不等式の証明と微分法

(数学Ⅲ)

不等式の証明のアプローチのひとつとして微分法の利用があります。

\(p>1,q>1,\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1,a\geq 0,b\geq 0\)とする.このとき,\[ab \leq \frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}\]を示せ.

証明

まず\(b\geq 0\)を固定して,\[ab \leq \frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q} \Longleftrightarrow~ \frac{1}{p}a^p-ba+\frac{b^q}{q}\geq 0\]と変形し,左辺を\(a\)の関数と見なす.この関数を\(f(a)\)とおく:\[f(a)=\frac{1}{p}a^p-ba+\frac{b^q}{q} \quad (a\geq 0)\]\(f^{\prime}(a)\)を調べると,\[f^{\prime}(a)=a^{p-1}-b\]\(a^{p-1}\)の概形が分からないので,もう一度微分することで\(f^{\prime}(a)\)がどんな概形かを調べる(※).すると\[f^{\prime\prime}(a)=(p-1)a^{p-2}\geq 0\]したがって\(f^{\prime}(a)\)は増加関数であることが分かる.\(a\geq 0\)であったことに注意して\(a=0\)のときの\(f^{\prime}(a)\)の値を調べると\[f^{\prime}(0)=-b\]

\(b=0\)のときは,\(f^{\prime}(0)=0\)であるから\(f^{\prime}(a)\geq 0\)となる.\(f(0)\)を調べると\(f(0)=\frac{b^q}{q}= 0\)であるから\(f(a)\geq 0\).(図1)

\(b>0\)のときすなわち\(-b<0\)のときは,\(f^{\prime}(a)=a^{p-1}-b=0 \Longleftrightarrow a=b^{\frac{1}{p-1}}\)で最小値をとる.

そこで\(f\left(b^{\frac{1}{p-1}}\right)\)を調べると
\begin{align*}
f\left(b^{\frac{1}{p-1}}\right)=&\frac{1}{p}\left(b^{\frac{1}{p-1}}\right)^p-b\cdot b^{\frac{1}{p-1}}+\frac{b^q}{q}\\
=&\frac{1}{p}b^{\frac{p}{p-1}}-b^{\frac{p}{p-1}}+\frac{b^q}{q}
\end{align*}
ここで,\(\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1\Leftrightarrow q=\frac{p}{p-1}\)であるから,\[f\left(b^{\frac{1}{p-1}}\right)=\frac{1}{p}b^q-b^q+\frac{1}{q}b^q=\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{q}-1\right)b^q=0\]したがって\(f(a)\geq 0\).(図2)

以上により\[ab \leq \frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}\]が示された.

証明終

※は概形が図示できず,かつ「差」とみても把握できないタイプなのでもう一回微分して\(f^{\prime\prime}(a)\)を調べました。この記事の「増減表のかきかた」の②”にあたる状況です。

囲まれる部分の面積 その6


上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{12}\]で表される.

証明

\(a>0\)のとき.まず\(\gamma\)を求める.そのためには,\(l_{1}(x),~l_{2}(x)\)を求めて連立すればよい.
\(l_{1}(x)\)を求めるために,\(f(x)-l_{1}(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)で接している,すなわち\(f(x)-l_{1}(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\alpha\)である

ことに着目すると,\[f(x)-l_{1}(x) = a(x-\alpha)^2\]とかける.したがって\(l_{1}(x) = f(x) – a(x-\alpha)^2\).同様に考え,\(l_{2}(x) =f(x)- a(x-\beta)^2\).この\(2\)式から,
\begin{align*}
&f(x) – a(x-\alpha)^2 = f(x)- a(x-\beta)^2 \\
\Longleftrightarrow ~& (x-\alpha)^2 = (x-\beta)^2\\
\Longleftrightarrow ~& -2\alpha x +\alpha^2 = -2\beta x +\beta^2\\
\Longleftrightarrow ~& 2(\beta – \alpha) x = \beta^2 – \alpha^2\\
\Longleftrightarrow ~& x = \frac{\alpha + \beta}{2}\\
\end{align*}ゆえに\(\gamma = \frac{\alpha + \beta}{2}\).よって,求める面積\(S\)は,
\begin{align*}
S = \displaystyle &\int_\alpha^\gamma \{f(x)- l_{1}(x)\}dx + \int_\gamma^\beta \{f(x)- l_{2}(x)\}dx\\
=&\int_\alpha^\gamma a(x-\alpha)^2 dx + \int_\gamma^\beta a(x-\beta)^2 dx\\
=&a\left[\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_\alpha^\gamma + a\left[\frac{(x-\beta)^3}{3}\right]_\gamma^\beta\\
=&\frac{a}{3}\left\{(\gamma-\alpha)^3 – (\gamma-\beta)^3\right\}\\
=&\frac{a}{3}\left\{\frac{(\beta-\alpha)^3}{8} – \frac{(\alpha-\beta)^3}{8}\right\}\\
=&\frac{a}{3\cdot 8}\left\{(\beta-\alpha)^3 + (\beta-\alpha)^3\right\}\\
=&\frac{a(\beta-\alpha)^3}{12}\\
=&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{12}
\end{align*}

