中学生~高校1年生の記述を見ていると気になることがあります.例えば,方程式 \(x^2+5x+2=0\) を解け,という問題.
(解答1)
\[\begin{align}
x&=\frac{-5\pm\sqrt{5^2-4\cdot2}}{2}\\
&=\frac{-5\pm\sqrt{25-8}}{2}\\
&=\frac{-5\pm\sqrt{17}}{2}
\end{align}\]
(解答2)
\[\begin{align}
x&=\frac{-5\pm\sqrt{5^2-4\cdot2}}{2}\\
x&=\frac{-5\pm\sqrt{25-8}}{2}\\
x&=\frac{-5\pm\sqrt{17}}{2}
\end{align}\]
もちろん,どちらも正解です.ただ,主張していることが微妙に違います.言葉で説明するより数式で表現した方が早いので,数式で説明してみます.それぞれの解答を少し書き直してみます.
(解答1’)
\[x=\frac{-5\pm\sqrt{5^2-4\cdot2}}{2}=\frac{-5\pm\sqrt{25-8}}{2}=\frac{-5\pm\sqrt{17}}{2}\]
(解答2’)
\[\begin{align}
x&=\frac{-5\pm\sqrt{5^2-4\cdot2}}{2}\\
\Longleftrightarrow x&=\frac{-5\pm\sqrt{25-8}}{2}\\
\Longleftrightarrow x&=\frac{-5\pm\sqrt{17}}{2}
\end{align}\]
すなわち
\[x=\frac{-5\pm\sqrt{5^2-4\cdot2}}{2}
\Longleftrightarrow x=\frac{-5\pm\sqrt{25-8}}{2}
\Longleftrightarrow x=\frac{-5\pm\sqrt{17}}{2}\]
つまり,(解答1)は「1つの式を(横にダラダラ続けると見づらいので)縦に改行したもの」,(解答2)は「複数の式を同値記号\(\Leftrightarrow\)でつなぎ,さらにその同値記号を省略したもの」を意味しています.ちょっと難しい言葉を使うと,(解答1)が単一の式で表された命題(条件)であるのに対し,(解答2)は複数の命題が同値記号で結ばれた合成命題である,ということです.
もちろん,中学生は上の話を理解できなくてもいいのですが,意味がちょっと違う,ということだけは少なくとも認識しておきたいところです.個人的には中学生段階では(解答1)のように書くことを勧めます.同値性を認識せずに(省略されているとはいえ)同値記号\(\Leftrightarrow\)を使っているのはちょっとまずい気がしますし,また単純な計算問題において同じことを何度も書くのはくどいしかっこ悪いからです.
高校生の皆さんも,一般に,式が縦に並んでいるときは同値記号\(\Leftrightarrow\)が省略されているんだなと認識しておくのがとよいと思います.記述における必要性や十分性を意識するひとつのきっかけにもなると思いますから.