点と平面の距離

平面\(ax+by+cz+d=0\)と点\(P(x_0,y_0,z_0)\)との距離の公式を作ってみます。

平面\(ax+by+cz+d=0\)と点\(P(x_0,y_0,z_0)\)との距離は\[\frac{|ax_0+by_0+cz_0+d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\]で与えられる.

証明

\((a_0,b_0,c_0)\)を平面上の点とする.点\(P\)から平面へおろした足を\(H\)とおけば,線分\(PH\)の長さは正射影ベクトル\((\overrightarrow{AP}\cdot \overrightarrow{e})\overrightarrow{e}\)の大きさと等しい.したがって
\begin{align*}
PH=&\left|(\overrightarrow{AP}\cdot \overrightarrow{e})\overrightarrow{e}\right|\\
=&\left|\left(\begin{array}{c} x_0-a_0 \\ y_0-b_0 \\ z_0-c_0 \end{array}\right)\cdot\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\left(\begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array}\right)\right|\\
=&\frac{|a(x_0-a_0)+b(y_0-b_0)+c(z_0-c_0)|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\\
=&\frac{|ax_0+by_0+cz_0-aa_0-bb_0-cc_0|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\\
\end{align*}\((a_0,b_0,c_0)\)は平面上の点なので,\(aa_0+bb_0+cc_0+d=0\)すなわち\(d=-aa_0-bb_0-cc_0\)が成り立つことから\[\frac{|ax_0+by_0+cz_0+d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\]を得る.

証明終

おもしろポイント:
・お馴染み点と直線の距離の公式\(\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\)に似てること
・なんかすごいかんたんに導けること
正射影ベクトルきもちいい

平面の方程式

平面の方程式を作ってみます。

ここでは,平面はその平面の垂直方向とその平面が通る1点が定まれば決定することに着目します。平面の法線ベクトルを\(\overrightarrow{n}=(a,b,c)\),平面が通る1点の座標を\(A(a_0,b_0,c_0)\),平面上の任意の点を\(P(x,y,z)\)とおくことにします。\begin{align*}
&\overrightarrow{AP} \cdot \overrightarrow{n} = 0\\
\Longleftrightarrow~ &\left(\begin{array}{c} x-a_0 \\ y-b_0 \\ z-c_0 \end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array}\right)= 0\\
\Longleftrightarrow~ &a(x-a_0)+b(y-b_0)+c(z-c_0)=0\\
\Longleftrightarrow~ &ax+by+cz-aa_0-bb_0-cc_0=0\\
\Longleftrightarrow~ &ax+by+cz+d=0
\end{align*}よって,平面の方程式は\(ax+by+cz+d=0\)と書けること,そしてその法線ベクトルが\((a,b,c)\)で表されることが分かりました(途中,\(-aa_0-bb_0-cc_0=d\)とおきました)。直線の方程式が\(ax+by+c=0\)と書けること,そしてその法線ベクトルが\((a,b)\)で表されることにそっくりですね。

斜交座標

\(\Delta \mathrm{OAB}\)において,辺\(\mathrm{OA}\)の中点を\(\mathrm{C}\),辺\(\mathrm{OB}\)を\(2:1\)に内分する点を\(\mathrm{D}\)とし,線分\(\mathrm{AD}\)と線分\(\mathrm{BC}\)の交点を\(\mathrm{P}\)とする.\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\overrightarrow{a},\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\overrightarrow{b}\)とするとき,\(\overrightarrow{\mathrm{OP}}\)を\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}\)を用いて表せ.

定期考査に必ず出題される定番中の定番の問題です。教科書のような例の解法のほかにも様々な解法が考えられますが,個人的には以下のように考えるのが好きです。

解答

\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}\)を基底とする斜交座標を考える.この斜交座標における直線\(AD\)の方程式は\(x+\frac{3}{2}y=1\),直線\(\overrightarrow{BC}\)の方程式は\(2x+y=1\)(下図参照).この2式を連立して\(x=\frac{1}{4},y=\frac{1}{2}\).したがって\[\overrightarrow{OP}=\frac{1}{4}\overrightarrow{a}+\frac{1}{2}\overrightarrow{b}\]を得る.

