囲まれる部分の面積 その3

上の曲線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}\]で表される.

証明

(① \(a>0\)で\(f(x)\)が上の場合)

被積分関数\(f(x)-g(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(3\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a\)で,
      • \(x=\alpha\)で交わり\(x=\beta\)で接する,すなわち\(f(x)-g(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta,\beta\)である

ことに着目すると,\[g(x)-f(x) = a(x-\alpha)(x-\beta)^2\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)(x-\beta)^2 dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(② \(a>0\)で\(f(x)\)が下の場合)

上と同様に考え,
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{g(x)-f(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)^2(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\displaystyle a\int_{\beta}^{\alpha} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(③ \(a<0\)で\(f(x)\)が上の場合)

\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{f(x)-g(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)^2(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)^2(x-\beta) dx\\
=~&\displaystyle -a\int_{\beta}^{\alpha} (x-\beta)(x-\alpha)^2 dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
(④ \(a<0\)で\(f(x)\)が下の場合)

\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \{g(x)-f(x)\} dx \\
=~&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)(x-\beta)^2 dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)^2 dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}
以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表されることになる.

証明終

やはり,交点\(\alpha,\beta\)と\(a\)さえ分かってしまえば面積は求まってしまいます。\((2)\)はここの公式によります.

囲まれる部分の面積 その2


上の\(2\)つの放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,\[S = \frac{|a’-a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表される.

証明

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(a’-a\)で,
      • \(x=\alpha,x=\beta\)で交わる,すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta\)である

ことに着目すると,\[g(x)-f(x) = (a’-a)(x-\alpha)(x-\beta)\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} (a’-a)(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle (a-a’)\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{(a-a’)(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a’-a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}証明終

\(|a’-a|\)はもちろん\(|a-a’|\)でもいいです.要は上下関係なく機械的に‘係数の差’の絶対値をとればいい,ということです.\((1)\)はここの公式によります.

囲まれる部分の面積 その1


上の放物線と直線で囲まれる部分の面積\(S\)は,いずれの場合も\[S = \frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表される.

証明

\(a>0\)の場合と\(a<0\)の場合とで場合を分けて考える.

(\(a>0\)の場合)

被積分関数\(g(x)-f(x)\)がどんな関数になるかを考える.これは,

      • \(2\)次式で,
      • 次数が一番大きい項の係数は\(-a\)で,
      • 交点が\(\alpha,\beta\)すなわち\(g(x)-f(x)=0\)を解いて得られる\(2\)つの解が\(\alpha,\beta\)である

ことに着目すると,\[f(x)-g(x)=-a(x-\alpha)(x-\beta)\]とかける.したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} -a(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle a\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{a(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}

(\(a<0\)の場合)

被積分関数は\(f(x)-g(x)\)であるから,上と同様に考え,\[f(x)-g(x) = a(x-\alpha)(x-\beta)\]したがって求める部分の面積は
\begin{align*}
&\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} a(x-\alpha)(x-\beta) dx \\
=~&\displaystyle -a\int_{\alpha}^{\beta} -(x-\alpha)(x-\beta) dx\\
=~&\frac{-a(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\\
=~&\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}
以上により,いずれの場合も面積\(S\)は\[\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}{6}\]で表されることになる.

証明終

大事なポイントは被積分関数\(g(x)-f(x),~f(x)-g(x)\)を書くところです。これを実際に書き出して項を整理して因数分解を考え…などと愚直に計算するのは間違いではありませんがあまりよい手とは言えません。上で見たように,\(g(x)-f(x),~f(x)-g(x)\)を特徴付ける(3つの)要素さえ分かってしまえば即答できるわけですから。また,\((1)\)は定積分の有名公式によります。あの公式は具体的にはこんなシチュエーションで役に立つ,ということです。

結局,交点\(\alpha,\beta\)と係数\(a\)という情報だけで面積が求まってしまうということになります.