\(a<0\)のときも同様に計算すると,やはり\(\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{12}\)となる.

証明終

接線同士の交点が(接点がどのような位置であっても)結局\(\frac{\alpha+\beta}{2}\)で表されることは記憶しておくべきでしょう.

・・・ここまで数Ⅱ範囲で役立つ面積公式を6つ(,6)紹介しましたが,いずれも結果そのものよりもその導出過程の方が重要です.後半の公式になればなるほど使用頻度が低くなるので,当然,使わないがゆえに忘れ易くなる.したがって必要なときに自分で作れるようにしておくべきでしょう.導出過程さえ理解しておけば,「ああなんかそんなのあったなあ」くらいの意識さえあればその場で作れます.なにより使用頻度の低い公式の記憶を維持しようとするのはコスパ悪すぎですから.(テスト直前に付け焼き刃的に覚えるのはいいかな?邪道だけど・・・^^;)

囲まれる部分の面積 その5


上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}\]で表される.

証明

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(f(x)-g(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(4\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)と\(x=\beta\)で接する,すなわち\(f(x)-g(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\alpha,\beta,\beta\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x) = a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2 dx \\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^5}{30}\tag{3}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)
上と同様に考え,
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2 dx \\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^5}{30}\tag{3}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}
\end{align*}

以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^5}{30}\]で表されることになる.

証明終

\((3)\)はここの公式有名な定積分によります.

囲まれる部分の面積 その4


上の放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}\]で表される.

証明

\(a>0\)の場合と\(a<0\)の場合とで場合を分けて考える.

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(\alpha\)が重解,すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\alpha\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x)=a(x-\alpha)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2 dx = &a\left[\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_{\alpha}^{\beta} = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)

上と同様に考え,
\begin{align*}
\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2 dx = &-a\left[\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_{\alpha}^{\beta} = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}
\end{align*}

以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{3}\]で表されることになる.

証明終

教科書等でもよく見るシチュエーションですが,教科書のように展開してゴチャゴチャ計算するのは悪手です.いつも通り\(f(x)-g(x)\)を特徴付ける情報に目をつけ,得られた被積分関数は(数学Ⅱのみの履修であっても)合成関数(のちに記事にします)とみなすべきです.公式として覚えてもよいですが,見ての通り証明は容易なので,これは結果を覚えるというより上のように計算した方がよいでしょう.

囲まれる部分の面積 その3

上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}\]で表される.

証明

(① \(a>0\)で\(f(x)\)が上の場合)

被積分関数\(f(x)-g(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(3\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)で交わり\(x=\beta\)で接する,すなわち\(f(x)-g(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta,\beta\)である

ことに着目すると,\[g(x)-f(x) = a(x-\alpha)(x-\beta)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)(x-\beta)^2 dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(② \(a>0\)で\(f(x)\)が下の場合)

上と同様に考え,
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{g(x)-f(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\displaystyle a\int_{\beta}^{\alpha} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(③ \(a<0\)で\(f(x)\)が上の場合)

\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{f(x)-g(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)^2(x-\beta) dx\\
=~&\displaystyle -a\int_{\beta}^{\alpha} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(④ \(a<0\)で\(f(x)\)が下の場合)

\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{g(x)-f(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)(x-\beta)^2 dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表されることになる.

証明終

やはり,交点\(\alpha,\beta\)と\(a\)さえ分かってしまえば面積は求まってしまいます。\((2)\)はここの公式によります.

囲まれる部分の面積 その2


上の\(2\)つの放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,\[S = \frac{|a’-a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表される.

