メネラウスの定理の逆

メネラウスの定理とは,

三角形\(\mathrm{ABC}\)の\(2\)つの辺上と他の\(1\)辺の延長上に点\(\mathrm{P,Q,R}\)をとる(※).ここでは
点\(\mathrm{P}\)を辺\(\mathrm{BC}\)の延長上の点,\(\mathrm{R,Q}\)をそれぞれ辺\(\mathrm{AB,AC}\)上の点であるとする.

という仮定のもとで(※ 簡単のために「点\(\mathrm{P,Q,R}\)がすべて各辺の延長上の点である場合」は除いて考えることにします。),

\begin{align*}
&\text{点\(P,Q,R\)は一直線上に存在する}\Longleftrightarrow~\frac{RB}{AR}\cdot\frac{PC}{BP}\cdot\frac{QA}{CQ}=1
\end{align*}

が成り立つ,というものでした。問題では(\(\Rightarrow\))で使うことが圧倒的に多いのですが,まれに(\(\Leftarrow\))で使うことがあります。問題集等では唐突に出てきますがその証明は載ってないことが多いので以下に示します。

証明

(\(\Rightarrow\)の証明は有名なので割愛)

(\(\Leftarrow\)の証明)
直線\(\mathrm{RQ}\)が直線\(\mathrm{BC}\)と交わる点を\(\mathrm{P^{\prime}}\)とする.

メネラウスの定理(上で証明済み)により,
\[\frac{RB}{AR}\cdot\frac{P^{\prime}C}{BP^{\prime}}\cdot\frac{QA}{CQ}=1\tag{1}\]
仮定により\[\frac{RB}{AR}\cdot\frac{PC}{BP}\cdot\frac{QA}{CQ}=1\tag{2}\]
\((1)\)により\[\frac{RB}{AR}\cdot\frac{QA}{CQ}=\frac{BP^{\prime}}{P^{\prime}C}\]

これを\((2)\)に代入すると
\begin{align*}
\frac{PC}{BP}\cdot\frac{BP^{\prime}}{P^{\prime}C}=1\Longleftrightarrow~&\frac{PC}{BP}=\frac{P^{\prime}C}{BP^{\prime}}\\
\Longleftrightarrow~&BP:PC=BP^{\prime}:P^{\prime}C
\end{align*}
よって\(P=P^{\prime}\).ゆえに\(P,Q,R\)は一直線上に存在する.

証明終

  • メネラウスの定理は一般的には高校で習いますが,学校によっては中学でも扱います。これを使うことで妙な(?)補助線を思いつく必要がなくなったりします。
  • 上のように中学幾何は論理(必要性・十分性)を学ぶ絶好の機会…と思うのだけど学習の際はそこはあまり強調されないようです。証明に至っては「証明は型にはめる作業だ」と教わることもあるそうな…
  • チェバの定理の逆も同じようにして証明できます。

2次の不定方程式(つづき1)

次の方程式を満たす整数\(x,y\)の値を求めよ.

    1. \(2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\)
    2. \(x^2-4xy+5y^2+2x-5y-1=0\)
  • 前回記事(上の問題)の1. \[2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\]を因数分解せずに解くとどうなるかを見てみます。前と同様,
    \begin{align*}
    &2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&x=\frac{-3(y-1)\pm \sqrt{25y^2-50y+49}}{4}
    \end{align*}と変形し,ここから必要条件として\[25y^2-50y+49\geq 0\]が得られますが,しかしこれは何の旨味もないものです。なぜならこの式を満たす\(y\in \mathbb{Z}\)は無数にあり,\(y\)が絞れないからです。そこで必要条件として別のものをとり出してみます。

    別解

    \begin{align*}
    &2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&x=\frac{-3(y-1)\pm \sqrt{25y^2-50y+49}}{4}
    \end{align*}\(x\)は整数であるから\[25y^2-50y+49=k^2\quad(k=0,1,2,\cdots)\]と表せることが必要.ここで
    \begin{align*}
    &25y^2-50y+49=k^2\\
    \Longleftrightarrow~&25(y^2-2y+1-1)-k^2+49=0\\
    \Longleftrightarrow~&25(y-1)^2-k^2=-24\\
    \Longleftrightarrow~&(5(y-1)-k)(5(y-1)+k)=-24\\
    \Longleftrightarrow~&(5y-k-5)(5y+k-5)=-24(=-2^3\times 3)
    \end{align*}
    また,\((5y-k-5)+(5y+k-5)=2(5y-3)(=\text{偶数})\)であることから\(5y-k-5\)と\(5y+k-5\)の偶奇は一致すること,そして\(5y-k-5<5y+k-5\)であることから,\((5y-k-5,5y+k-5)\)の組み合わせは\[(-2^1,2^2\cdot 3),(-2^2,2^1\cdot 3),(-2^1\cdot 3,2^2),(-2^2\cdot 3,2^1)\]の\(4\)通りであることが分かる.これより\(y=2,\frac{6}{5},\frac{4}{5},0\)が得られ,\(y\)は整数だから\(y=0,2\)で\(x=-1,1\).したがって求める答えは\((x,y)=(-1,0),(1,2)\)である.

