図示して証明?

授業で取り扱っていてふと気になった問題。

\(x,y\)は実数とする。
\((1)\quad\)\(x^2+y^2+2x<3\)ならば\(x^2+y^2-2x<15\)であることを証明せよ。
\((2)\quad\)\(x^2+y^2\leq 5\)が\(2x+y\geq k\)の十分条件となる定数\(k\)の値の範囲を求めよ。

(青チャート)

解答では

\[P=\{(x,y)|x^2+y^2+2x<3\},Q=\{(x,y)|x^2+y^2-2x<15\}\]とすると,「\(p\Rightarrow q\)が真である」\(\Leftrightarrow P\subset Q\)であるから,\(P,Q\)を図示することにより,楽に証明できる。

 
\(P\subset Q\)であることを図示することで証明していて,確かに楽かつ直観的で分かりやすいけど,しかし\((2)\)のような求値問題ならまだしも\((1)\)のような「証明」において「絵」を根拠にしていいのかという違和感があります。ということでお絵かきに頼らない証明を考えてみます。

(1)

仮定により
\begin{align*}
&x^2+y^2+2x<3\\
\Longleftrightarrow~& x^2+y^2<3-2x \land (x+1)^2+y^2<4 \\
\Longleftrightarrow~& x^2+y^2<3-2x \land (x+1)^2<4\\
\Longleftrightarrow~& x^2+y^2<3-2x \land -3 < x < 1
\end{align*}であるから,

\[x^2+y^2-2x < (3-2x)-2x = 3-4x < 15\]

証明終

(2)
\[x^2+y^2\leq 5 \Longrightarrow2 x+y\geq k\]であるような\(k\)を調べる.\(2x+y\)の値域を\(\mathcal{R}\)とおく.
\begin{align*}
&2x+y \in \mathcal{R}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x,y[2x+y=m \land x^2+y^2\leq 5]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x[x^2+(m-2x)^2\leq 5]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x[5x^2-4mx+m^2-5\leq 0]\\
\Longleftrightarrow~&4m^2-5(m^2-5)\geq 0\\
\Longleftrightarrow~&m^2-25\leq 0\\
\Longleftrightarrow~&-5 \leq m \leq 5
\end{align*}

したがって\(k\leq -5\)であれば,\[x^2+y^2\leq 5 \Longrightarrow2 x+y\geq k\]が言える.

解答終

というか,解答で(\(P=\{(x,y)|p(x,y)\},Q=\{(x,y)|q(x,y)\}\)として)\[(p(x,y)\Rightarrow q(x,y))\Longleftrightarrow P\subset Q\]だから\(P \subset Q\)を言えばよい,と言っているけど,しかしそもそも\(P \subset Q\)の定義は
\begin{align*}
&P \subset Q\\
\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}&~((x,y)\in P \Rightarrow (x,y)\in Q)\\
\Longleftrightarrow&~(p(x,y)\Rightarrow q(x,y))
\end{align*}
であったから,本来の意味で(定義に従って)この\(P \subset Q\)を示そうとすると循環論法になると思う。それを「図示」でかわすってことかな?でも数学において「図示」を証明の根拠にしていいのだろうか…?解答のこの辺のさじ加減正直よくわからない。

解法と必然性 その2

前記事の証明は

証明
 
\(n=1\)のとき,\((3+i)^1=3+i\)は虚数.
\(n=2\)のとき,\((3+i)^2=18+26i\)より,実部と虚部を\(10\)で割った余りはそれぞれ\(8,6\)である.\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}ここで,
\begin{align*}
&3\alpha-\beta \equiv 3\cdot 8 -6=18\equiv 8\pmod{10}\\
&\alpha+3\beta \equiv 8 + 3\cdot 6=18\equiv 6\pmod{10}\\
\end{align*}
であるから,上の仮定のもとで\[(3+i)^{n+1}=\alpha^{\prime}+\beta^{\prime} i,~\alpha^{\prime}\equiv 8 \pmod{10},~\beta^{\prime}\equiv 6 \pmod{10}\]が成り立つ.したがってすべての\(n\in\{2,3,\cdots\}\)で\[(3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\]が成り立つ,よって\((3+i)^n\)は虚数となる.以上によりすべての\(n\in\mathbb{N}\)で\((3+i)^n\)は虚数となる.
 
