}\)の閉集合であるから,明らかに,それらの上限および下限はともに\(M\)に属さなければならない

 

証明

\(M=[a,b]\)とおくとき,\(c = \sup M \notin M\)と仮定する.\[c=\sup M \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} \left\{
\begin{array}{l}
\forall x \in M[x\leq c] \cdots(1)\\
\forall x \in M[x\leq c^{\prime}]\Rightarrow c \leq c^{\prime}\cdots(2)\\
\end{array}
\right.\]であるから,\((1)\)において\(b\in M\)より\(b \leq c\).\((2)\)の仮定を満たす\(c^{\prime}\)として\(b\)が挙げられるので,\(c \leq b\).ここで\(c=b\)と仮定すると\(b \in M\)だから\(c \in M\)となり\(c \notin M\)に反する.したがって\(c < b\).しかしこれは\(b \leq c\)と矛盾する.下限についても同様.よって\(\sup M \in M,~\inf M \in M\)である.

証明終

★P216

\(\mathbb{R}^n\)の部分集合\(M\)は,それが\(\mathbb{R}^n\)のある球体\(B(a;\epsilon)\)に含まれるとき,有界であると言われる.これは,\(M\)が\(\mathbb{R}^n\)のある開区間(あるいは閉区間)に含まれることといっても,明らかに同じことである.

 

証明

示すべきことは\[\exists \epsilon >0 [M \subset B(a;\epsilon)] \Longleftrightarrow M \subset \text{開区間(となる開区間が存在)}\]である.\(B(a;\epsilon)=\{x|x\in\mathbb{R}^n,d(a,x)<\epsilon\}\).

必要性.\(x \in M\)を任意にとる.このとき,仮定により\(d(a,x)<\epsilon\)である.
\begin{align*}
d(a,x)<\epsilon \Longleftrightarrow &\sqrt{\sum_{i=1}^{n}(x_i-a_i)^2}<\epsilon\\
\Longleftrightarrow &(x_1-a_1)^2+\cdots+(x_n-a_n)^2<\epsilon^2\\
\Longrightarrow &(x_i-a_i)^2<\epsilon^2~(i=1,\cdots,n)\\
\Longleftrightarrow &|x_i-a_i|<\epsilon~(i=1,\cdots,n)\\
\Longleftrightarrow &x\in\text{開区間}
\end{align*}

十分性.\(M\subset\{x=(x_1,\cdots,x_n)|a_i < x_i < b_i~(i=1,\cdots,n)\}\)とする.\(x=(x_1,\cdots,x_n)\in M\)とすると,\(a_i < x_i < b_i(i=1,\cdots,n)\)が成り立つ.\(\max\{b_1-a_1,\cdots,b_n-a_n\}\)より大きい\(\epsilon^{\prime}\)をとる.この\(\epsilon^{\prime}\)に対して,
\begin{align*}
d(a,x)= &\sqrt{\sum_{i=1}^{n}(x_i-a_i)^2}=\sqrt{(x_1-a_1)^2+\cdots (x_n-a_n)^2}\\
<&\sqrt{(b_1-a_1)^2+\cdots (b_n-a_n)^2}\\
\leq &|b_1-a_1|+\cdots |b_n-a_n| \\
= &(b_1-a_1)+\cdots (b_n-a_n) < n\epsilon^{\prime}
\end{align*}

この\(n\epsilon^{\prime}\)より大きい\(\epsilon\)をとればよい.

証明終

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