    別解終

    途中,必要条件なのに逆の考察をしていないのはやはり同値だからです。論理式で記述すると(つづく)

    2次の不定方程式

    次の方程式を満たす整数\(x,y\)の値を求めよ.

    1. \(2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\)
    2. \(x^2-4xy+5y^2+2x-5y-1=0\)
  • 1.
    整数問題の大まかなタイプとしては,

    因数分解,範囲を絞ってしらみつぶし,合同式の利用(余りで分類)

    というのは有名ですが,このうち一つ目の因数分解を狙うというのは自然な発想かと思います。

    (因数分解の方針その1)
    \begin{align*}
    &2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&2x^2+3(y-1)x-2y^2+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&2x^2+3(y-1)x-2(y^2-2y+1-1)-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&2x^2+3(y-1)x-2(y-1)^2-3=0\\
    \Longleftrightarrow~&(2x-y+1)(x+2y-2)=3
    \end{align*}

    3行目の変形がちょっと苦しい…?^^;

    (因数分解の方針その2)
    \begin{align*}
    &2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&2x^2+3(y-1)x-2y^2+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&2\left(x^2+\frac{3(y-1)}{2}x+\frac{9(y-1)^2}{16}-\frac{9(y-1)^2}{16}\right)-2y^2+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&2\left(x+\frac{3(y-1)}{4}\right)^2-\frac{9(y-1)^2}{8}-2y^2+4y-5=0\\
    \Longleftrightarrow~&(4x+3(y-1))^2-9(y-1)^2-16y^2+32y-40=0\\
    \Longleftrightarrow~&(4x+3(y-1))^2-25y^2+50y-49=0\\
    \Longleftrightarrow~&(4x+3(y-1))^2-25(y^2-2y+1-1)-49=0\\
    \Longleftrightarrow~&(4x+3(y-1))^2-25(y-1)^2=24\\
    \Longleftrightarrow~&(4x-2y+2)(4x+8y-8)=24\\
    \Longleftrightarrow~&(2x-y+1)(x+2y-2)=3
    \end{align*}平方完成で強引に。

    (因数分解の方針その3)
    \(2x^2+3xy-2y^2=(2x-y)(x+2y)\)に着目し,\((2x-y+a)(x+2y+b)\)という式の展開式を考えます。すると\[(2x-y+a)(x+2y+b)=2x^2+3xy-2y^2+Ax+By+C\]という与式の形が現れますから,\(A=-3,B=4\)を解いて,\(a,b\)を求めます(これを\(a_0,b_0\)とします。これにより\(C=C_0\)も求まる):\[(2x-y+a_0)(x+2y+b_0)=2x^2+3xy-2y^2-3x+4y+C_0\]与式より\(2x^2+3xy-2y^2-3x+4y=5\)でしたから
    \begin{align*}
    &(2x-y+a_0)(x+2y+b_0)=2x^2+3xy-2y^2-3x+4y+C_0\\
    \Longleftrightarrow&~(2x-y+a_0)(x+2y+b_0)=5+C_0
    \end{align*}を得ます。以上を実際行うと,
    \[(2x-y+1)(x+2y-2)=2x^2+3xy-2y^2-3x+4y-2=5-2=3\]となります。

    …ともあれ因数分解できました。あとは右辺の因数の組み合わせが\((1,3),(-1,-3),(3,1),(-3,-1)\)のみであることから\((x,y)=(1,2),(-1,0)\)を得ます。

    2.
    これも因数分解…と思いきや,1.のようにうまく因数分解できない。お手上げか…?
    そこで姿勢を変えて論理で攻めてみます

    解答
    \begin{align*}
    &x^2-4xy+5y^2+2x-5y-1=0\\
    \Longleftrightarrow~&x^2-2(2y-1)x+5y^2-5y-1=0\\
    \Longleftrightarrow~&x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2}
    \end{align*}これが整数解をもつならば,\(-y^2+y+2\geq 0\)であることが必要
    \begin{align*}
    &-y^2+y+2\geq 0\\
    \Longleftrightarrow~&y^2-y-2\leq 0\\
    \Longleftrightarrow~&(y-2)(y+1)\leq 0\\
    \Longleftrightarrow~&-1 \leq y\leq 2
    \end{align*}

    \(y\)は整数であるから,\(y=-1,0,1,2\)
    \(y=-1\)のとき\(x=-3\),
    \(y=0\)のとき\(x=-1\pm \sqrt{2}\),
    \(y=1\)のとき\(x=1\pm \sqrt{2}\),
    \(y=2\)のとき\(x=3\),

    ゆえに\((x,y)=(-1,-3),(2,3)\)が求めるものである.