証明終

となります。この解答の流れを図示すると,以下のようになります:


 
ここで「解法を覚える」ということはどういうことかを考えてみます。「解法を覚える」というと,上の図で示した解法を「パターン」として機械的に覚えるもの…と解釈する人は少なくないようです。しかし「パターン」として機械的に覚えるだけでは例えばなぜ冒頭でいきなり\(n=1\)と\(n=2\)をあのような形で別々に扱ったのか,なぜ\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定しようと思いついたのか,その動機がまったく不明瞭なままです。実際の試験場では当然ながら自分にヒントを与えてくれる人はおらず頼りになるのは自分しかいないわけですから,その解法自体を思いつくためのきっかけ(必然性)こそが重要なはずです。

そこで改めて上の解答に至った経緯を見直してみます。「\(\alpha\equiv 8,\beta \equiv 6\)」と仮定したのは幾度かの試行錯誤の末得られたものでした。そしてそれにより「\(n=2\)のとき別個に調べる」必要が生じました。図示すれば,以下のようになります。


したがって,覚えるべきは流れは以下のようになります。

 

冒頭の図で示したような直線的な流れではなく,紆余曲折があり,そこから必然性が生まれる,ということです。覚えるのならば,この必然性を含めて覚える。数学における「覚える」とはこのような姿勢でなければなりません。

尚,このような「必然性」は,一般には解答・解説には載っていません。指導してれる人がいない限り,基本自分でそれを読み取らなければならない。だから数学の解答を読む際は「なぜ?」と問いかけながら,あたかも本と対話するように読むことが重要です。もし本の解答解説が必然性が感じられない,天下り的なものであれば,自分の手で発見的な解答に作り直す,くらいの気持ちをもつべきだと思います。

解法と必然性 その1

数学で得点できるようにするためにはどうしたらいいか?という悩みに対して,僕はどの生徒に対しても「まず解法を覚え,手数を増やすこと」と指示しています。「『解き方』を次々と覚えることが『数学』の学習といえるのか」という点においては疑問の余地がありますが,しかし現実問題として中高数学においては「限られた時間内に点数を取りきる」という使命が課せられていますから,結局のところこの姿勢は十分ではないにせよ確実に必要です。

「覚える」というと,例えば歴史の年号暗記や人物名の暗記のような固有名詞の力技の暗記が連想されますが,しかし数学における「覚える」というのは,そのような単純な作業ではなく,「なぜそうしようと思うのか?」という理解をも含めて覚える,ということを意味しています。

次の問題を例に考えてみます。

\(i\)を虚数単位とする.以下の問いに答えよ.
 
\((1)\quad\)\(n=2,3,4,5\)のとき\((3+i)^n\)を求めよ.またそれらの虚部の整数を\(10\)で割った余りを求めよ.

\((2)\quad\)\(n\)を正の整数とするとき\((3+i)^n\)は虚数であることを示せ.
 

(神戸大)

\((1)\)は計算するだけです。

\begin{align*}
&(3+i)^2=8+6i\\
&(3+i)^3=(3+i)(8+6i)=18+26i\\
&(3+i)^4=(3+i)(18+26i)=28+96i\\
&(3+i)^5=(3+i)(28+96i)=-12+316i\\
\end{align*}
虚部を\(10\)で割った余りはすべて\(6\)

問題は\((2)\)です。これは「すべての\(n\)で」ということなので,まず数学的帰納法であろうと思いつきます。いつも通りやってみます。

\(n=1\)のとき,\((3+i)^1=3+i\)であるから主張は正しい.\(n\)のとき主張が正しい,すなわち\((3+i)^n\)が虚数であると仮定する.

このとき,\((3+i)^{n+1}\)が虚数であることが示せればめでたしめでたし…なのですが上のような‘日本語による’仮定では計算ができず議論が進まないので,‘数式で’仮定しなおすことにします:

\(n\)のとき主張が正しい,すなわち\((3+i)^n=\alpha+\beta i\quad(\beta\neq 0)\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}

あとは\(\alpha+3\beta\)が\(0\)でないことが言えればいいのですが,しかし,手元の過程は\(\beta\neq 0\)のみであり,これだけでは\(\alpha+3\beta\)が\(0\)でないことは到底言えそうにありません。ここで,思わせぶりだった\((1)\)の結果:「\((3+i)^n~(n\in \{2,3,4,5\})\)の虚部を\(10\)で割った余りはすべて\(6\)」から,「\(\beta\neq 0\)」ではなく「\(\beta\)を\(10\)で割った余りが\(6\)である」と仮定すればよいのでは?と思いつきます(実際,\(\beta\equiv 6 \pmod{10}\)が言えれば,当然\(\beta \neq 0\)です):

\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}

しかし,虚部は\(\alpha+3\beta\)であり,相変わらず手元には\(\alpha\)についての仮定は何もありませんから,上のように仮定したところでやはり\(\alpha+3\beta\neq 0\)は言えません。\(\alpha\)について何か欲しい。うーん。。。そこで,再び\((1)\)を眺めます。実部に着目すると,こちらは「\(10\)で割った余りが\(8\)」であることが予想されます。おっと,じゃあ仮定を強めて\(\alpha \equiv 8\pmod{10},~\beta\equiv 6\pmod{10}\)と仮定すればいいのでは?と思いつきます。すると…

