2次方程式の共通解問題(その2・つづき)

\[(P\Rightarrow Q \lor R) \land \overline{Q\Rightarrow P} \land (R \Rightarrow P)\Rightarrow~(P \Leftrightarrow R)\]

証明

\(P\Rightarrow Q \lor R,\overline{Q\Rightarrow P},R \Rightarrow P\)となる行,すなわち\(P\rightarrow Q \lor R,\overline{Q\rightarrow P},R \rightarrow P\)が真となる行(上から6行目)に着目すると,\((P\rightarrow Q \lor R) \land \overline{Q\rightarrow P} \land (R \rightarrow P)\)と\(P \leftrightarrow R\)の真理値(青〇)が一致している.したがって\[(P\Rightarrow Q \lor R) \land \overline{Q\Rightarrow P} \land (R \Rightarrow P)\Longrightarrow~(P \Leftrightarrow R)\]を得る.

証明終

(関連:2次方程式の共通解問題(その2)

2次方程式の共通解問題(その2)

\(2\)つの\(2\)次方程式\(x^2-3x+m-1=0,x^2+(m-2)x-2=0\)が共通な実数解をただ\(\)1つもつとき,定数\(m\)の値とその共通解を求めよ.

解答

\begin{align*}
&x^2-3x+m-1=0,x^2+(m-2)x-2=0\text{が共通な実数解をただ1つもつ}\\
\Longrightarrow~&x^2-3x+m-1=0,x^2+(m-2)x-2=0\text{が共通な実数解をもつ}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x
\begin{cases}
x^2-3x+m-1=0\\
x^2+(m-2)x-2=0
\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x
\begin{cases}
x^2-3x+m-1=0\\
x^2+(m-2)x-2-(x^2-3x+m-1)=0
\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x
\begin{cases}
x^2-3x+m-1=0\\
(m+1)(x-1)=0\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x
\begin{cases}
x^2-3x+m-1=0\\
m=-1\lor x=1
\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x [x^2-3x+m-1=0 \land (m=-1 \lor x=1)]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x [(x^2-3x+m-1=0 \land m=-1) \lor (x^2-3x+m-1=0 \land x=1)]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x (x^2-3x-2=0 \land m=-1) \lor \exists x(1^2-3\cdot 1+m-1=0 \land x=1)]&\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \left[x=\frac{3\pm \sqrt{17}}{2} \land m=-1\right] \lor \exists x[m=3 \land x=1]\\
\Longleftrightarrow~&\left(\exists x \left[x=\frac{3\pm \sqrt{17}}{2}\right] \land m=-1 \right) \lor (m=3 \land \exists x[x=1])\\
\Longleftrightarrow~&m=-1 \lor m=3
\end{align*}
(\(\exists x \left[x=\frac{3\pm \sqrt{17}}{2}\right],\exists x[x=1]\)は恒真命題)二行目が同値変形でないことに注意すると,結局,
\begin{align*}
x^2-3x+m-1=0,x^2+(m-2)x-2=0\text{が共通な実数解をただ1つもつ}&\\
\Longrightarrow~m=-1 \lor m=3&
\end{align*}
つまり得られた条件は必要条件に過ぎないので,十分性を調べる必要があります。そこで,逆に\(m=-1\)のときと\(m=3\)のときそれぞれの場合において「与えられた\(2\)次方程式が共通な実数解をただ1つもつ」ことを調べることにします。

\(m=-1\)のとき,与えられた\(2\)つの方程式は\(x^2-3x-2=0\)と\(x^2-3x-2=0\)となり,どちらの解も\(x=\frac{3\pm\sqrt{17}}{2}\)であり「ただ\(1\)つの」共通解を持つとは当然いえません。他方,\(m=3\)のときは\(x^2-3x+2=0\)と\(x^2+x-2=0\)となり,これらを解くとそれぞれの解は\(x=-2\)と\(x=-1\),そして\(x=-2\)と\(x=1\)となりこれなら「ただ\(1\)つの」共通解\(x=-2\)をもつと言えます。したがって答えは\[m=3\](で,共通解は\(x=-2\))となります。