    解答終

    必要条件なのに逆の考察をしていないのは同値だからです。論理式で記述すると
    \begin{align*}
    &x,y\in \mathbb{Z},x^2-4xy+5y^2+2x-5y-1=0\\
    \Longleftrightarrow~&x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2}\\
    \Longleftrightarrow~& x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2} \land -y^2+y+2\geq 0\\
    \Longleftrightarrow~& x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2} \land -1\leq y \leq 2\\
    \Longleftrightarrow~& x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2}\\
    &\land (y=-1 \lor y=0 \lor y=1 \lor y=2)\\
    \Longleftrightarrow~& \left(x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2} \land y=-1\right)\\
    \lor & \left(x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2} \land y=0\right)\\
    \lor & \left(x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2} \land y=1\right)\\
    \lor & \left(x,y\in \mathbb{Z} \land x=(2y-1)\pm\sqrt{-y^2+y+2} \land y=2\right)\\
    \Longleftrightarrow~& (x,y\in \mathbb{Z} \land x=-3 \land y=-1)\\
    \lor & (x,y\in \mathbb{Z} \land x=-1\pm \sqrt{2} \land y=0)\\
    \lor & (x,y\in \mathbb{Z} \land x=1\pm\sqrt{2} \land y=1)\\
    \lor & (x,y\in \mathbb{Z} \land x=3 \land y=2)\\
    \Longleftrightarrow~&(x,y\in \mathbb{Z} \land x=-3 \land y=-1)\lor (x,y\in \mathbb{Z} \land x=3 \land y=2)\\
    \Longleftrightarrow~&x,y\in \mathbb{Z} \land (( x=-3 \land y=-1)\lor (x=3 \land y=2))\\
    \Longleftrightarrow~&( x=-3 \land y=-1)\lor (x=3 \land y=2)
    \end{align*}ということをしています。ちなみに,\(1.,2.\)それぞれを図示すると\(1.\)は双曲線,\(2.\)は楕円になります。

     

    倍数の判定法

    \(N\)を自然数とする.

    \(N\)の下\(2\)桁が\(4\)の倍数\(~\Longleftrightarrow~\)\(N\)が\(4\)の倍数

    証明

    \(N\)を\(i\)桁目が\(a_{i-1}~(i=1,\cdots,n,a_{i-1}\in\mathbb{N})\)であるような自然数とする.
    \begin{align*}
    N&=a_0+a_1\times 10^{1}+a_2\times 10^{2}+\cdots+a_{n-1}\times 10^{n-1}\\
    &=a_0+a_1\times 10^{1}+10^2(a_2+ a_3 \times 10 + \cdots + a_{n-1}\times 10^{n-3})\\
    &=a_0+a_1\times 10^{1}+4 \times 25(a_2+ a_3 \times 10 + \cdots + a_{n-1}\times 10^{n-3})\tag{\(\ast\)}
    \end{align*}

    \(\Rightarrow\)について:
    \(N\)の下\(2\)桁が\(4\)の倍数であるとする.\((\ast)\)により,
    \[N=a_0+a_1\times 10^{1}+4 \times 25(a_2+ a_3 \times 10 + \cdots + a_{n-1}\times 10^{n-3})\]仮定により,\(N\)の下\(2\)桁が\(4\)の倍数,すなわち\(a_0+a_1\times 10^{1}\)が\(4\)の倍数であるから\(N\)は\(4\)の倍数である.

    \(\Leftarrow\)について:
    \(N\)が\(4\)の倍数であるとする.\((\ast)\)により,
    \begin{align*}
    &N=a_0+a_1\times 10^{1}+4 \times 25(a_2+ a_3 \times 10 + \cdots + a_{n-1}\times 10^{n-3})\\
    \Longleftrightarrow~&a_0+a_1\times 10^{1} = N – 4 \times 25(a_2+ a_3 \times 10 + \cdots + a_{n-1}\times 10^{n-3})
    \end{align*}仮定により,\(N\)は\(4\)の倍数であるから\(a_0+a_1\times 10^{1}\)すなわち\(N\)の下\(2\)桁は\(4\)の倍数である.

    証明終

    教科書の記述だと「\(4\)の倍数…下\(2\)桁が\(4\)の倍数である」というような記述をしており,必要条件なのか十分条件なのか曖昧なのでここにまとめておきます。他の倍数の判定もまったく同様の方針で証明できます。ちなみに合同式を使うともっと簡潔に記述できます。

    「存在することを示せ」と言われたら 

    (数学A,数学B)

    「ツチノコの存在を証明しろ」と言われたら,どうすればいいか。
    …それは簡単,ツチノコを捕まえて連れてくればOK!