\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}ここで,
\begin{align*}
&3\alpha-\beta \equiv 3\cdot 8 -6=18\equiv 8\pmod{10}\\
&\alpha+3\beta \equiv 8 + 3\cdot 6=18\equiv 6\pmod{10}\\
\end{align*}
であるから,上の仮定のもとで\[(3+i)^{n+1}=\alpha^{\prime}+\beta^{\prime} i,~\alpha^{\prime}\equiv 8 \pmod{10},~\beta^{\prime}\equiv 6 \pmod{10}\]が成り立つ.

うまくいきました。これで証明終わり!といきたいところですが,仮定を強めたので,数学的帰納法の‘連鎖反応のスイッチ’,つまり\(n=1\)の調査をやり直さなければなりません。しかし\((3+i)^1=3+i\)で実部も虚部も\(\mod{10}\)で\(8,6\)ではありません。そこで\(n=2\)のときを‘連鎖反応のスイッチ’にすることにします(\((1)\)で記述していますが):

\(n=2\)のとき,\((3+i)^2=18+26i\)より,実部と虚部を\(10\)で割った余りはそれぞれ\(8,6\)である.

\(n=1\)は別枠で示しておけばいいでしょう。これで証明が完成しました。(つづく)

「すべての」と言われたら(数値代入法)

前記事の「とびとびの\(x\)で成り立つ」と「すべての\(x\)で成り立つ」との関係を考えなくてはならない例として,次のようなものがあります。

\[\frac{2x^3-7x^2+11x-6}{x(x-2)^3}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}+\frac{d}{(x-2)^3}\]が\(x\)についての恒等式となるように定数\(a,b,c,d\)の値を定めよ.

教科書レベルのよく見る問題です。係数比較法で考えるのが一般的だと思いますがここでは数値代入法で見てみます。
\begin{align*}
&\frac{2x^3-7x^2+11x-6}{x(x-2)^3}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}+\frac{d}{(x-2)^3}\text{が恒等式}\\
\Longleftrightarrow~&\forall x \left[\begin{cases}x \neq 0 \\ x \neq 2 \end{cases}\longrightarrow \frac{2x^3-7x^2+11x-6}{x(x-2)^3}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}+\frac{d}{(x-2)^3}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\begin{cases}x \neq 0 \\ x \neq 2 \end{cases}\Longrightarrow \frac{2x^3-7x^2+11x-6}{x(x-2)^3}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}+\frac{d}{(x-2)^3}\\
\Longleftrightarrow~&\begin{cases}x \neq 0 \\ x \neq 2 \end{cases}\Longrightarrow 2x^3-7x^2+11x-6=a(x-2)^3+bx(x-2)^2+cx(x-2)+dx\\
\end{align*}分母を払って得られた式を見るとこれはぜひ\(0\)と\(2\)を代入したい。しかし,上にあるように式\(2x^3-7x^2+11x-6=a(x-2)^3+bx(x-2)^2+cx(x-2)+dx\)が成り立つことが保証されているのはあくまで\(0\)と\(2\)でない\(x\)に対してであり,\(x\)が\(0\)と\(2\)のときにつにいては一切言及されていません。なので\(x=0\)と\(x=2\)を代入するわけにはいかない。

しかし,\(0\)と\(2\)以外の\(x\)は無限個あるので,当然相異なる\(4\)個の\(x\)でも\(3\)次式\(2x^3-7x^2+11x-6=a(x-2)^3+bx(x-2)^2+cx(x-2)+dx\)は成り立ちます。したがって前記事の定理により,\(2x^3-7x^2+11x-6=a(x-2)^3+bx(x-2)^2+cx(x-2)+dx\)はすべての\(x\)で成り立つ,すなわち恒等式であると言えます:
\begin{align*}
&\frac{2x^3-7x^2+11x-6}{x(x-2)^3}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}+\frac{d}{(x-2)^3}\text{が恒等式}\\
\Longleftrightarrow~&\begin{cases}x \neq 0 \\ x \neq 2 \end{cases}\Longrightarrow \frac{2x^3-7x^2+11x-6}{x(x-2)^3}=\frac{a}{x}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{(x-2)^2}+\frac{d}{(x-2)^3}\\
\Longleftrightarrow~&\begin{cases}x \neq 0 \\ x \neq 2 \end{cases}\Longrightarrow 2x^3-7x^2+11x-6=a(x-2)^3+bx(x-2)^2+cx(x-2)+dx\\
\overset{\text{定理}}{\Longleftrightarrow}~&\forall x\in \mathbb{R}[2x^3-7x^2+11x-6=a(x-2)^3+bx(x-2)^2+cx(x-2)+dx]
\end{align*}
これで安心して\(x\)に\(0\)と\(2\)が代入できます。あとは式が簡単になる\(1,3\)あたりを代入すればいいと思います。(逆の考察を忘れずに!)