解答終

結局これは,①必要条件を調べ,次に②その条件が十分条件となっているかどうかを調べる,という2つの段階に分けるというのが大まかなシナリオです(①は同値性を気にすることなくとりあえず右向きの矢印だけ気にすればいいから気楽)。このような方針は問題を解く際にしばしば見られるものです。実際,教科書の軌跡の解説などではお馴染みですね。僕は受験生時代,この問題の解説にはどことない気持ち悪さを感じつつもただただ解法パターンとして覚えることしかできず,細かいことは見て見ぬふりをしていました。今思えばその「気持ち悪さ」は結局論理を理解していなかったのが原因だと思います。とはいえ,学校で扱わないのだからこの手の話が分からんのはアタリマエ。ってかそもそも扱ってないことを問題にする時点でおかしくないか…?

先日,授業でこの\(2\)次方程式の共通解問題を扱い,例によって上のような解説を(もちろん論理式でなく日本語で)していてふと思いました。上の議論はつまり「\(P\Longrightarrow Q \lor R\)が言えました,そして\(Q\rightarrow P\)が偽(\(\overline{Q\rightarrow P}\)が真)で,\(R \rightarrow P\)が真であることが分かりました,だから\(P \Longleftrightarrow R\)と言えるよね」というもの,つまり\[(P\Rightarrow Q \lor R) \land \overline{Q\Rightarrow P} \land (R \Rightarrow P)\Longrightarrow~(P \Leftrightarrow R)\]ですが(※),そもそもこの命題は正しいのでしょうか…?僕自身この変形を普段から無意識に行っていましたが…よくよく考えれば疑問です。このことを調べてみます。(つづく

(関連:2次方程式の共通解問題(その1)

※(21/9/16) \(\Leftrightarrow\)を\(\Rightarrow\)に訂正しました。R君ご指摘ありがとうございます。

三角不等式

次の不等式を証明せよ.
\[\displaystyle \sum_{i=1}^{n}|x_i+y_i|^p \leq \sum_{i=1}^{n}|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+\sum_{i=1}^{n}|y_i||x_i+y_i|^{p-1}\]

高校数学の範囲的には数学Ⅰ(絶対値),数学Ⅱ(不等式の証明,三角不等式),数学B(シグマ計算)あたりかな?

証明
\begin{align*}
|x_i+y_i|^p = &|x_i+y_i||x_i+y_i|^{p-1} \\
\leq &(|x_i|+|y_i|)|x_i+y_i|^{p-1}\\
= &|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+|y_i||x_i+y_i|^{p-1}
\end{align*}

この不等式の\(i\)を\(i=1 \cdots n\)とかえて辺々加えて\[\displaystyle \sum_{i=1}^{n}|x_i+y_i|^p \leq \sum_{i=1}^{n}|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+\sum_{i=1}^{n}|y_i||x_i+y_i|^{p-1}\]を得る.

証明終

Minkowskiの不等式の証明で使うのでここにnoteしておきます。

高校数学の証明問題としても使えると思いますが三角不等式って高校数学ではそれほど使用頻度が高くないので意外と詰まっちゃう高校生も多い気がします。

絶対値

生徒に絶対値の定義は?と聞くと十中八九「距離です」と答えます。実際,教科書を見ると

数直線上で,実数\(a\)に対応する点と原点との距離を\(a\)の絶対値といい,記号\(|a|\)で表す

『高等学校 数学Ⅰ』数研出版

 
とあります。\(|3|\)とか\(|-5|\)などを考えるにはこの理解で問題ないでしょう。

しかし,この少し後で学ぶ\(|x|\)や\(|x-4|\)などを含む方程式・不等式が現れると途端に分からなくなる,という生徒がすごく多いのです。確かに「『絶対値は距離』だから\(x-4\)までのキョリ?どういうこと??」と大混乱してしまうのはまったく無理もないと思います。これは,その生徒ではなく教科書の定義の仕方自体に原因があると思う。「距離」なんてものを持ち出して中途半端に視覚化して理解させようとするから(応用問題において)逆に混乱させてしまう。

というわけで教科書はあまり当てにならないので,手元の微分積分学の本では絶対値をどう定義しているか見てみると,例えば

\(M=\{a,-a\}\)に対し\(\max M=|a|\)とかき,\(a\)の絶対値という.