    ここで,数学Aの「整数の性質」で登場した「整数の割り算」について見てみます。

    一般に,次のことが成り立つ。

    整数\(a\)と正の整数\(b\)について\[a=qb+r,~0\leq r < b\]となる整数\(q,r\)はただ\(1\)通りに定まる。

    『高等学校 数学A』数研出版

     
    「定まる」とは要は「存在する」ということですが,いずれにせよ初めて学んだときは感覚的に当たり前すぎて疑問にすら思わなかったと思います。しかし,いざこれを証明しろと言われたらどうしたらいいでしょう…?

    ずばり,実際にもってこよう!(以下では簡単のために\(a\geq 0\)とし,また一意性の部分はカットします)

    \(a,b\)を\(a \geq 0,b>0\)を満たす整数とする.このとき,
    \[a=qb+r,~0\leq r < b\tag{\(\ast\)}\]を満たす整数\(q,r\)が存在することを示せ.

    証明

    \(b(>0)\)を固定して,任意の\(a(\geq 0)\)について主張が成り立つことが示せればよい.

    \(a < b\)であるとき:
    \(q=0,r=a\)とすればよい.

    \((0 <)b \leq a\)であるとき:
    数学的帰納法で示す.\(a\)より小さい非負の整数で主張が成り立つとする.\(b>0\)より\(b \leq a \Leftrightarrow 0 \leq a-b (< a)\)であるから,\(a-b\)は\(a\)より小さい非負の整数である.したがって仮定により,\begin{align*}
    &\exists q^{\prime},r^{\prime}\in \mathbb{Z}[a-b = q^{\prime}b+r^{\prime},0 \leq r^{\prime} \leq b]\\
    \Longleftrightarrow~&\exists q^{\prime},r^{\prime}\in \mathbb{Z}[a = (q^{\prime}+1)b+r^{\prime},0 \leq r^{\prime} \leq b]
    \end{align*}よって\((\ast)\)を満たす\(q,r\)として\(q=q^{\prime}+1,~r=r^{\prime}\)ととればよい.
    これで,\(a\)より小さい非負の整数で主張が成り立てば,\(a\)でも主張が成り立つことが分かった.
    \(a=0\)のときは,\(q=0,r=0\)とすればよい.

    以上により任意の\(a(\geq 0)\)に対して\((\ast)\)を満たす\(q,r \in \mathbb{Z}\)が存在することが示せた.

    証明終

    現物もってくれば文句ないだろっていう。

    こんなところで数学Bで学んだ(学ぶ)数学的帰納法が登場するのも面白いですね。しかも直前の番号のみを仮定する教科書の定番タイプではなく,直前以前の番号すべてを仮定するタイプの帰納法です。

    パズルみたいな学校数学もまあまあ面白いけど,個人的にはこういう緻密な調査の方がすきだなあ。点数にならないけど。

     

    任意の

    とある問題の証明を読んでいたら,こんな一文に出会いました.記号の意味はさておき,\(\delta(A),\delta(\overline{A}),\epsilon\)はいずれも実数です.

    (中略) \(\delta(\overline{A}) \leq \delta(A) + \epsilon\).\(\epsilon\)は任意の正数だから,\(\delta(\overline{A}) \leq \delta(A)\).

     

    (ここで理解が詰まる)

    「任意」と言われたから,どんな正数でもOKですが,でかい数をもってきても結論の不等式が得られるとは思えませんから,めちゃくちゃ小さい数を持ってくることにします.\(\delta(A)\)に加えられる数\(\epsilon\)をめちゃくちゃ小さくしたとしてもやっぱり\(\delta(\overline{A})\)よりも\(\delta(A)\)の方が大きい…,ということは\(\delta(A)\)の方が大きいと言える…のか…??感覚的には納得できるような気もしないでもないですが,でも小さいとはいえ正数を加えられている以上それを除いてもやはり\(\delta(\overline{A})\)以上だ,なんて言えるのだろうか,とも感じられ,釈然としません.

    議論に関係のない文字がうるさいので,ちょっと簡略化して書き直します.

    \(a,b \in \mathbb{R}\)とする.
    任意の正数\(\epsilon\)に対して\(a \leq b + \epsilon\)が成り立つならば,\(a \leq b\)が成り立つ.

    こう書くとちょっと高校数学の証明問題ぽいですね.実際,いちおう数学Aの集合と論理を終えた高1生なら理解できる(証明できる)と思います.調べてみましょう.

    証明

    背理法で示す.証明したいことは
    \[\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]\Longrightarrow a \leq b\]
    であるから,否定をとると
    \begin{align*}
    &\overline{\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]\Longrightarrow a \leq b}\\
    \Longleftrightarrow~&\overline{\overline{\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]} \lor a \leq b}\\
    \Longleftrightarrow~&\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ] \land a > b
    \end{align*}\(a>b\)だから,\(a-b > 0\).また,\(\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]\),つまり\(a \leq b + \epsilon\)が任意の\(\epsilon > 0\)について成り立つから,ここでは\(\epsilon=\frac{a-b}{2} >0\)ととることにする.すると,\[a \leq b +\frac{a-b}{2} \Longleftrightarrow a \leq b\]を得る.これは\(a>b\)であることに反する.