模試以上の問題ならばこの公式は(そのレベルの問題だとこれは単なる‘途中計算’に過ぎませんから)証明抜きで使っても問題ないと思われます.しかし学校のテストなどは立式~定積分の計算を問う意図もあるかと思うのでもしかしたら嫌がられるかもしれません.とはいえ,学校のテスト(=教科書の例題・練習題)だとぐちゃぐちゃ計算させようとする問題も多く,そんなのに付き合わせられるのもうざったらしいので,この証明を解答欄の脇にでもササっと記述して以降の問題を公式で済ませてしまうというのもひとつの手だと思います(証明する必要があるかどうかは,作問する先生に事前に確認しておくとよいでしょう).

他にも覚えておくと便利な公式があります。随時更新していきます.

有名な定積分

\[\displaystyle \int_\alpha^\beta -(x-\alpha)(x-\beta)dx = \frac{(\beta-\alpha)^3}{6}\tag{1}\]

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \int_\alpha^\beta -(x-\alpha)(x-\beta)dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta -(x-\alpha)\{x-\alpha-(\beta-\alpha)\}dx \\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{-(x-\alpha)^2+(\beta-\alpha)(x-\alpha)\}dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{-(x-\alpha)^2+(\beta-\alpha)(x-\alpha)\}dx\\
= &\left[-\frac{(x-\alpha)^3}{3}+(\beta-\alpha)\frac{(x-\alpha)^2}{2}\right]_\alpha^\beta\\
= &-\frac{(\beta-\alpha)^3}{3}+\frac{(\beta-\alpha)^3}{2}\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^3}{6}
\end{align*}証明終

一行目でいきなり\(-(x-\alpha)(x-b)\)を展開するひとがいますが,それは悪手です.上のように,\((x-a)\)で展開しましょう.同様に,

\[\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)(x-\beta)^2dx = \frac{(\beta-\alpha)^4}{12}\tag{2}\]

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)(x-\beta)^2dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)\{x-\alpha-(\beta-\alpha)\}^2dx \\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{(x-\alpha)^3-2(\beta-\alpha)(x-\alpha)^2+(\beta-\alpha)^2(x-\alpha)\}dx\\
= &\left[\frac{(x-\alpha)^4}{4}-2(\beta-\alpha)\frac{(x-\alpha)^3}{3}+(\beta-\alpha)^2\frac{(x-\alpha)^2}{2}\right]_\alpha^\beta\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^4}{4}-2\frac{(\beta-\alpha)^4}{3}+\frac{(\beta-\alpha)^4}{2}\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^4}{12}
\end{align*}証明終

これらの定積分はを覚えておくととても嬉しいことがあります.「\(6\)分の\(3\)乗公式」(マイナス注意),「\(12\)分の\(4\)乗公式」として記憶しておくとよいでしょう.

おまけ

\[\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^2(x-\beta)^2dx = \frac{(\beta-\alpha)^5}{30}\tag{3}\]

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^2(x-\beta)^2dx\\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^2\{x-\alpha-(\beta-\alpha)\}^2dx \\
= &\displaystyle \int_\alpha^\beta \{(x-\alpha)^4-2(\beta-\alpha)(x-\alpha)^3+(\beta-\alpha)^2(x-\alpha)^2\}dx\\
= &\left[\frac{(x-\alpha)^5}{5}-2(\beta-\alpha)\frac{(x-\alpha)^4}{4}+(\beta-\alpha)^2\frac{(x-\alpha)^3}{3}\right]_\alpha^\beta\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^5}{5}-\frac{(\beta-\alpha)^5}{2}+\frac{(\beta-\alpha)^5}{3}\\
= &\frac{(\beta-\alpha)^5}{30}
\end{align*}証明終

ちなみに,これらの式を一般化したものが,これです.

三角関数の合成

結論から言うと,合成の公式は覚える式ではありません.覚えても使い物になりません.そして忘れてしまえば終わりです.

\(a \sin \theta + b \cos \theta\)を合成してみます.以下のように「導く」のがおすすめです.