証明

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a’-a\)で,
      • \(x=\alpha,x=\beta\)で交わる,すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta\)である

ことに着目すると,\[g(x)-f(x) = (a’-a)(x-\alpha)(x-\beta)\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} (a’-a)(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle (a-a’)\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{(a-a’)(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a’-a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}証明終

\(|a’-a|\)はもちろん\(|a-a’|\)でもいいです.要は上下関係なく機械的に‘係数の差’の絶対値をとればいい,ということです.\((1)\)はここの公式によります.

囲まれる部分の面積 その1


上の放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表される.

証明

\(a>0\)の場合と\(a<0\)の場合とで場合を分けて考える.

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(-a\)で,
      • 交点が\(\alpha,\beta\)すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x)=-a(x-\alpha)(x-\beta)\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)

被積分関数は\(f(x)-g(x)\)であるから,上と同様に考え,\[f(x)-g(x) = a(x-\alpha)(x-\beta)\]したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}
以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表されることになる.

証明終

大事なポイントは被積分関数\(g(x)-f(x),~f(x)-g(x)\)を書くところです。これを実際に書き出して項を整理して因数分解を考え…などと愚直に計算するのは間違いではありませんがあまりよい手とは言えません。上で見たように,\(g(x)-f(x),~f(x)-g(x)\)を特徴付ける(3つの)要素さえ分かってしまえば即答できるわけですから。また,\((1)\)は定積分の有名公式によります。あの公式は具体的にはこんなシチュエーションで役に立つ,ということです。

結局,交点\(\alpha,\beta\)と係数\(a\)という情報だけで面積が求まってしまうということになります.

模試以上の問題ならばこの公式は(そのレベルの問題だとこれは単なる‘途中計算’に過ぎませんから)証明抜きで使っても問題ないと思われます.しかし学校のテストなどは立式~定積分の計算を問う意図もあるかと思うのでもしかしたら嫌がられるかもしれません.とはいえ,学校のテスト(=教科書の例題・練習題)だとぐちゃぐちゃ計算させようとする問題も多く,そんなのに付き合わせられるのもうざったらしいので,この証明を解答欄の脇にでもササっと記述して以降の問題を公式で済ませてしまうというのもひとつの手だと思います(証明する必要があるかどうかは,作問する先生に事前に確認しておくとよいでしょう).

他にも覚えておくと便利な公式があります。随時更新していきます.

◆無理不等式その2

次の式を\(\sqrt{\quad}\)のない形で表せ(同値変形せよ).
\[\sqrt{a} < b\]

恒真条件の追加と分配法則,矛盾命題の消去により,
\begin{align*}
&\sqrt{a} < b\\ \Longleftrightarrow~&\sqrt{a}< b \land (b \geq 0 \lor b < 0)\\ \Longleftrightarrow~&(\sqrt{a} < b \land b \geq 0)\lor (\sqrt{a} < b \land b < 0)\\ \Longleftrightarrow~&\sqrt{a} < b \land b \geq 0 \end{align*} ここからさらに変形を考えますが,前回同様,いきなり同値な変形は考えづらいので,必要性\((\Rightarrow)\)と十分性\((\Leftarrow)\)を別々に考えることにします. まず必要性\((\Rightarrow)\)から.\(\sqrt{a} \geq 0\)ですから,\(\sqrt{a} < b\)の両辺を2乗することができて,例えば次のように必要条件が得られます: \begin{align*} &\sqrt{a} < b \land b \geq 0 \Longrightarrow a < b^2 \land b \geq 0 \tag{1} \end{align*} 次にこの\((1)\)における十分性\((\Leftarrow)\)を考えてみます.当然,\(a < b^2\)の両辺に\(\sqrt{\quad}\)をとりたくなりますが,しかし\(a\)が正である保証は今手元の仮定にはありません.つまり\(\sqrt{\quad}\)をとることができず,戻れない.そこで,\((1)\)において必要条件をもう少し絞り出すことを考えます.欲しいのは\(a \geq 0\)ですが,\(\sqrt{a}\)の‘中身’は正ですから,必要条件は \[\sqrt{a} < b\land b \geq 0 \Longrightarrow a < b^2 \land b \geq 0 \land a \geq 0\] とできるはずです.そして改めて十分性を確認してみます. \begin{align*} a < b^2 \land b \geq 0 \land a \geq 0 \Longrightarrow &\sqrt{a} < \sqrt{b^2} \land b\geq 0 \land a \geq 0\\ \Longrightarrow &\sqrt{a} < |b| \land b \geq 0 \land a \geq 0\\ \Longrightarrow &\sqrt{a} < b \land b \geq 0 \land a \geq 0\\ \Longrightarrow &\sqrt{a} < b \land b \geq 0 \end{align*} となり戻れました.これで必要十分(同値)であることが分かりました.したがって\((1)\)の論理式は, \[\sqrt{a} < b \land b \geq 0 \Longleftrightarrow a < b^2 \land b \geq 0 \land a \geq 0 \Longleftrightarrow 0\leq a < b^2 \land b \geq 0 \] と書きかえれば同値になることが分かりました. 以上により,