    証明終

    この証明,知識としてはほぼ高校数学の知識しか使ってない上にとてもシンプルな論証なので,教科書では無視しがちな「任意の」を重要性を確認させる問題としていいんじゃないかな,なんて思いました.「任意の」と言っているのだから,都合のよい\(\epsilon\)を代入したところがポイントです.

    全確率の定理

    A君が友人とストリートファイターⅡ(スーファミ)で友人Bと対戦している.A君が勝つ確率は?

    という問題があったとしましょう.こんな問題を見たらどう思いますか?(勝つか負けるか,2分の1だ!は間違いですよ~)当然,こう思うと思います「そらA君が誰使うかによるだろ」と.では,どんな場合があるでしょうか.リュウを使う場合,ケンを使う場合,ガイルを使う場合,春麗を使う場合….いろいろ考えられます.そして,ストⅡは2人同時に操作はできません(そのラウンドで1人のプレイヤーがリュウとケンと同時に操作し味方2人状態で戦うことはできません!).つまり同時に起こることはありませんから,これらの場合は互いに排反です.したがって,求める確率は
    \[
    \begin{align*}
    P(\text{A君が勝つ})=&P(\text{A君が勝つ}\cap\text{リュウを使う})+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{ケンを使う})\\
    &+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{エドモンド本田を使う})+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{春麗を使う})\\
    &+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{ブランカを使う})+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{ザンギエフを使う})\\
    &+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{ガイルを使う})+P(\text{A君が勝つ}\cap\text{ダルシムを使う})
    \end{align*}
    \]
    「A君が勝つ」という事象を\(A\),「リュウを使う」という事象を\(B_1\),「ケンを使う」という事象を\(B_2\),「エドモンド本田を使う」という事象を\(B_3\),・・・,「ダルシムを使う」という事象を\(B_8\)とおくことにすれば,上の式は
    \[
    \begin{align*}
    P(A)=&P(A\cap B_1)+P(A\cap B_2)+P(A\cap B_3)+P(A\cap B_4)\\
    &+P(A\cap B_5)+P(A\cap B_6)+P(A\cap B_7)+P(A\cap B_8)\\
    &=\displaystyle \sum^{8}_{i=1}P(A\cap B_i)
    \end{align*}
    \]すなわち\[P(A)=\displaystyle \sum^{8}_{i=1}P(A\cap B_i)\]と書けることがわかります.これを一般化すると,

    全確率の定理\[P(A)=\displaystyle \sum^{\infty}_{i=1}P(A\cap B_i)\]

    であると言えそうです.これを全確率の定理と呼びます.

    ところで「ストリートファイター」ってゲーム自体今はどれくらい知名度あるんだろう?僕の時代は知らない人はいないくらいに流行っていました(スクリューパイルドライバーが出せたらまさにヒーロー).なので馴染みやすいかなと思って例に挙げましたが….調べると今はストリートファイター5まであるみたいですね.プレイアブルキャラは40人(!)らしいですから,この場合は\[P(A)=\displaystyle \sum^{40}_{i=1}P(A\cap B_i)\]ですね^^;

    確率の乗法定理

    条件付き確率の定義より,\[P(B|A)=\frac{P(B\cap A)}{P(A)}\]
    両辺に\(P(A)\)を掛けることによって,\[P(A \cap B)=P(A)P(B|A)\]が得られます.(\(P(B \cap A)=P(A\cap B)\)としました)これを確率の乗法定理といいます.

    確率の乗法定理(その1)\[P(A \cap B)=P(A)P(B|A)\]

    日本語に翻訳すると「事象\(A\)と事象\(B\)が同時に起こる確率は,事象\(A\)の確率と,事象\(A\)の影響を受けた事象\(B\)の確率(条件付き確率)との積に等しい」ということで,少し確率の問題に慣れた人であればいつも無意識にやっている計算だと思います.例題で確認してみます.
    当たりくじ3本を含む10本のくじの中から,引いたくじはもとに戻さないで,1本ずつ2回続けてくじを引く.2本とも当たる確率を求めよ.また,2回目が当たる確率いくらか.

    1回目が当たるという事象を\(A\),2回目が当たるという事象を\(B\)とします.