笠原晧司『微分積分学』サイエンス社

 
とあります。これは換言すれば,次のようになります

絶対値の定義\[|a|:=\begin{cases}a\quad(a\geq 0) \\ -a \quad(a<0)\end{cases}\]

スローガン風に言えば,「‘中身’をムリヤリ正にする記号」,ということです。ここに「数直線」や「距離」などを持ち出す必要はありません。多くの数学書がそうしているように,これを明確に定義とすべきだと思います。このように理解しておけば,上記の\(|x-4|\)の例でいえば

\(|x-4|\)?中身\(x-4\)をムリヤリ正にしたいわけね
→そら中身の\(x-4\)が正か負かで扱い変わるでしょ
→でも\(x-4\)の正負って\(x\)に入る値によって変わるよね
→\(x\geq 4\)なら正なんだからはなから正だわこれ,そのまま外すわ
→\(x<4\)なら負ね,こいつをムリヤリ正にしたいってことは\(-1\)かければいいよね

と自然に頭が動くと思う。

「(困ったら)定義に戻って考える」というのは数学の重要な姿勢のひとつだと思うんですが,そのように定義に立ち戻って考えた人間が混乱するような記述はいかがなものか,と思います(が,教科書通りやらないと注意されたりするんだよなあ…)。

(おわり)

 

 

「すべての」と「ある(存在する)」

数Ⅰの問題です。

\(y=p(x-q)^2+q~(p \neq 0)\)上のすべての点が放物線\(y=x^2-1\)の下側にあるような実数\(q\)が存在するときの実数\(p\)の範囲を求めよ.

まず,「~するときの範囲を求めよ」(「~するための条件を求めよ」)というのは「~するための必要十分条件を求めよ」と問うていると思われます。したがって「\(y=p(x-q)^2+q\)上のすべての点が放物線\(y=x^2-1\)の下側にあるような実数\(q\)が存在する」を同値変形することを考えます。日本語のままでは考えづらいので,この主張を論理記号を用いて表わしてみます。すると\[\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R}[x^2-1>p(x-q)^2+q]\]となります。したがって,

解答

\begin{align*}
&\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R}[x^2-1>p(x-q)^2+q]\\
\Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R}[(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0]\\
\Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R} \begin{cases}(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0 \\ 1-p>0 \lor 1-p=0 \lor 1-p < 0 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R}[((1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p<1)\\ &\lor ((1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p=1) \\
&\lor ((1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p>1) ]\tag{1}
\end{align*}
ここで,\[\forall x\in \mathbb{R}[(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p=1]\]と\[\forall x\in \mathbb{R}[(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p>1]\]は偽の命題であるから,\((1)\)は
\[(1)\Longleftrightarrow~\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R}[(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p<1]\]とできる().したがって,
\begin{align*}
(1)\Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} \forall x \in \mathbb{R}[(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0\land p<1]\\ \Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} [\forall x \in \mathbb{R}[(1-p)x^2+2pqx-pq^2-q-1>0]\land p<1]\\ \Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} [p^2q^2-(1-p)(-pq^2-q-1)<0\land p<1]\\ \Longleftrightarrow~&\exists q \in \mathbb{R} [p^2q^2-(1-p)(-pq^2-q-1)<0]\land p<1\\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}\exists q \in \mathbb{R} [pq^2+(1-p)q+1-p<0\land (p >0 \lor p < 0)]\\ p<1 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}\exists q \in \mathbb{R} [(pq^2+(1-p)q+1-p<0\land p >0) \lor (pq^2+(1-p)q+1-p<0\land p < 0)]\\ p<1 \end{cases} \\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}\exists q \in \mathbb{R}[pq^2+(1-p)q+1-p<0\land p >0] \lor \exists q \in \mathbb{R}[pq^2+(1-p)q+1-p<0\land p < 0]\\ p<1 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}(\exists q \in \mathbb{R}[pq^2+(1-p)q+1-p<0]\land p >0) \lor (\exists q \in \mathbb{R}[pq^2+(1-p)q+1-p<0]\land p < 0)\\ p<1 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}((1-p)^2-4p(1-p)>0 \land p>0)\lor p < 0\\ p<1 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}((p-1)(5p-1)>0 \land p>0)\lor p < 0\\ p<1 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&\begin{cases}0 < p < \frac{1}{5}\lor p < 0\\ p<1 \end{cases}\\ \Longleftrightarrow~&0 < p < \frac{1}{5}\lor p < 0 \end{align*} 解答終

