\((4.6)\)を満足する\(S\)の点列\((x_n)\)は一般に一意的にはきまらないが,\((x_n)\)をどのようにとっても,\((4.7)\)の\(\tilde{x}^{\ast}\)は一意的にきまる.そのことも,\(((S^{\ast},d^{\ast}),\varphi)\)および\(((\tilde{S^{\ast}},\tilde{d^{\ast}}),\tilde{\varphi})\)に関する\(\mathrm{(ii)}\)から直ちに示される.
\begin{align*}
\mathrm{(ii)}\quad &\forall x,y\in S[d(x,y)=d^{\ast}(\varphi(x),\varphi(y))=\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(y),\tilde{\varphi}(y))]\\
(4.6)\quad &x^{\ast}=\lim_{n\to \infty}\varphi(x_n)\\
(4.7)\quad &\tilde{x}^{\ast}=\lim_{n\to \infty}\tilde{\varphi}(x_n)
\end{align*}
証明
\(x^{\ast}\)を\(S^{\ast}\)の任意の点とすれば\[x^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\varphi(x_n)\]となる\(S\)の点列\((x_n)\)が存在し,\(\tilde{S^{\ast}}\)において\[\tilde{x}^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\tilde{\varphi}(x_n)\]が存在する:\[\forall\epsilon>0\exists n_0\in \mathbb{N}\left[n>n_0 \Rightarrow \tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}^{\ast}(x_n),\tilde{x}^{\ast})<\frac{\epsilon}{3}\right]\](証明済みとする)ここで,\[x^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\varphi(x_n)=\lim_{n \to \infty}\varphi(x^{\prime}_n)\]となる\(S\)の点列\((x^{\prime}_n)\)が存在すると仮定する: \begin{align*} &\forall\epsilon>0\exists n_1\in \mathbb{N}\left[n>n_1 \Rightarrow d^{\ast}(\varphi(x_n),x^{\ast})<\frac{\epsilon}{3}\right]\\ &\forall\epsilon>0\exists n_2\in \mathbb{N}\left[n>n_2 \Rightarrow d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),x^{\ast})<\frac{\epsilon}{3}\right] \end{align*} このとき,示すべきことは\[\tilde{x}^{\ast}=\lim_{n \to \infty}\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n)\]すなわち\[\forall\epsilon>0\exists n^{\prime}_0\in \mathbb{N}\left[n>n^{\prime}_0 \Rightarrow \tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{x}^{\ast})<\epsilon\right]\]である.この示すべき\(n^{\prime}_0\)は\[n^{\prime}_0=\max\{n_0,n_1,n_2\}\]である.実際,\(\mathrm{(ii)}\)により \begin{align*} &d(x^{\prime}_n,x_n)=d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),\varphi(x_n))\\ &d(x^{\prime}_n,x_n)=\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{\varphi}(x_n)) \end{align*}に注意すれば,\(n>n^{\prime}_0\)のとき,
\begin{align*}
\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{x}^{\ast})\leq&\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x^{\prime}_n),\tilde{\varphi}(x_n))+\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x_n),\tilde{x}^{\ast})\\
=&d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),\varphi(x_n))+\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x_n),\tilde{x}^{\ast})\\
\leq&d^{\ast}(\varphi(x^{\prime}_n),x^{\ast})+d^{\ast}(x^{\ast},\varphi(x_n))+\tilde{d}^{\ast}(\tilde{\varphi}(x_n),\tilde{x}^{\ast})\\
<&\frac{\epsilon}{3}+\frac{\epsilon}{3}+\frac{\epsilon}{3}\\
=&\epsilon
\end{align*}
証明終
数学の成績を上げるために「初見の問題を次々と浴びるように演習すればいい」と考えている人は少なくなくありません。1回見ただけあるいは解いただけで内容を理解しかつ覚えられる頭脳の持ち主ならば確かにそれが最善の勉強法だと思います。が,高くないレベルでもがいている時点で少なくともそのタイプには当てはまらない。いわゆる普通の生徒がそのような勉強をしても,勉強した気になるだけで右の耳から左の耳,知識が頭に残らず何の意味もない。「考える力がつくから」と思うかもしれませんがそれも実質的には意味がない。その「考える力」なるものも知識を土台にして成り立つものだからです。そして試験というのはこの意味で「頭の中の知識を吐き出す場」であって,当然ながらないものは出せず,点数にすら結びつかない。
だから,数学の勉強をする際はこれと決めた本で,しかも新しい問題ではなく同じ問題を出来るようになるまで繰り返し,まず必要な知識(何を知っていれば/どう考えれば解けたのか,間違えたのであればその原因は何だったのか,等々)を頭に定着させることが最初の一歩だと僕は考えています(もちろん,必然性を伴って!)。その地道な作業の過程で長い時間がかかるものの確実に点数は上がっていく。
そしてこの解き直しという周回作業には強力な副産物がある。いやむしろ「数学」の学習という意味ではこっちが主産物かも知れない。
それは「分からなかったところが分かるようになる」「自分の過去の理解や解釈の誤りに気付く」「新たな疑問(=新たな視点)が得られる」ということ…総じて,「理解が深まる」ことだ。
卑近な例だけど上での証明もそう。僕は粘りに粘ってもどうしても理解できないところは泣く泣く理解を保留し,付箋を貼っておいて未来の自分に希望を託している。その付箋の箇所のひとつを,最近,改めて考えたら上のように片付いた。これは自分の成長の証でとても嬉しいことだし,なにより自信がつく。少なくとも数学はこのような姿勢で学ぶことが重要と思う。
数学で点数がとれないと悩んでいる人は,頭の中に知識を入れなければ何も始まらないという現実にまず向き合おう。そのために,あれこれと問題を食い散らかさず,できなかった問題を出来るようになるまで繰り返し解こう。分からない問題があってももいい。いずれわかる。そうして本が手垢でボロボロになるまで読み込もう。
学校であれ予備校であれ塾であれ,なんとなく授業をうけてなんとなく解いていても残念ながら成績が上がることはない。
覚悟を決めよう。