    2本とも当たる確率)
    求める確率は\(P(A\cap B)\)です.確率の乗法定理より,\(P(A \cap B)=P(A)P(B|A)\)ですから,\(P(A)\)と\(P(B|A)\)を求めましょう.\(P(A)=\frac{3}{10}\)なのは問題ないでしょう.\(P(B|A)\)を求めます.これは「1回目が当たったという事実のもとで2回目が当たる確率」ですから,「引いたくじはもとに戻さない(当たりが1枚減る)」ことに注意せねばなりません.1回目に当たりを引けば,その後全体の枚数は9枚,当たりは2枚になりますから,\(P(B|A)=\frac{2}{9}\)です.したがって求める確率は\[P(A \cap B)=P(A)P(B|A)=\frac{3}{10}\cdot\frac{2}{9}=\frac{1}{15}\]となります.

    2回目が当たる確率)
    求める確率は\(P(B)\)です.まず気をつけて欲しいのは,求めようとしているのは確率\(P(B)\)であって確率\(P(B|A)\)ではない,ということ.すなわち,確率を求めようとしている今この時,まだ1回目は引いてもいない!何もしていない!ということです.まだなにもしていない,くじの前で黙って腕を組んだまま2回目を予想している(\(P(B)\)を求めようとしている)…そんなイメージです.1回目は引いてもいないし眼中にもありません.2回目だけを見つめています.以上に留意して,実際に\(P(B)\)を求めてみましょう.確率の定義に従います.2回目に起こりうるすべての場合の数は?2回目において,10枚のくじのどれが引きやすくどれが引きにくいなどということはありません(同様に確からしい).よって10通り.題意に適する場合の数は?当たり3枚のうちどれが引きやすくどれが引きにくいということはやはりありません.よって3通り.したがって求める確率は,\[P(B)=\frac{3}{10}\]となります.\(P(B|A)\neq P(B)\)であることに注目してください.

    次の問題です.

    当たりくじ3本を含む10本のくじの中から,1本ずつ2回続けてくじを引く.2本とも当たる確率を求めよ.ただし,引いたくじはもとに戻すものとする.また,2回目に当たる確率はいくらか.

    2本とも当たる確率)
    求める確率は\(P(A\cap B)\)です.確率の乗法定理より,\(P(A \cap B)=P(A)P(B|A)\)ですから,\(P(A)\)と\(P(B|A)\)を求めましょう.\(P(A)=\frac{3}{10}\)なのは問題ないでしょう.\(P(B|A)\)を求めます.これは「1回目が当たったという事実のもとで2回目が当たる確率」なわけですが,今回は引いたくじをもとに戻しています.ですから,2回目の状況は1回目の状況となんら変化がないことになります.したがって,\(P(B|A)=\frac{3}{10}\)となります.よって,求める確率は\[P(A \cap B)=P(A)P(B|A)=\frac{3}{10}\cdot\frac{3}{10}=\frac{9}{100}\]となります.

    2回目が当たる確率)
    求める確率は\(P(B)\)です.前問同様に考えます.2回目に起こりうるすべての場合の数は?2回目において10枚のくじのどれもが同様に確からしい.よって10通り.題意に適する場合の数は?当たり3枚のうちどれもがやはり同様に確からしい.よって3通り.したがって求める確率は,\[P(B)=\frac{3}{10}\]となります.前問と全く同じです.

    さて,今回は\(P(B|A)\),\(P(B)\)はどちらも\(\frac{3}{10}\)ですから\(P(B|A)=P(B)\)です.この,\[P(B|A)=P(B)\]が成り立つとき,事象\(A\)と事象\(B\)は独立であるといいます.この式を「翻訳」すると,「\(B\)の確率は\(A\)が起きたかどうかなんて関係ない」と,すなわち「事象\(A\)と事象\(B\)が互いに影響を及ぼしていない」と読み取ることができます.

    以上の準備のもと,次の定理が成り立ちます.

    確率の乗法定理(その2)事象\(A\)と事象\(B\)が独立,すなわち\(P(B|A)=P(B)\)のとき\[P(A \cap B)=P(A)P(B)\]

    高校教科書では上の話を,「2つの試行同士が互いに影響を与えない」ことを「独立」であると定義し,そのもとで確率の乗法定理(その2)を紹介しています.そしてこの話とは別の話題として(大分後になってから)「条件付き確率」から「確率の乗法定理(その2)」を導く,という順序で説明しています.なので,確率の乗法定理が2回(しかもそのあいだかなり間を挟んでから)登場することになり,それらにどのような関係があるのかがいまいち見えづらいのではないでしょうか.

    しかし,上でみたように\[\text{条件付き確率の定義}\rightarrow\text{確率の乗法定理その1}\rightarrow\text{「独立」の定義}\rightarrow\text{確率の乗法定理その2}\]という流れで理解すると,高校教科書では「別々のもの」として載っている2つの確率の乗法定理が同じもの(その1を特殊化したものがその2)であることが明解で,論理的にはしっくりくると個人的に思います.