一般的な解答においてやっている(であろう)ことの正当性が個人的にいまいち納得できないので,論理式で考えてみました。一般的な解答において感じるその不安感というか気持ち悪さは,上の解答で行っている恒真命題の追加,分配法則,\(\forall\)や\(\exists\)の支配域の変更などがぼかされているためではないかと思います。さらに,この解答においても一つ気になるのが()の部分です。一般に,\[\forall x[p(x)\lor q(x)] \Longleftarrow \forall x p(x)\lor \forall x q(x)\]すなわち全称記号は\(\lor\)に関して分配は出来ませんから,そこだけちょっと誤魔化しています。これについては別記事で詳しく考えてみようと思います。

解の公式

解の公式\(a \neq 0\)とする.\[ax^2+bx+c=0\]の解は,\[x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\]で与えられる.

ちょうど今時期の中学3年生が学ぶ\(2\)次方程式の解の公式です。中学では天下りに与えられ「覚えろ」の一言で済まされることがほとんどだと思いますし,僕自身も授業では証明は割愛しますといって飛ばしがちなので,ここに証明しておきます。見た目は難しそうですが,中学生でも一応既習の知識のみで理解できるはずです。文字の煩雑さに惑わされず,式をよーく睨んで意味を読み取ってみましょう。やっていることはごくごくシンプルです。

証明

\begin{align*}
&ax^2+bx+c=0\\
\Longleftrightarrow&~a\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)+c=0\tag{1}\\
\Longleftrightarrow&~a\left(x^2+\frac{b}{a}x+\left(\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right)+c=0\tag{2}\\
\Longleftrightarrow&~a\left(\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right)+c=0\tag{3}\\
\Longleftrightarrow&~a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-a\cdot\frac{b^2}{4a^2}+c=0\tag{4}\\
\Longleftrightarrow&~a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2=\frac{b^2}{4a}-c\\
\Longleftrightarrow&~a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2=\frac{b^2-4ac}{4a}\\
\Longleftrightarrow&~\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2=\frac{b^2-4ac}{4a^2}\\
\Longleftrightarrow&~\sqrt{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2}=\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}\tag{5}\\
\Longleftrightarrow&~\sqrt{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2}=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{\sqrt{(2a)^2}}\\
\Longleftrightarrow&~\left|x+\frac{b}{2a}\right|=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{\left|2a\right|}\tag{6}\\
\Longleftrightarrow&~x+\frac{b}{2a}=\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\tag{7}\\
\Longleftrightarrow&~x=-\frac{b}{2a}\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
\Longleftrightarrow&~x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\end{align*}