証明

まず\(\sin\theta,\cos\theta\)の係数\(a,b\)の二乗の和のルートをくくりだす.すなわち
\[
\begin{align*}
a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin \theta + \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos \theta\right)\\
\end{align*}
\]ここで,点\(\displaystyle \left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)\)は\(\displaystyle\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2+\left(\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2=1\)をみたすことから単位円周上の点であるといえるので,その点と原点を結ぶ線分が\(x\)軸の正の方向となす角を\(\alpha\)とおけば
\[\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}=\cos \alpha,~\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}=\sin \alpha \tag{\(\ast\)}\]とおける.
したがって
\[
\begin{align*}
a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin \theta + \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\cos \alpha \sin \theta + \sin \alpha \cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\sin \theta \cos \alpha+\cos \theta \sin \alpha\right)
\end{align*}
\]
加法定理を逆向きに使うことで
\[=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta + \alpha)\]

証明終

これは証明のための操作ではなく,実際に合成する際も上の証明と全く同じように考え,変形します.ですからこの証明を理解するということは,すなわち具体的な合成の手法が手に入ったということを意味します.また,上のように理解しておくと,たとえば\((\ast)\)において,点\(\displaystyle \left(\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}},\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)\)であっても\(\displaystyle\left(\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2+\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)^2=1\)をみたすことからやはり単位円周上の点であるといえるので,\[\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}=\cos \alpha’,~\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}=\sin \alpha’\]ともおけることに気付きます.ここから上と同様の変形を行うと,
\[
\begin{align*}
a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin \theta + \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\sin \alpha’ \sin \theta + \cos \alpha’ \cos \theta\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\left(\cos \theta\cos \alpha’ + \sin \theta\sin \alpha’\right)\\
&=\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta + \alpha’)
\end{align*}
\]とも変形できることに必然的に気付きます.

\(\ast\)      \(\ast\)      \(\ast\)

公式を導出するまでのに多くの時間と労力を要するのなら,その結果を覚えることも確かに必要です.しかし,そうでないのなら,必要に応じてその場で作ってしまえばいいと割り切ってしまうのもひとつの姿勢です.

結果を覚えるのではなく,導出できるようにしておけば,万が一忘れてもすぐに再現できる.忘れてもいいやと開き直れる.導出過程自体が解法の糸口になることもある.他の公式との共通点が見えきて機会が深まことだって珍しくない.いいことづくめ.

公式を結果だけ覚えろ,あるいは覚えるしかないなどと言われたら相手が誰であれ警戒しましょう.一旦立ち止まり,本当に覚える必要のある式なのか?記憶に頼らずにかわす方法はないか?を自分自身の頭で考える癖を持ちしましょう.自分ひとりで判断できなければ,友人をはじめいろいろな人に意見を求めましょう.数学においても「セカンドオピニオン」は重要です.

Schuwarzの不等式

不等式

\[\sqrt{\displaystyle \sum_{i=1}^n (a_i+b_i)^2} \leq \sqrt{\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2} + \sqrt{\displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2}\]

を証明します.