    もっとも,実用上においては(実際問題を解く上では)どちらの理解でも大差はないと思いますが…

    ベイズの定理

    ベイズの定理\[P(B_i|A)=\frac{P(B_i)P(A|B_i)}{ \sum^{\infty}_{j=1}P(A)P( B_j|A)}\quad(i=1,2,\cdots)\]

    (証明)
    \[
    \begin{align*}
    P(B_i|A)&=\frac{P(B_i\cap A)}{P(A)}&\cdots~(1)\\
    &=\frac{P(B_i)P(A|B_i)}{ \sum^{\infty}_{j=1}P(A\cap B_j)}&\cdots~(2)\\
    &=\frac{P(B_i)P(A|B_i)}{ \sum^{\infty}_{j=1}P(A)P(B_j|A)}&\cdots~(3)
    \end{align*}
    \]
    \((1)\)は条件付き確率の定義そのものです.\((2)\)の分子は確率の乗法定理より,分母は全確率の定理によります.\((2)\)の分母に再び確率の乗法定理を用いると\((3)\)となります.(証明終)

    この「ベイズの定理」は,証明の過程を見て貰えば分かる通り,条件付き確率の定義式確率の乗法定理全確率の定理を用いて変形したものに過ぎません.なので,この式は「根っこはあくまで条件付き確率の定義式だ」という認識のもと,あとは(その条件付き確率の定義式を)問題に応じて便宜変形する,というような使い方をすればよいと思います(つまり「条件付き確率」の定義を納得しており,「確率の乗法定理」と「全確率の定理」を知ってさえいればベイズの定理そのものを覚える必要はない,ということ).

    このベイズの定理を用いて,次の問題を解いてみます.早稲田大の問題です.

    ジョーカーを除いたトランプ52枚の中から1枚のカードを抜き出し,表を見ないで箱の中にしまった.そして残りのカードをよくきってから3枚抜き出したところ,3枚ともダイヤであった.このとき箱の中のカードがダイヤである確率を求めよ.
    (早稲田・文)

    「抜き出された1枚がダイヤ」という事象を\(A\),「3枚ともダイヤ」という事象を\(B\)とおきます.すると,求める確率は\(P(A|B)\)と表せます.これをベイズの定理を用いて計算してみましょう.
    \[
    \begin{align*}
    P(A|B)&=\frac{P(A\cap B)}{P(B)}\\
    &=\frac{P(A)P(B|A)}{P(B\cap A)+P(B\cap \overline{A})}\\
    &=\frac{P(A)P(B|A)}{P(A\cap B)+P(\overline{A}\cap B)}\\
    &=\frac{P(A)P(B|A)}{P(A)P(B|A)+P(\overline{A})P(B|\overline{A})}\\
    &=\frac{\frac{{}_{13} \mathrm{C}_1}{{}_{54} \mathrm{C}_1}\times \frac{{}_{12} \mathrm{C}_3}{{}_{53} \mathrm{C}_3}}{\frac{{}_{13} \mathrm{C}_1}{{}_{54} \mathrm{C}_1}\times \frac{{}_{12} \mathrm{C}_3}{{}_{53} \mathrm{C}_3}+\frac{{}_{39} \mathrm{C}_1}{{}_{54} \mathrm{C}_1}\times \frac{{}_{13} \mathrm{C}_3}{{}_{53} \mathrm{C}_3}}\\
    &=\frac{10}{49}
    \end{align*}
    \]
    となります.

    条件付き確率の直観的理解

    条件付き確率の定義事象\(A\),事象\(B\)に対して,確率\[\frac{P(B\cap A)}{P(A)}\]を\(A\)が与えられたときの\(B\)の条件付き確率と呼び,\(P(B|A)\)と書く.

    この定義をみても,正直しっくりこないという人は多いと思います.今回はこの条件付き確率の定義の直観的理解を目指してみようと思います.

    まず,次の問題を考えてみましょう.

    問題
    100人の生徒に,次の2つの質問をした.「さんまの内臓を食べるか食べないか」「エビフライのしっぽは食べるか食べないか」.すると,次のような結果を得た.この100人の中から,1人を選び出す.このとき,次の問いに答えよ.

      1. 選び出された生徒が,サンマの内臓を食べる確率
      2. 選び出された生徒が,エビフライのしっぽを食べる確率
      3. 選び出された生徒が,サンマの内臓もエビフライのしっぽも食べる確率
      4. 選び出された生徒が,サンマの内臓は食べるが,エビフライのしっぽは食べない確率
      5. 選び出された生徒が「自分はサンマの内臓は食べますよ~」と発言した.このとき,その生徒がエビフライのしっぽも食べる確率

    (解答)

      1. 表をみると全生徒\(100\)人の中でサンマの内臓を食べる人数は\(45\)人ですから,求める確率は\(\frac{45}{100}\)
      2. 表を見ると全生徒\(100\)人の中でエビフライの尻尾を食べる人数は\(67\)人ですから,求める確率は\(\frac{67}{100}\)
      3. 表を見ると全生徒\(100\)人の中でサンマの内臓もエビフライの尻尾も食べる人数は\(35\)人ですから,求める確率は\(\frac{35}{100}\)
      4. 表を見ると全生徒\(100\)人の中でサンマの内臓は食べるが,エビフライの尻尾は食べない人数は\(10\)人ですから,求める確率は\(\frac{10}{100}\)

    …と簡単に求められると思います.ここまでウォーミングアップ.問題は5.です.