証明終

\((1)\)は2つめの項までを\(a\)でくくりました。
\((2)\)は\(\left(\frac{b}{2a}\right)^2\)をたして,ひきました。プラマイゼロになるので結局\(0\)を加えているに過ぎず,したがって問題ありません。なぜそんなことをするのかというと,
\((3)\)で因数分解の公式\(x^2+2Ax+A^2=(x+A)^2\)が使えるようにするためです。
\((4)\)は分配法則により\(a\)を分配し,
\((5)\)は辺々\(\sqrt{ }\)をとりました。
\((6)\)は\(\sqrt{A^2}\)の定義を思い出しましょう。\(\sqrt{A^2}\)とは,「\(2\)乗して\(A^2\)となる正の数」でした。それは何ですか?「\(A\)」と答えた人,甘い。\(A\)が負の数である可能性は?例えば,\(A=-1\)なら?\(\sqrt{(-1)^2}=-1\)ってこと?「正の数」と定義したのに,負の数??おかしい。つまり,\(A\)がたとえ負の数であっても,正の数として表したいわけです。いわば,\(A\)の中身が正であろうが負であろうが,正の数として表したい。そんなときのための記号が,絶対値でしたね(絶対値の定義を「距離」として覚えてる人がいますが,今すぐ止めましょう)。なので\(\sqrt{A}=|A|\)
\((7)\)絶対値の“中身”の起こり得る組合せに着目して
\begin{align*}
&\text{\(x\)+\(\frac{b}{2a}\)が正,\(2a\)が正}\\
&\text{\(x\)+\(\frac{b}{2a}\)が正,\(2a\)が負}\\
&\text{\(x\)+\(\frac{b}{2a}\)が負,\(2a\)が正}\\
&\text{\(x\)+\(\frac{b}{2a}\)が負,\(2a\)が負}\\
\end{align*}の4通りの組み合わせがあることに注意すれば
\begin{align*}
(6)\Longleftrightarrow &+\left(x+\frac{b}{2a}\right)=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{+(2a)} \lor +\left(x+\frac{b}{2a}\right)=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{-(2a)}\\
&\lor-\left(x+\frac{b}{2a}\right)=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{+(2a)} \lor -\left(x+\frac{b}{2a}\right)=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{-(2a)}\\
\Longleftrightarrow &\left(x+\frac{b}{2a}\right)=+\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \lor \left(x+\frac{b}{2a}\right)=-\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
&\lor \left(x+\frac{b}{2a}\right)=-\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \lor \left(x+\frac{b}{2a}\right)=+\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
\Longleftrightarrow &x+\frac{b}{2a}=+\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \lor x+\frac{b}{2a}=-\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
\Longleftrightarrow &x+\frac{b}{2a}=\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\end{align*}となります。

場合分け?

次の方程式を解け.\[|x+4|=3x\]

ちょうど今時期の数学Ⅰで登場する定番中の定番,絶対値の問題です。一般的な場合分け?による解答は教科書等参照。そうではなく,ここではあの例の解答は結局何をしているのか,論理式を用いて詳しく見てみます。

解答

\begin{align*}
&|x+4|=3x\\
\Longleftrightarrow~&|x+4|=3x \land (x+4 \geq 0 \lor x+4 < 0) \tag{1}\\
\Longleftrightarrow~&(|x+4|=3x \land x+4 \geq 0 ) \lor (|x+4|=3x \land x+4 < 0) \tag{2}\\
\Longleftrightarrow~&(x+4=3x \land x \geq -4 ) \lor (-x-4 =3x \land x < -4)\\
\Longleftrightarrow~&(x = 2 \land x \geq -4 ) \lor (x = -1 \land x < -4)\\
\Longleftrightarrow~& x = 2 \land x \geq -4 \tag{3}\\
\Longleftrightarrow~& x = 2 \tag{4}
\end{align*}

解答終

\((1)\)は恒真命題の追加
\((2)\)は分配法則
\((3)\)は矛盾命題の削除
\((4)\)は一般には\(P\land Q\Rightarrow P\)ですがここでは逆も明らかに成り立つ(\((4)\)の方程式\(x=2\)をみたす\(x\)は\(2\)のみですが,この\(2\)は\((3)\)の方程式\(x=2\)をみたし,かつ,\((3)\)の不等式\(x \geq -4\)をみたします)

こうしてみると何をしているのかが一目瞭然です。

任意の(その2)

数学Ⅰの「集合と論理」を学んだ高校生にぜひ考えてもらいたい問題。

任意の\(\epsilon > 0\)に対して\(|x-a| < \epsilon \)ならば,\(x=a\)であることを示せ.

\(|x-a| < \epsilon \Longleftrightarrow a-\epsilon < x < a+ \epsilon\)で,この不等式において\(\epsilon\)は任意の正数,つまり正の数なら何入れても成り立つとすれば\(x=a\)である,換言すれば「幅をどんだけ小さくしても,その間に\(x\)が入るというのなら,その\(x\)って\(a\)だよね?」といっています。感覚的には正しそう?