解答終

高校2年生の問題が,中学1年生レベルの単純な連立方程式の問題に帰着します。直線は\(y=ax+b\)だけじゃなく\(\frac{x}{a_0}+\frac{y}{b_0}=1\)(切片型)と書けることは常識にしておきましょう。

この教科書の超基本問題はこのように面白い解法がいくつかあって,教科書の解法だけで終わらせるにはもったいない問題。ゆっくり立ち止まって色々と学んでおきたい問題です。もちろん教科書の解法も重要(※)です。

※ 重要なんだけど問題はその学び方。この解法を「\(s:1-s\)とおいて\(t:1-t\)とおいて~」みたいなこの問題「特有の」手順として学ぶひとが多い。そんな頭の解法ストックに+1するだけの理解(暗記?)だけではなく,これはベクトル方程式と絡めた視点(ベクトル方程式を立てているという認識)をも学ぶべき。そうすればこの一連の手続きは「解法」なんて仰々しいものじゃない,極めて自然でかつ汎用性のある(=模試レベルでも使える)知識になります。

位置ベクトルの利用

座標空間において,\(3\)点\(A(0,1,1),B(2,2,3),C(4,0,2)\)を通る平面に関して,点\(P(9,1,1)\)と対称な点の座標を求めなさい.

(実用数学検定\(1\)級 計算技能検定)

数検の計算問題ですが,「対称点の座標が欲しい」というのは大学入試問題でもよく出会うシチュエーションだと思います.いろいろな解法が考えられますが,ここでは位置ベクトルを用いて求めてみます.作戦はこうです:

求める点の座標を\(P’\)とします.位置ベクトルの定義により,空間上の座標\(P’\)とベクトル\(\overrightarrow{OP’}\)の成分は1対1に対応してますから,\(\overrightarrow{OP’}\)を求まるということそれは空間上の座標\(P’\)が求まることに等しい.そこで\(\overrightarrow{OP’}\)を求めることにします.点\(P\)から平面上に下した垂線の足の座標を\(H\)とおけば,\(\overrightarrow{OP’}=\overrightarrow{OP}+2\overrightarrow{PH}\)とできます.\(\overrightarrow{PH}\)を求めます.

ここで,正射影ベクトル\((\overrightarrow{AP}\cdot\overrightarrow{e})\overrightarrow{e}\)は\(\overrightarrow{HP}\)に等しい(\(\overrightarrow{e}\)は平面に垂直な単位ベクトル,外積によって直ちに求まる).したがって\begin{align*}
\overrightarrow{OP’}=&\overrightarrow{OP}+2\overrightarrow{PH}\\
=&\overrightarrow{OP}-2(\overrightarrow{AP}\cdot\overrightarrow{e})\overrightarrow{e}
\end{align*}となる.\(\overrightarrow{AP}=\left(\begin{array}{c}9\\0\\0\end{array}\right)\),そして\(\overrightarrow{e}=\dfrac{1}{3}\left(\begin{array}{c}1\\2\\-2\end{array}\right)\)であるから,
\begin{align*}
\overrightarrow{OP’}=&\left(\begin{array}{c}9\\1\\1\end{array}\right)-2\left(\left(\begin{array}{c}9\\0\\0\end{array}\right)\cdot \dfrac{1}{3}\left(\begin{array}{c}1\\2\\-2\end{array}\right)\right)\dfrac{1}{3}\left(\begin{array}{c}1\\2\\-2\end{array}\right) = \left(\begin{array}{c}7\\-3\\5\end{array}\right)
\end{align*}したがって求める座標は\((7,-3,5)\)と求まります.

「座標が欲しければ位置ベクトル調べればいいじゃん」というシンプルな発想で片付き,また未知数を設定する必要もなく,計算量も少ない.そして何よりその「(空間上の)座標を知りたい」なんて状況はそれこそ頻繁に出会うシチュエーションです(サイクロイド等の媒介変数表示,複素数の回転など).これが位置ベクトルの‘嬉しい点’であり,位置ベクトルを学ぶ意味だと思う.しかし教科書ではこれを強調しないし,教える側も教科書に右ならえ….が,受験生としては空間上の座標を求める際の強力な手法としてぜひ常識としてほしい手法の一つです.

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