証明
\begin{align*}
&\displaystyle \sqrt{\sum_{i=1}^n (a_i+b_i)^2} \leq \sqrt{\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2} + \sqrt{\displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2}\\
\Longleftrightarrow~&\displaystyle \sum_{i=1}^n (a_i+b_i)^2 \leq \displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2 +2\sqrt{\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2\right)\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2\right)} + \displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2\\
\Longleftrightarrow~&\displaystyle \sum_{i=1}^n a_ib_i \leq \displaystyle \sqrt{\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2\right)\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2\right)}\\
\Longleftarrow~&\displaystyle \left|\sum_{i=1}^n a_ib_i \right| \leq \displaystyle \sqrt{\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2\right)\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2\right)}\quad\text{※ 十分条件}\\
\Longleftrightarrow~&\displaystyle \left(\sum_{i=1}^n a_ib_i \right)^2 \leq \displaystyle \left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i^2\right)\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n b_i^2\right)
\end{align*}
したがって,最後の不等式を証明すればよい.ここで,天下りではあるが,\[\displaystyle \sum_{i=1}^n (a_ix+b_i)^2\]という式を考える.平方の和なので,これはもちろん正であることに着目して,
\begin{align*}
&\displaystyle \sum_{i=1}^n (a_ix+b_i)^2 \geq 0\\
\Longleftrightarrow~&\displaystyle \left(\sum_{i=1}^n a_i^2\right)x^2+2\left(\sum_{i=1}^na_ib_i\right)x + \sum_{i=1}^nb_i^2 \geq 0\\
\Longleftrightarrow~&\left(\sum_{i=1}^na_ib_i\right)^2-\left(\sum_{i=1}^n a_i^2\right)\left(\sum_{i=1}^nb_i^2\right) \leq 0\quad\text{※ 判別式}\\
\Longleftrightarrow~&\left(\sum_{i=1}^na_ib_i\right)^2 \leq \left(\sum_{i=1}^n a_i^2\right)\left(\sum_{i=1}^nb_i^2\right)\\
\end{align*}証明終

途中の不等式はSchuwarzの不等式と呼ばれます.

Schuwarzの不等式
\[\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i b_i \right)^2 \leq \left(\sum_{i=1}^n a_{i}^2 \right)\left(\sum_{i=1}^n b_{i}^2 \right)\]すなわち
\[(a_1b_1+a_2b_2+\cdots+a_nb_n)^2 \leq (a_{1}^2+a_{2}^2+\cdots + a_{n}^2)(b_{1}^2+b_{2}^2+\cdots + b_{n}^2)\]

\(n=2,3\)の場合の証明は数学Ⅱの練習問題でお馴染みですが,一般の場合は上のように証明するのが有名です.

 

 

◆値域の問題(別解)

\(4x^2-8xy+10y^2=1\)のとき,\(x^2+y^2\)の最大値と最小値を求めよ.

\(x^2+y^2\)がとりうる値の範囲を\(\mathcal{R}\)とおく.
\begin{align*}
&k \in \mathcal{R}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1\end{cases} \land \exists r \exists \theta \begin{cases} x=r\cos\theta \\ y= r\sin \theta \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \exists r \exists \theta \left[\begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1\end{cases} \land \begin{cases} x=r\cos\theta \\ y= r\sin \theta \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \exists r \exists \theta \left[\begin{cases} r^2=k \\ 4r^2\cos^2\theta-8r^2\cos\theta\sin\theta +10r^2\sin^2\theta=1\end{cases} \land \begin{cases} x=r\cos\theta \\ y= r\sin \theta \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \exists r \exists \theta \left[\begin{cases} r^2=k \\ 4k\cos^2\theta-8k\cos\theta\sin\theta +10k\sin^2\theta=1\end{cases} \land \begin{cases} x=r\cos\theta \\ y= r\sin \theta \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \exists \theta \left[\begin{cases} r^2=k \\ 4k\cos^2\theta-8k\cos\theta\sin\theta +10k\sin^2\theta=1\end{cases} \land \exists x \exists y \begin{cases} x=r\cos\theta \\ y= r\sin \theta \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \exists \theta \begin{cases} r^2=k \\ 4k\cos^2\theta-8k\cos\theta\sin\theta +10k\sin^2\theta=1\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \begin{cases} r^2=k \\ \exists \theta [4k\cos^2\theta-8k\cos\theta\sin\theta +10k\sin^2\theta=1]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \begin{cases} r^2=k \\ \exists \theta [7k-4k\sin 2\theta-3k\cos 2\theta=1]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \begin{cases} r^2=k \\ \exists \theta [3k\cos 2\theta + 4k\sin 2\theta=7k-1]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \begin{cases} r^2=k \\ \exists \theta \left[\left(\begin{array}{c}3k \\ 4k \\ \end{array}\right) \cdot \left(\begin{array}{c}\cos 2\theta \\ \sin 2\theta \\ \end{array}\right)=7k-1 \right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \begin{cases} r^2=k \\ \exists \alpha \left[5k\cos \alpha =7k-1 \right]\end{cases}\qquad\text{(\(\alpha\)は\(\left(\begin{array}{c}3k \\ 4k \\ \end{array}\right)\)と\(\left(\begin{array}{c}\cos 2\theta \\ \sin 2\theta \\ \end{array}\right)\)のなす角)}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r \begin{cases} r^2=k \\ -1 \leq \frac{7k-1}{5k} \leq 1\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists r [r^2=k] \land -1 \leq \frac{7k-1}{5k} \leq 1\\
\Longleftrightarrow~& k \geq 0 \land -1 \leq \frac{7k-1}{5k} \leq 1\\
\Longleftrightarrow~& k > 0 \land -5k \leq 7k-1 \leq 5k\\
\Longleftrightarrow~& k > 0 \land \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2}\\
\Longleftrightarrow~& \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2}\\
\end{align*}