    実際に想像してみましょう.自分の目の前に一人生徒が来た.この生徒がエビフライの尻尾を食べるかどうかを予測したい.そこで,確率を求めようと表を眺めます.この時点では選び出されたその生徒がエビフライの尻尾を食べる確率は\(\frac{67}{100}\)です.図で視覚化すると,

    という感じでしょうか.この時点では確率は2.とおんなじです.

    しかしここで!その生徒が「自分はサンマの内臓は食べますよ~美味しいですよね~」と喋り,我々がその発言を聞いてしまったとしましょう.すると状況は一変してしまいます.なぜなら,目の前にいる生徒が「サンマの内臓を食べない」という可能性がなくなるから,図中の内臓を食べない(内臓×)という部分が消え失せ,結果として図が下のように変化してしまう(縮んでしまう)からです.

    「サンマの内臓を食べる」という発言を聞いてしまった以上,この右側の縮んでしまった図のもとで確率を考え直さねばなりません:全体の人数が\(35+10=45\)で,そのうち尻尾を食べる人数は\(35\)人ですから,求める確率は\(\frac{35}{45}\left(=\frac{7}{9}\right)\)となります.図で視覚化すると,以下のようになります.

    このように,「情報が入ることで,図(全事象)が縮む」というのが理解のポイントです.

    ではいよいよ上の話を数式に翻訳してみましょう.
    題意の確率「『(選び出された生徒が)内臓を食べる』という情報を耳にしたとき,その生徒が尻尾も食べる確率」を\[P(\text{尻尾}|\text{内臓})\]と書くことにしましょう.この確率は,上の議論により
    \[
    \frac{n(\text{尻尾}\cap \text{内臓})}{n(\text{内臓})}
    \]
    と書けることになります(下図参照).

    したがって,\[P(\text{尻尾}|\text{内臓})=\frac{n(\text{尻尾}\cap \text{内臓})}{n(\text{内臓})}\]
    さらに,分母分子を全体の人数\(n(\text{全体})(=100)\)で割ると
    \[
    \begin{align*}
    P(\text{尻尾}|\text{内臓})&=\frac{n(\text{尻尾}\cap \text{内臓})}{n(\text{内臓})}\\
    &=\frac{\frac{n(\text{尻尾}\cap \text{内臓})}{n(\text{全体})}}{\frac{n(\text{内臓})}{n(\text{全体})}}=\frac{P(\text{尻尾}\cap \text{内臓})}{P(\text{内臓})}
    \end{align*}
    \]
    となります.したがって,
    \[
    P(\text{尻尾}|\text{内臓})=\frac{P(\text{尻尾}\cap \text{内臓})}{P(\text{内臓})}
    \]
    と書けます.さらに,「内臓(内臓を食べる)」という事象を\(A\),「尻尾(尻尾を食べる)」という事象を\(B\)とおけば
    \[
    P(B|A)=\frac{P(B\cap A)}{P(A)}
    \]
    となり最初の定義式を得ます.

    以上をまとめると,条件付き確率の定義式の直観的イメージは次のようだといえそうです:

      • 情報が入ったことで,全事象が縮んでしまう(事象\(\overline{A}\)が消え,事象\(A\)だけ残る).
      • 縮んだあとの事象\(A\)のもとでの確率を考えることになるから,分母には\(P(A)\)がくる.
      • 分子には,事象\(\overline{A}\)が消えてしまい事象\(A\)だけに縮んでしまった,そのもとでの事象\(B\),すなわち事象\(B\cap A\)の確率\(P(B\cap A)\)がくる.

    定義式\(P(B|A)=\frac{P(B\cap A)}{P(A)}\)は上の図のイメージ,すなわち「全事象が縮んだあとの確率計算」という認識をもっておくことが直観的理解のコツ,ということです.

    ちなみに,\(P(B|A)\)は高校教科書では\(P_A(B)\)と表現していることに注意してください.どちらも同じ意味で,正しい記法です.が,個人的には\(P(B|A)\)の方をおすすめします.記述の際に書きやすいし,何より気持ち的に\(A\)が\(B\)の『後側』にあることから「\(A\)が\(B\)『背景』にあるんだよ」というニュアンスが伝わりやすいからです.

    © 2024 佐々木数学塾, All rights reserved.