証明

示したいことは\[\forall \epsilon > 0 [|x-a| < \epsilon] \Longrightarrow x=a\]である.この命題を否定して\[\forall \epsilon > 0 [|x-a| < \epsilon] \land x \neq a\]と仮定する.このとき,\(|x-a| > 0\)であるから,\(0 < \epsilon^{\prime} < |x-a|\)を満たす\(\epsilon^{\prime}\)が存在する.\(\epsilon\)は任意だったので,この\(\epsilon^{\prime}\)をとることにする.すると,\(|x-a| < \epsilon^{\prime}<|x-a|\)より\(|x-a| < |x-a|\)となり矛盾する.したがって\[\forall \epsilon > 0 [|x-a| < \epsilon] \Longrightarrow x=a\]となる.

証明終

note:
\(\{a\}(\subset \mathbb{R})\)が閉集合であることの証明において,\(\{x|\forall \epsilon >0 [d(x,y) < \epsilon,y=a]\}=\{a\}\)を示す必要がありそこで使った。

\(0=1\)の証明?

youtubeのおもしろ動画。これを不思議と思うか,あるいは一目でツッコミを入れられるかどうか,論理の勉強になる動画だと思います。

(\(0=1\)の証明?)

\begin{align}
-20 &=-20 \tag{1}\\
16-36 &= 25-45 \tag{2}\\
4^2-4\cdot 9 &= 5^2 – 5\cdot 9 \tag{3}\\
4^2-4\cdot 9 + \frac{81}{4} &= 5^2 – 5\cdot 9 + \frac{81}{4} \tag{4}\\
4^2-2 \cdot 4\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 &= 5^2 – 2 \cdot 5\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 \tag{5}\\
\left(4 – \frac{9}{2}\right)^2&= \left(5 – \frac{9}{2} \right)^2 \tag{6}\\
4 – \frac{9}{2}&= 5 – \frac{9}{2} \tag{7}\\
4 &= 5 \tag{8}\\
4 -4 &= 5 – 4 \tag{9}\\
0 &= 1 \tag{10}
\end{align}私たちは一般に計算問題が与えられば式を次々と改行・羅列して「答え」を求め,とにもかくにも「答え」さえ手に入れば,とくに疑問も抱くことなくそれを解答欄に書いてさっさと次の問題に進みがちです。しかし,細かいことをいえば本来はその各行の式と式の間には論理的にどういう関係があるのか,まで考える必要があります:
たとえば,\(-20 =-20\)と\(16-36 = 25-45 \)の間にはどんな関係があるでしょうか。\(16-36=-20\)そして\(25-45=-20\)という等式が成り立ちますから,\(-20 =-20 \)という仮定から\(16-36 = 25-45 \)が導けます。すなわち,\[-20 =-20 \Longrightarrow 16-36 = 25-45\]逆に,\(16-36 = 25-45 \)という仮定から\(-20 =-20 \)も確かに導けます。\[-20 =-20 \Longleftarrow 16-36 = 25-45\]この二つをあわせて,\[-20 =-20 \Longleftrightarrow 16-36 = 25-45\]と書きます。

式\((1)\)と式\((2)\)はいわば互いに‘行き来’できる関係(これを以後「同値」と呼ぶことにします)がありましたが,一般には必ずしもこのような関係が成り立つとは限りません(感覚的にたとえると「犬ならば哺乳類」ですが「哺乳類ならば犬」とは限りません)。この点に注意して,各行における「式と式の論理関係」を同様に調べていくと\((1)\)から\((6)\)までの式,また\((7)\)から\((10)\)までの式が互いに同値であることは一目でわかります。怪しいのは\((6)\)式と\((7)\)式の間の論理関係です。見た目がうるさいので,ここでは\(4 – \frac{9}{2} = a\),\(5 – \frac{9}{2} = b\)とおいて考えることにします。

\(a^2=b^2 \Leftarrow a=b\)は言えるか?
これは明らかに言えます。仮定\(a=b\)の両辺を\(2\)乗すればいいだけですから。

\(a^2=b^2 \Rightarrow a=b\)は言えるか?
これはいけない。なぜなら,\(a^2=b^2\)という仮定からは,\(a=b\)だけでなく,\(a=-b\)という可能性も考えられますから。実際,
\begin{align*}
&a^2=b^2\\
\Longrightarrow~&a^2-b^2=0\\
\Longrightarrow~&(a-b)(a+b)=0\\
\Longrightarrow~&a-b=0\text{または}a+b=0\\
\Longrightarrow~&a=b\text{または}a=-b
\end{align*}(※逆も成り立つ)