「すべての」と言われたら(つづき)

先の記事のアプローチは
\begin{align*}
&\forall l,m,n \in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\\
\Longleftrightarrow~&\forall l,m,n \in \mathbb{Z}[(10^{x-y}+10^{y-z})l+10^{x-z}m+(-x)n=13l+36m+yn]\\
\overset{(\ast)}{\Longleftrightarrow}~&\begin{cases}10^{x-y}+10^{y-z}=13\\10^{x-z}=36\\-x=y\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\cdots\\
\Longleftrightarrow~&\begin{cases}x=\log_{10}3\\y=-\log_{10}3\\z=\log_{10}3-\log_{10}36\end{cases}
\lor\begin{cases}x=\log_{10}2\\y=-\log_{10}2\\z=\log_{10}2-\log_{10}36\end{cases}
\end{align*}というものでした。しかしここで気になるのは\((\ast)\)です。係数比較法を思い出すと,
\begin{align*}
&f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_2x^2+a_1x+a_0\\
&g(x)=b_nx^n+b_{n-1}x^{n-1}+\cdots+b_2x^2+b_1x+b_0
\end{align*}とすれば

\begin{align*}
&f(x)=g(x)\text{が恒等式}\left(\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}~\forall x\in \mathbb{R} [f(x)=g(x)]\right)\\
\Longleftrightarrow~&a_n=b_n,a_{n-1}=b_{n-1},\cdots,a_2=b_2,a_1=b_1,a_0=b_0
\end{align*}

というものでしたが,すべての実数\(l,m,n\)(\(\forall l,m,n \in \mathbb{R}\))ではなく,\(\forall l,m,n\in\mathbb{Z}\)すなわち’とびとび’の\(l,m,n\)で成り立つときも,やはり同じように係数が等しいと結論できるのでしょうか。ここに不安が残ります。

この問題を解決するために,次の定理を証明します。

\(f(x),g(x)\)を\(n\)次以下の整式とする.
\begin{align*}
&f(x)=g(x)\text{が恒等式} \\
\Longleftrightarrow~&f(x)=g(x)\text{が相異なる\(n+1\)個の解をもつ}
\end{align*}

証明

\(\Rightarrow\)は明らかであるから,\(\Leftarrow\)を示す.
\(n+1\)個の相異なる解を\(x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}\)とする.仮定により
\begin{align*}
&f(x_1)=g(x_1),f(x_2)=g(x_2),\cdots,f(x_{n+1})=g(x_{n+1})\\
\Longleftrightarrow~&f(x_1)-g(x_1)=0,f(x_2)-g(x_2)=0,\cdots,f(x_{n+1})-g(x_{n+1})=0
\end{align*}であるから\[f(x)-g(x)=(x-x_1)(x-x_2)\cdots(x-x_{n+1})Q(x)\]とかける(因数定理).ここで\(Q(x)\neq 0\)と仮定すると\(f(x)-g(x)\)は\(n+1\)次式となり矛盾する.したがって\(Q(x)=0\).ゆえに\[f(x)=(x-x_1)(x-x_2)\cdots(x-x_{n+1})\cdot 0+g(x)\]より\(\forall x\in\mathbb{R}[f(x)=g(x)]\)を得る.

証明終

この定理によって,\[\forall l,m,n \in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\]は,例えば\(l\)に着目して\(l\)の1次の整式と見なせばこの式は2個以上の\(l\)について成り立ちますから(整数は無限個),上の定理によりすべての\(l\in \mathbb{R}\)で成り立つ,と言えます。\(m,n\)についても同様に考えれば,結局すべての\(l,m,n\in \mathbb{R}\)で成り立つ,すなわち
\begin{align*}
&\forall l,m,n \in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\\
\Longleftrightarrow~&\forall l,m,n \in \mathbb{R}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]
\end{align*}であることが分かります。これで上の\((\ast)\)が正しいことが確かめられました。

…と,結果的には正しかったのですが,厳密には上の議論をしなくてはならないので,やはり前回記事最初の解答の方が無難だと個人的に思います。

「すべての」と言われたら

実数の組\((x,y,z)\)で,どのような整数\(l,m,n\)に対しても,等式\[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny\]が成り立つようなものをすべて求めよ.

