「存在する」の扱い

\[
\begin{align*}
\begin{cases}
x=a\\
x=b
\end{cases}
\end{align*}
\]

ここから短絡的に\(x\)を消去して\(a=b\)としても同値とはなりません.しかしもし,

\[
\begin{align*}
\begin{cases}
x=a\\
x=b
\end{cases}
\end{align*}\text{を満たす\(x\)が存在する}
\]

なら,\(a=b\)と同値であると言えます(\(x\)は文字通り消える).この二者の違いは,「存在する」という一言があるかないかです.この「存在する」について議論してみたいと思います.簡単のため,上を論理式で記述してみます.「\(x\)が存在する」は「\(\exists x\)」と書けますから(\(\exists\)はExistの頭文字をひっくり返したものです),

\[
\begin{align*}
\exists x
\begin{cases}
x=a\\
x=b
\end{cases}
\Longleftrightarrow~a=b
\end{align*}
\]

となります.一般に,条件を\(p(x)\)で表すことにすると,

\[
\begin{align*}
\exists x
\begin{cases}
p(x)\\
x=a
\end{cases}
\Longleftrightarrow~p(a)
\end{align*}
\]

が成り立ちます.

【証明】

(\(\Rightarrow\))仮定より,条件\(p(x)\)と\(x=a\)をみたす\(x\)が存在する.今,これを\(\alpha\)とおく.このとき,\[p(\alpha)\land \alpha=a\]すなわち\[p(a)\]が成り立つ.

(\(\Leftarrow\))仮定より,\(p(x)\)をみたす\(x\)が存在する.その\(x\)は\(a\)である.そしてこの\(a\)は方程式\(x=a\)を明らかにみたしている.ゆえに,\(p(x)\land x=a\)をみたす\(x\)が(\(a\)として)存在する.

(証明終)

これは様々な同値変形で用いるとても重要な考え方になります.
とくに連立方程式においては,「消去する」などといいつつも文字は消えるわけではないのですが,しかし「存在する」のであれば,消えてなくなります.この違いに注意しておきたいです.