\[\sqrt{a} < b \Longleftrightarrow 0\leq a < b^2 \land b \geq 0 \]

と同値変形できることが分かりました.

◆無理不等式その1

次の式を\(\sqrt{\quad}\)のない形で表せ(同値変形せよ).
\[\sqrt{a}>b\]

恒真条件の追加と分配法則により,
\begin{align*}
&\sqrt{a}>b\\
\Longleftrightarrow~&\sqrt{a}>b \land (b \geq 0 \lor b < 0)\\
\Longleftrightarrow~& (\sqrt{a}>b \land b \geq 0)\text{(ア)} \lor (\sqrt{a}>b \land b < 0) \text{(イ)}
\end{align*}

(ア)と(イ)を分けて考えます.

(まず(ア)について)
いきなり同値な変形は考えづらいので,必要性\((\Rightarrow)\)と十分性\((\Leftarrow)\)を別々に考えることにします. まず必要性\((\Rightarrow)\)から.今,\(b \geq 0\)ですから,\(\sqrt{a}>b\)の両辺を2乗することができて,例えば
\begin{align*}
&\sqrt{a}>b \land b \geq 0 \text{(ア)}\Longrightarrow a > b^2\tag{1}
\end{align*}
のように必要条件が得られます.次にこの\((1)\)における十分性\((\Leftarrow)\)を考えてみましょう.両辺が正ですから,\(\sqrt{\quad}\)をとることができますが,
\[a > b^2 \Longrightarrow \sqrt{a} > \sqrt{b^2} \Longrightarrow \sqrt{a} > |b|\]
となり(ア)に戻れません(\(b\)の正負がわからない).そこで,\((1)\)において(ア)の必要条件をもう少し絞り出しておきましょう.
\[\sqrt{a} > b\land b \geq 0 \text{(ア)}\Longrightarrow a > b^2 \land b \geq 0\]
そして十分性を確認してみます.
\begin{align*}
a > b^2 \land b \geq 0\Longrightarrow &\sqrt{a} > \sqrt{b^2} \land b\geq 0 \\
\Longrightarrow &\sqrt{a} > |b| \land b \geq 0 \\
\Longrightarrow &\sqrt{a} > b \land b \geq 0
\end{align*}
となりこれなら(ア)に戻れます.これで必要十分(同値)であることが分かりました.したがって\((1)\)の論理式は,
\[\sqrt{a} > b \land b \geq 0 \text{(ア)}\Longleftrightarrow a > b^2 \land b \geq 0 \tag{1′}\]
と書きかえれば同値になることが分かりました.

(次に(イ)について)
必要性\(\Rightarrow\)から見てみます.ここでは例えば明らかな必要性
\[(\sqrt{a} > b \land b < 0) \text{(イ)} \Longrightarrow b < 0 \tag{2}\] を考えてみます.逆(十分性)はどうか? \[b < 0 \Longrightarrow (\sqrt{a} > b \land b < 0) \text{(イ)}\]が言えるか?…残念ながら言えません.なぜなら\(a\)は\(\sqrt{\quad}\)の中にあるのだから正でなくてはなりませんが,しかし仮定には\(a\)の正負についての言及がないからです.このことを踏まえて\((2)\)で(イ)の必要条件を適切に絞り出しておきます.\(\sqrt{\quad}\)の‘中身’は正であることに着目して, \[(\sqrt{a} > b \land b < 0) \text{(イ)} \Longrightarrow a \geq 0 \land b < 0\] さてこれならどうでしょうか?逆(十分性)を見てみると \[a \geq 0 \land b < 0 \Longrightarrow (\sqrt{a} > b \land b < 0) \text{(イ)}\] は確かに言えます.したがって,\((2)\)の論理式は \[(\sqrt{a} > b \land b < 0) \text{(イ)} \Longleftrightarrow a \geq 0 \land b < 0\tag{2'}\] と書けば同値であることがわかりました. \((1'),(2')\)により,

\[\sqrt{a}>b \Longleftrightarrow (a > b^2 \land b \geq 0) \lor (a \geq 0 \land b < 0)\]

と同値変形できることが分かりました.