(大阪大)


もし日常で上のようなやりとりがあればWさんはちょっとアレなひとと評されますが,数学の問題を考える上ではWさんの姿勢の方が正しい。「なんでも」といった以上,例外は許されないからです。

そこでWさんと同じ姿勢で,「すべての」「任意の」と言われたのでその言葉を逆手にとり自分にとって都合の良い\(l,m,n\)を代入してやろう,と考えます。うまく文字が減ってくれそうなのは\(0\)ですから,これの代入を考えます。しかし\(l,m,n\)すべてに\(0\)と代入しても\(0=0\)という正しくも旨味のない式しか得られませんから,\(l,m,n\)のうち\(2\)つを\(0\),他を(簡単な)\(1\)と代入してみることにします。

\((l,m,n)=(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)\)と代入すると,\[\begin{cases}10^{x-y}+10^{y-z}=13\\10^{x-z}=36\\-x=y\end{cases}\]が得られるので,これを解いてみます。

\begin{align*}
&\begin{cases}10^{x-y}+10^{y-z}=13\\10^{x-z}=36\\-x=y\end{cases}\\
\Longleftrightarrow&\begin{cases}10^{x-y}+10^{y-z}=13\\z=x-\log_{10}36\\y=-x\end{cases}
\Longleftrightarrow\begin{cases}10^{2x}+10^{-2x+\log_{10}36}=13\\z=x-\log_{10}36\\y=-x\end{cases}\\
\Longleftrightarrow&\begin{cases}(10^{2x})^2-13\cdot10^{2x}+36=0\\z=x-\log_{10}36\\y=-x\end{cases}
\Longleftrightarrow\begin{cases}(10^{2x}-9)(10^{2x}-4)=0\\z=x-\log_{10}36\\y=-x\end{cases}\\
\Longleftrightarrow&\begin{cases}10^{2x}=9 \lor 10^{2x}=4\\z=x-\log_{10}36\\y=-x\end{cases}
\Longleftrightarrow\begin{cases}x=\log_{10}3 \lor x=\log_{10}2\\z=x-\log_{10}36\\y=-x\end{cases}\\
\Longleftrightarrow&\begin{cases}x=\log_{10}3\\y=-\log_{10}3\\z=\log_{10}3-\log_{10}36\end{cases}
\lor\begin{cases}x=\log_{10}2\\y=-\log_{10}2\\z=\log_{10}2-\log_{10}36\end{cases}
\end{align*}
よって\((x,y,z)=(\log_{10}3,-\log_{10}3,\log_{10}3-\log_{10}36)\)または\((\log_{10}2,-\log_{10}2,\log_{10}2-\log_{10}36)\)と求まります。

しかしこれをもって答えとしてはいけません。なぜならここで得られた結論は必要条件にしか過ぎず,十分条件であるとは限らないからです。つまり
\begin{align*}
&\forall l,m,n\in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\\
&\Longrightarrow\begin{cases}x=\log_{10}3\\y=-\log_{10}3\\z=\log_{10}3-\log_{10}36\end{cases}
\lor\begin{cases}x=\log_{10}2\\y=-\log_{10}2\\z=\log_{10}2-\log_{10}36\end{cases}
\end{align*}
ですが
\begin{align*}
&\forall l,m,n\in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\\
&\Longleftarrow\begin{cases}x=\log_{10}3\\y=-\log_{10}3\\z=\log_{10}3-\log_{10}36\end{cases}
\lor\begin{cases}x=\log_{10}2\\y=-\log_{10}2\\z=\log_{10}2-\log_{10}36\end{cases}
\end{align*}
とは限らない,ということです。なので逆(\(\Leftarrow\))を調べる必要があります:

\((x,y,z)=(\log_{10}3,-\log_{10}3,\log_{10}3-\log_{10}36)\)のとき
式\[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny\]にこれらを代入すると\[13l+36m+(-\log_{10}3)n=13l+36m+(-\log_{10}3)n\]となり,これは明らかにすべての\(l,m,n\in\mathbb{Z}\)で成り立つ。

\((x,y,z)=(\log_{10}2,-\log_{10}2,\log_{10}2-\log_{10}36)\)のとき
上と同様にこれらを代入すると\[13l+36m+(-\log_{10}2)n=13l+36m+(-\log_{10}2)n\]が得られ,やはりすべての\(l,m,n\in\mathbb{Z}\)で成り立つ。

これで逆も言えました。すなわち
\begin{align*}
&\forall l,m,n\in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\\
&\Longleftrightarrow\begin{cases}x=\log_{10}3\\y=-\log_{10}3\\z=\log_{10}3-\log_{10}36\end{cases}
\lor\begin{cases}x=\log_{10}2\\y=-\log_{10}2\\z=\log_{10}2-\log_{10}36\end{cases}
\end{align*}であることが分かり,今度は自信をもって\((x,y,z)=(\log_{10}3,-\log_{10}3,\log_{10}3-\log_{10}36)\)または\((\log_{10}2,-\log_{10}2,\log_{10}2-\log_{10}36)\)が答えであるといえます。

追記

次のような解法はどうでしょうか。

\(l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny\)の左辺を\(l,m,n\)で整理して係数を比較してはどうか?

