図示して証明?

授業で取り扱っていてふと気になった問題。

\(x,y\)は実数とする。
\((1)\quad\)\(x^2+y^2+2x<3\)ならば\(x^2+y^2-2x<15\)であることを証明せよ。
\((2)\quad\)\(x^2+y^2\leq 5\)が\(2x+y\geq k\)の十分条件となる定数\(k\)の値の範囲を求めよ。

(青チャート)

解答では

\[P=\{(x,y)|x^2+y^2+2x<3\},Q=\{(x,y)|x^2+y^2-2x<15\}\]とすると,「\(p\Rightarrow q\)が真である」\(\Leftrightarrow P\subset Q\)であるから,\(P,Q\)を図示することにより,楽に証明できる。

 
\(P\subset Q\)であることを図示することで証明していて,確かに楽かつ直観的で分かりやすいけど,しかし\((2)\)のような求値問題ならまだしも\((1)\)のような「証明」において「絵」を根拠にしていいのかという違和感があります。ということでお絵かきに頼らない証明を考えてみます。

(1)

仮定により
\begin{align*}
&x^2+y^2+2x<3\\
\Longleftrightarrow~& x^2+y^2<3-2x \land (x+1)^2+y^2<4 \\
\Longleftrightarrow~& x^2+y^2<3-2x \land (x+1)^2<4\\
\Longleftrightarrow~& x^2+y^2<3-2x \land -3 < x < 1
\end{align*}であるから,

\[x^2+y^2-2x < (3-2x)-2x = 3-4x < 15\]

証明終

(2)
\[x^2+y^2\leq 5 \Longrightarrow2 x+y\geq k\]であるような\(k\)を調べる.\(2x+y\)の値域を\(\mathcal{R}\)とおく.
\begin{align*}
&2x+y \in \mathcal{R}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x,y[2x+y=m \land x^2+y^2\leq 5]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x[x^2+(m-2x)^2\leq 5]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x[5x^2-4mx+m^2-5\leq 0]\\
\Longleftrightarrow~&4m^2-5(m^2-5)\geq 0\\
\Longleftrightarrow~&m^2-25\leq 0\\
\Longleftrightarrow~&-5 \leq m \leq 5
\end{align*}

したがって\(k\leq -5\)であれば,\[x^2+y^2\leq 5 \Longrightarrow2 x+y\geq k\]が言える.

解答終

というか,解答で(\(P=\{(x,y)|p(x,y)\},Q=\{(x,y)|q(x,y)\}\)として)\[(p(x,y)\Rightarrow q(x,y))\Longleftrightarrow P\subset Q\]だから\(P \subset Q\)を言えばよい,と言っているけど,しかしそもそも\(P \subset Q\)の定義は
\begin{align*}
&P \subset Q\\
\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}&~((x,y)\in P \Rightarrow (x,y)\in Q)\\
\Longleftrightarrow&~(p(x,y)\Rightarrow q(x,y))
\end{align*}
であったから,本来の意味で(定義に従って)この\(P \subset Q\)を示そうとすると循環論法になると思う。それを「図示」でかわすってことかな?でも数学において「図示」を証明の根拠にしていいのだろうか…?解答のこの辺のさじ加減正直よくわからない。

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