ちなみにもし,\(b \geq 0\)という条件を‘大前提’として奉れば,当然
\[\sqrt{a}>b \Longleftrightarrow a > b^2 \land b \geq 0\]
と書けます.

楕円の方程式

\(2\)点\(F(c,0),F'(-c,0)\)からの距離の和が\(2a\)であるような軌跡を求めよ.ただし,\(a>c>0\)とする.

以下,\(a>c>0\)は議論の‘大前提’としておく.
\begin{align*}
&PF+PF’=2a\\
\Longleftrightarrow~&\sqrt{(x+c)^2+y^2}+\sqrt{(x-c)^2+y^2} = 2a\\
\Longleftrightarrow~&\sqrt{(x+c)^2+y^2} = 2a – \sqrt{(x-c)^2+y^2}\\
\Longleftrightarrow~&(x+c)^2+y^2 = \left( 2a – \sqrt{(x-c)^2+y^2} \right)^2 \land 2a – \sqrt{(x-c)^2 + y^2} \geq 0 \\
\Longleftrightarrow~&a\sqrt{(x-c)^2+y^2} = a^2 – cx \land 4a^2 \geq (x-c)^2 + y^2\\
\Longleftrightarrow~&a^2\left((x-c)^2+y^2\right) = (a^2 – cx)^2 \land a^2 – cx \geq 0 \land 4a^2 \geq (x-c)^2 + y^2\\
\Longleftrightarrow~&\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1 \land a^2 – cx \geq 0 \land 4a^2 \geq (x-c)^2 + y^2\\
\Longrightarrow~&\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1\tag{\(\ast\)}
\end{align*}
\((\ast)\)の十分性を示す.そのためには,次の二つの命題が示せればよい.
\begin{align*}
&\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1 \Longrightarrow a^2 – cx \geq 0 \tag{1}\\
&\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1 \Longrightarrow 4a^2 \geq (x-c)^2 + y^2 \tag{2}
\end{align*}
まず\((1)\)を証明する.まず仮定\(\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1\)により,\(\frac{x^2}{a^2} \leq 1\)が言える.すなわち\(-a \leq x \leq a\).このとき,
\[a^2-cx \geq a^2-ca = a(a-c) > 0 \]
よって,\(a^2-cx > 0\).これで\((1)\)が示された.

次に\((2)\)を証明する.まず仮定\(\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1\)により,\(\frac{y^2}{a^2-c^2} \leq 1 \Leftrightarrow y^2 \leq a^2 – c^2\)が言える.また,前半と同様にして\(\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1\)から\(-a \leq x \leq a\)が言えることにも注意する.以上の準備の下に,\((2)\)を示す.
\begin{align*}
(x-c)^2 + y^2 \leq &~(x-c)^2 + a^2-c^2\\
= &~x^2-2cx+a^2\\
\leq &~a^2-2cx+a^2\\
= &~2(a^2-cx)\\
\leq &~2(a^2+ca)\\
< &~2(a^2+a^2)=4a^2
\end{align*}
ゆえに,\((x-c)^2 + y^2 < 4a^2\).これで\((2)\)も示された.

以上により\((\ast)\)の十分性,すなわち
\begin{align*}
\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1 \land a^2 – cx \geq 0 \land 4a^2 \geq (x-c)^2 + y^2&\\
\Longleftarrow~\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1&
\end{align*}
が言えた.よって,
\[PF+PF’=2a~\Longleftrightarrow~\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1\]
が得られる.

\(\ast\)    \(\ast\)    \(\ast\)

教科書では必要性だけを追っていき最後に「逆に,\(\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{a^2-c^2}=1\)を満たす点\(\mathrm{P}(x,y)\)は,\(PF+PF’=2a\)を満たす」としか書いておらず,なぜ逆が成り立つのかについては触れていません.

この軌跡を楕円と呼びます.