 
すなわち,
\begin{align*}
&\forall x \in \mathbb{Z}[l\cdot10^{x-y}-nx+l\cdot10^{y-z}+m\cdot10^{x-z}=13l+36m+ny]\\
\Longleftrightarrow~&\forall x \in \mathbb{Z}[(10^{x-y}+10^{y-z})l+10^{x-z}m+(-x)n=13l+36m+yn]\\
\overset{(\ast)}{\Longleftrightarrow}~&\begin{cases}10^{x-y}+10^{y-z}=13\\10^{x-z}=36\\-x=y\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\cdots\\
\Longleftrightarrow~&\begin{cases}x=\log_{10}3\\y=-\log_{10}3\\z=\log_{10}3-\log_{10}36\end{cases}
\lor\begin{cases}x=\log_{10}2\\y=-\log_{10}2\\z=\log_{10}2-\log_{10}36\end{cases}
\end{align*}
です。得られる3つの式は同じなので一見正しそうです。このアプローチについて詳しく見てみます。(つづく)

積の和

実数\(x,y\)が\(|x|\leq 1\)と\(|y| \leq 1\)を満たすとき,不等式\[0 \leq x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\leq 1\]が成り立つことを示せ.

(大阪大学 文系)

積の和の形\(ax+by\)を\(\left(\begin{array}{c} a \\ b \\ \end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c} x \\ y \\ \end{array}\right)\)とみると事態が好転することが少なくない気がします。

証明

\(2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\)という項に着目し,中辺は\(\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2\)の展開式ではないかと疑う.実際,展開してみると\begin{align*}
&\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2\\
=~&y^2(1-x^2)+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}+x^2(1-y^2)\\
=~&x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}
\end{align*}ゆえに\[x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\geq 0\]を得る.また,
\begin{align*}
&y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\\
=&~\left(\begin{array}{c} y \\ x \\ \end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c} \sqrt{1-x^2} \\ \sqrt{1-y^2} \\ \end{array}\right)\\
=&~\sqrt{x^2+y^2}\sqrt{1-x^2+1-y^2}\cos \theta\\
=&~\sqrt{x^2+y^2}\sqrt{2-(x^2+y^2)}\cos \theta\\
=&~\sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\cos \theta\\
\end{align*}より
\begin{align*}
&-\sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\leq y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2} \leq \sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\\
\Longleftrightarrow&~\left|y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right|\leq\sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\\
\Longleftrightarrow&~\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2\leq 2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2
\end{align*}
ここで\(x^2+y^2=t\)とおくと,\(0\leq t \leq 2\)より
\begin{align*}
2t-t^2=-(t-1)^2+1\leq 1
\end{align*}であるから\[\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2 \leq 1\]すなわち\[x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\leq 1\]を得る.

証明終

昔こういった手法を「そんなものは受験テクニックだ!」と言ってやたら否定する人がいたけど高校数学や受験数学で「テクニック」と呼ばれるものが大学数学で再登場するということが少なくない気がする。(てか,それが元ネタ?)実際,上の\[a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_n x_n\]を\(1\)次結合といい,上でしたような変形は大学で学ぶ線型代数学ではよく見られるものです。

加法定理の証明

ななんだって!加法定理忘れた?!サイタコスモスどーのこーの?あーやめやめ。作りましょう。教科書には詳しく書いてありますが,それをここで繰り返してもつまらないのでちょっと違う証明を考えてみます。

加法定理\[\sin(\alpha \pm\beta)=\sin\alpha \cos\beta \pm \cos\alpha \sin\beta\]\[\cos(\alpha \pm \beta)=\cos\alpha \cos\beta \mp \sin\alpha \sin\beta\]

証明

単位円周上に下図のような点\(\mathrm{P}\)があったとします.