以下,正しい論理(式)を書いてみます(または,を\(\lor\)と書くことにします)。
\begin{align}
&-20 =-20 \\
\Longleftrightarrow &~16-36 = 25-45 \\
\Longleftrightarrow &~4^2-4\cdot 9 = 5^2 – 5\cdot 9 \\
\Longleftrightarrow &~4^2-4\cdot 9 + \frac{81}{4} = 5^2 – 5\cdot 9 + \frac{81}{4} \\
\Longleftrightarrow &~4^2-2 \cdot 4\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 = 5^2 – 2 \cdot 5\cdot \frac{9}{2} + \left(\frac{9}{2}\right)^2 \\
\Longleftrightarrow &~\left(4 – \frac{9}{2}\right)^2= \left(5 – \frac{9}{2} \right)^2 \\
\Longleftrightarrow &~4 – \frac{9}{2}= 5 – \frac{9}{2} \lor 4 – \frac{9}{2}= – \left( 5 – \frac{9}{2}\right)\\
\Longleftrightarrow &~4 = 5 \lor 9 = 9 \\
\Longleftrightarrow &~9 = 9\\
\end{align}結局,\((1)\)から\((5)\)はいわば‘目くらまし’で,\(-20=-20\)という面白みのない仮定から,\(9=9\)というやはり面白みのない結論が得れらた,ということに過ぎない,ということでした。

任意の

とある問題の証明を読んでいたら,こんな一文に出会いました.記号の意味はさておき,\(\delta(A),\delta(\overline{A}),\epsilon\)はいずれも実数です.

(中略) \(\delta(\overline{A}) \leq \delta(A) + \epsilon\).\(\epsilon\)は任意の正数だから,\(\delta(\overline{A}) \leq \delta(A)\).

 

(ここで理解が詰まる)

「任意」と言われたから,どんな正数でもOKですが,でかい数をもってきても結論の不等式が得られるとは思えませんから,めちゃくちゃ小さい数を持ってくることにします.\(\delta(A)\)に加えられる数\(\epsilon\)をめちゃくちゃ小さくしたとしてもやっぱり\(\delta(\overline{A})\)よりも\(\delta(A)\)の方が大きい…,ということは\(\delta(A)\)の方が大きいと言える…のか…??感覚的には納得できるような気もしないでもないですが,でも小さいとはいえ正数を加えられている以上それを除いてもやはり\(\delta(\overline{A})\)以上だ,なんて言えるのだろうか,とも感じられ,釈然としません.

議論に関係のない文字がうるさいので,ちょっと簡略化して書き直します.

\(a,b \in \mathbb{R}\)とする.
任意の正数\(\epsilon\)に対して\(a \leq b + \epsilon\)が成り立つならば,\(a \leq b\)が成り立つ.

こう書くとちょっと高校数学の証明問題ぽいですね.実際,いちおう数学Aの集合と論理を終えた高1生なら理解できる(証明できる)と思います.調べてみましょう.

証明

背理法で示す.証明したいことは
\[\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]\Longrightarrow a \leq b\]
であるから,否定をとると
\begin{align*}
&\overline{\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]\Longrightarrow a \leq b}\\
\Longleftrightarrow~&\overline{\overline{\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]} \lor a \leq b}\\
\Longleftrightarrow~&\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ] \land a > b
\end{align*}\(a>b\)だから,\(a-b > 0\).また,\(\forall \epsilon >0 [a \leq b + \epsilon ]\),つまり\(a \leq b + \epsilon\)が任意の\(\epsilon > 0\)について成り立つから,ここでは\(\epsilon=\frac{a-b}{2} >0\)ととることにする.すると,\[a \leq b +\frac{a-b}{2} \Longleftrightarrow a \leq b\]を得る.これは\(a>b\)であることに反する.

証明終

この証明,知識としてはほぼ高校数学の知識しか使ってない上にとてもシンプルな論証なので,教科書では無視しがちな「任意の」を重要性を確認させる問題としていいんじゃないかな,なんて思いました.「任意の」と言っているのだから,都合のよい\(\epsilon\)を代入したところがポイントです.