教科書では,この公式の下で,次のような問題と解答を用意しています.
\[\displaystyle \int x\sqrt{x^2+1}dx\]
引用元:『高等学校 数学Ⅲ』数研出版
\(x^2+1=u\)とおくと\(2xdx = du\)
\begin{align*}
\displaystyle \int x \sqrt{x^2+1}dx &= \frac{1}{2}\int \sqrt{x^2+1}\cdot 2x dx\\
\displaystyle &= \frac{1}{2}\int \sqrt{u} du=\cdots\\
\displaystyle &=\frac{1}{3}(x^2+1)\sqrt{x^2+1}+C
\end{align*}引用元:『高等学校 数学Ⅲ』数研出版
置換してますね.
ところで,\(\int f(u) du\)って\(f(u)\)の原始関数なんだから,上の公式は
\begin{align*}
\displaystyle \int f(g(x))g'(x) dx&=\int f(u) du \quad\text{ただし,}g(x)=u\\
\displaystyle &=F(u) + C\quad\text{ただし,}g(x)=u\\
\displaystyle &=F(g(x)) + C\\
\end{align*}
と変形して,
とも書けますね.というか,これを公式としたほうが良くない…?そうすれば「被積分関数が\(f(g(x))g'(x)\)という形をしていれば,\(f(\quad)\)の原始関数を求めて,その’中身’である\(g(x)\)をそのまま放り込めばいい」という簡単な使い方に変わると思うんですが….
あと教科書の解説だと全ッ然強調してないのですが,この公式が使えることにそもそもどうやって気付くのか?が実用(受験)上では極めて重要です.たとえこの公式を知識として持っていても気付かなければ使おうという発想に至りませんからね.気付くためのポイントは被積分関数に\(g(x)\)と\(g'(x)\)という二人がいるかどうか?です.この「\(g,~g’\)」が見つかったら,まずこの公式のタイプだと思って間違いないでしょう.そして見つかった\(g(x)\)と\(g'(x)\)のうち,\(g(x)\)を\(X\)などとおいて浮かび上がってくる関数が\(f(X)\)です.そしてその\(f(X)\)の原始関数(の1つ)さえ見つけらればこの積分計算はそれで終わりです.
上の例でやってみましょう.\(x^2+1\)と\(x\)の間にその\(g,~g’\)関係がありそうですね.でも惜しいことに\(x^2+1\)を微分すると\(2x\)です.今あるのは\(x\)だからちょっと違う.まあでも,係数の違いは微調整して\(x=\frac{1}{2}\cdot 2x\)と思っておけばいいでしょう.これで\(g(x)\)が見つかりました.これを\(X\)とおいてその部分を眺めてみましょう.すると\(\sqrt{X}=X^{\frac{1}{2}}\)となります.これが知りたかった\(f(X)\)です.あとはこれの原始関数(の1つ)を求めればいい.\[\frac{1}{\frac{1}{2}+1}X^{\frac{1}{2}+1}=\frac{2}{3}X^{\frac{3}{2}}\]
あとは\(\frac{2}{3}(\quad)^{\frac{3}{2}}\)にもともとあった\(g(x)=x^2+1\)を放り込んで\(\frac{1}{2}\cdot\frac{2}{3}(x^2+1)^{\frac{3}{2}}\).たったこれだけで終了.置換などする必要がない.ちなみに先頭の\(\frac{1}{2}は\)先ほど\(g'(x)\)を\(\frac{1}{2} \cdot 2x\)と微調整しておいてときの\(\frac{1}{2}\)です.以上解答としてまとめると
\begin{align*}
\displaystyle \int x \sqrt{x^2+1}dx &= \frac{1}{2}\cdot\frac{2}{3}(x^2+1)^{\frac{3}{2}}+C\\
&= \frac{1}{3}(x^2+1)^{\frac{3}{2}}+C
\end{align*}
ほぼ一行で終わります.「\(f,g,g’\)」タイプにおいてすべきことは\(f(\quad)\)を見つけ出しその原始関数(の1つ)を求めるだけです.教科書のようにダラダラと置換してはいけません.