ここに,基本ベクトル\(\overrightarrow{e_1}=\left(\begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ \end{array} \right),\overrightarrow{e_2}=\left(\begin{array}{c} 0 \\ 1 \\ \end{array} \right)\)をそれぞれ原点を中心に\(\alpha\)だけ回転させたベクトル\(\overrightarrow{\mathrm{OA}},\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)を考え,図示します.\(\mathrm{A}(\cos\alpha,~\sin\alpha),~\mathrm{B}(\cos\left(\frac{\pi}{2}+\alpha\right),~\sin\left(\frac{\pi}{2}+\alpha\right))\)ですから,それらの成分は\[\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\left(\begin{array}{c} \cos\alpha \\ \sin\alpha \\ \end{array} \right),\quad\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\left(\begin{array}{c} \cos\left(\frac{\pi}{2}+\alpha\right) \\ \sin\left(\frac{\pi}{2}+\alpha\right) \\ \end{array} \right)=\left(\begin{array}{c} -\sin\alpha \\ \cos\alpha \\ \end{array} \right)\]です.

この\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\),\(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)を基底とする新たな座標系の下でこの点\(\mathrm{P}\)を捉え直します.この新座標系における図の点\(\mathrm{P}\)の座標は,\((\cos\beta,~\sin\beta)\),すなわち\[
\begin{align*}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}
&=\cos\beta\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\sin\beta\overrightarrow{\mathrm{OB}}\\
&=\cos\beta\left(\begin{array}{c} \cos\alpha \\ \sin\alpha \\ \end{array} \right)+\sin\beta\left(\begin{array}{c} -\sin\alpha \\ \cos\alpha \\ \end{array} \right)\\
&=\left(\begin{array}{c} \cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta \\ \sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta \\ \end{array} \right)
\end{align*}\]です.

さらにこれは,
\begin{align*}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}&=\left(\begin{array}{c} \cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta \\ \sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta \\ \end{array} \right)\\
&=(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta)\left(\begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ \end{array} \right)+(\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta)\left(\begin{array}{c} 0 \\ 1 \\ \end{array} \right)\\
&=(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta)\overrightarrow{e_1}+(\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta)\overrightarrow{e_2}
\end{align*}
これは,点\(\mathrm{P}\)が,\(\overrightarrow{e_1},\overrightarrow{e_2}\)を基底とする(いつもの)座標系においてその座標が\[(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta,\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta)\tag{1}\]であることを示しています.

他方,\(\overrightarrow{e_1},\overrightarrow{e_2}\)を基底とする座標系における点\(\mathrm{P}\)の座標は\begin{align*}\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\left(\begin{array}{c} \cos(\alpha+\beta) \\ \sin(\alpha+\beta) \\ \end{array} \right)=&\cos(\alpha+\beta)\left(\begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ \end{array} \right)+\sin(\alpha+\beta)\left(\begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ \end{array} \right)\\ =& \cos(\alpha+\beta)\overrightarrow{e_1}+\sin(\alpha+\beta)\overrightarrow{e_2}\end{align*}より\[(\cos(\alpha+\beta),\sin(\alpha+\beta))\tag{2}\]であったから,\((1),(2)\)によって

\begin{eqnarray}
\begin{cases}
\cos(\alpha+\beta) = \cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta & \\
\sin(\alpha+\beta) = \sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta &
\end{cases}
\end{eqnarray}

が得られます.

証明終

説明しながらの記述なので面倒くさく見えるかもしれませんが,実際やってみると計算らしい計算なしにすぐに作れます。おすすめ。ちなみに\(\alpha-\beta\)の場合については上で得られた式の\(\beta\)を\(-\beta\)に変えれ直ちに手に入ります。(関連:斜交座標

サイタコスモスコスモスサイタって覚え方を初めて聞いたとき「コスモスサイタサイタコスモスでも通じるじゃん,覚え方として全く意味なくね…?」と思ったし今でもそう思う。

三角不等式

次の不等式を証明せよ.
\[\displaystyle \sum_{i=1}^{n}|x_i+y_i|^p \leq \sum_{i=1}^{n}|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+\sum_{i=1}^{n}|y_i||x_i+y_i|^{p-1}\]

高校数学の範囲的には数学Ⅰ(絶対値),数学Ⅱ(不等式の証明,三角不等式),数学B(シグマ計算)あたりかな?

証明
\begin{align*}
|x_i+y_i|^p = &|x_i+y_i||x_i+y_i|^{p-1} \\
\leq &(|x_i|+|y_i|)|x_i+y_i|^{p-1}\\
= &|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+|y_i||x_i+y_i|^{p-1}
\end{align*}

この不等式の\(i\)を\(i=1 \cdots n\)とかえて辺々加えて\[\displaystyle \sum_{i=1}^{n}|x_i+y_i|^p \leq \sum_{i=1}^{n}|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+\sum_{i=1}^{n}|y_i||x_i+y_i|^{p-1}\]を得る.

証明終

Minkowskiの不等式の証明で使うのでここにnoteしておきます。

高校数学の証明問題としても使えると思いますが三角不等式って高校数学ではそれほど使用頻度が高くないので意外と詰まっちゃう高校生も多い気がします。

2次方程式が異符号の解をもつための条件

チャート式なんかによくみる解法

\(2\)次方程式\(f(x)=0\)が異なる\(2\)つの正の解をもつ\(~\Longleftrightarrow D>0,\alpha+\beta >0,\alpha\beta > 0\)
\(2\)次方程式\(f(x)=0\)が異なる\(2\)つの負の解をもつ\(~\Longleftrightarrow D>0,\alpha+\beta <0,\alpha\beta < 0\)
\(2\)次方程式\(f(x)=0\)が異符号の解をもつ\(~\Longleftrightarrow \alpha\beta < 0 \)

これを見てふと思う。最後のだけなんで\(D>0\)がないの?と。補足をよく見ると「このとき,\(D>0\)は成り立っている」と小さく書いてある。ここ,ちょっと疑問をもちつつも「まあそういうもんなんだろ~」程度のゆるい理解で済ませているひとも少なくないと思います。でも,ここをちゃんと確認しないまま結果だけ使うというのは,理由を納得しないまま覚えるということで,数学としてはその姿勢はちょっと不安です。

証明してみます。以下,\(\alpha,\beta\)を\(2\)次方程式\(f(x)=0\)の解とします。

証明

\(2\)次方程式\(f(x)=0\)が異符号の解をもつとする.
\begin{align*}
&~\text{\(2\)次不等式\(f(x)=0\)が異符号の解をもつ}\\
\Longleftrightarrow &~D>0 \land ((\alpha > 0 \land \beta < 0) \lor (\alpha < 0 \land \beta > 0))\\
\Longleftrightarrow &~D>0 \land \alpha\beta < 0\\
\Longrightarrow &~\alpha\beta < 0 \quad\text{※ 必要条件}
\end{align*}よって,\[\text{\(2\)次不等式\(f(x)=0\)が異符号の解をもつ}\Longrightarrow ~\alpha\beta < 0\]が成り立つ.逆に,\(\alpha\beta < 0\)とする.
\begin{align*}
\alpha\beta=\frac{c}{a}<0 \Longleftrightarrow~& ac<0\\ \Longleftrightarrow~& -4ac > 0\\
\Longrightarrow~& b^2-4ac > 0 \quad\text{※ 必要条件}\\
\Longleftrightarrow~& D > 0
\end{align*}ゆえに,
\begin{align*}
\alpha\beta < 0 \Longrightarrow~&D>0 \land \alpha\beta < 0\\
\Longleftrightarrow~&\text{\(2\)次不等式\(f(x)=0\)が異符号の解をもつ}
\end{align*}以上により,\[\text{\(2\)次不等式\(f(x)=0\)が異符号の解をもつ}\Longleftrightarrow~\alpha\beta < 0\]が示された.

証明終

判別式と解と係数の関係どーのこーのがこの分野のテーマだと思うんですが,そんなことより補足として小さく書かれたこっちの議論の方が大事だし面白いと個人的に思います^^;

そもそも,教科書や教科書準拠問題集はそもそもこの辺の論理にはあまり深入りしない傾向がある気がします。卑近な例ですが例えば「判別式は\(D\)じゃなくて\(\frac{D}{4}\)を使うと計算が楽だよ!」とか。これだって,「判別式はあくまで\(D\)であって,\(\frac{D}{4}\)だなんて勝手に\(\frac{1}{4}\)しちゃだめだろ」と思いませんでしたか…?僕は思ったなあ。実際楽なので正当性も確かめずに使ってましたが。まあともかくこれだって,なんのことはない,\begin{align*}D > 0 \Longleftrightarrow \frac{D}{4}>0\\
D = 0 \Longleftrightarrow \frac{D}{4}=0\\
D < 0 \Longleftrightarrow \frac{D}{4} <0\\ \end{align*}ということに過ぎず,したがって例えば\(\frac{D}{4}>0\)を変形して得られる結論は,\(D>0\)と同値であるわけです。だから\(\frac{D}{4}>0\)で考えてよい,という。

もっとも,細かいことは気にせずとりあえず使えるように(=問題が解けて,点数がもらえるように)なることを目指し,その後改めて,細部を振り返り精査していく…という勉強法は難しい内容を学びとるためのひとつの有効な姿勢であり,決して否定はできません。あまり細かいことを言うと敷居が高くなったり(※誤用の方),あるいは深入りしすぎて手段と目的が逆転してしまったりといいことばかりではありませんしね。どう導入するのか,というのは難しいところです。

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