ゆえに,最大値\(\frac{1}{2}\),最小値\(\frac{1}{12}\).

\(\ast\)    \(\ast\)    \(\ast\)

はじめに\(x=r\cos \theta,y=r\sin \theta\)とおき,そして「積の和(1次結合)」を「内積」と見なして処理してみました(合成でもいいと思いますが).前回の解法と違い,どの行も同値変形なので逆の考察は必要ありません.たぶんこっちの解法のほうが簡単だと思いますがどうでしょう.

◆値域の問題(つづき)

\begin{align*}
\Longrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0 \right] \land \exists t \left [\frac{x}{y}=t \right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0 \right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0 \land (k=\frac{1}{4} \lor k\neq \frac{1}{4})\right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0 \land k=\frac{1}{4}\right] \\
\lor \exists t \left[(4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0 \land k\neq \frac{1}{4}\right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ t=\frac{3}{4} \land k=\frac{1}{4}\right] \lor \exists t \left[\frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2} \land k\neq \frac{1}{4}\right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ k=\frac{1}{4} \lor \left( \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2} \land k\neq \frac{1}{4}\right)\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \begin{cases} \exists x \exists y ( x^2+y^2=k \land y\neq 0 ) \\ k \neq 0 \\ \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2} \end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \begin{cases} \exists x \exists y ( x^2+y^2=k \land y\neq 0 ) \\ \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2} \end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \left( k \geq 0 \land \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2} \right)\\
\Longleftrightarrow~&\left( k=\frac{1}{4} \lor k \geq 0 \right) \land \left( k=\frac{1}{4} \lor \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2} \right)\\
\Longleftrightarrow~&k \geq 0 \land \frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2}\\
\Longleftrightarrow~&\frac{1}{12} \leq k \leq \frac{1}{2}
\end{align*}

逆に,\(k=\frac{1}{12}\)のとき,前記事\((\ast)\)が成り立つかを調べる.
\begin{align*}
&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0\land \frac{x}{y}=t \right]\end{cases}\tag{\(\ast\)}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=\frac{1}{12} \\ \frac{1}{12} \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ 4t^2+4t+1=0\land \frac{x}{y}=t \right]\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=\frac{1}{12} \\ y\neq 0 \\ \exists t \left[ t=-\frac{1}{2}\right] \land y=-2x \end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=\frac{1}{12} \\ y=-2x \\ y\neq 0 \end{cases}
\end{align*}
この命題は明らかに真である.

\(k=\frac{1}{2}\)のときも同様に\((\ast)\)は真となる.したがって最大値は\(\frac{1}{2}\),最小値は\(\frac{1}{12}\).

◆値域の問題

\(4x^2-8xy+10y^2=1\)のとき,\(x^2+y^2\)の最大値と最小値を求めよ.

\(x^2+y^2\)がとりうる値の範囲を\(\mathcal{R}\)とおく.
\[
\begin{align*}
&k \in \mathcal{R}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1\end{cases} \land (k=0 \lor k \neq 0)\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1 \\ k=0 \end{cases} \lor \begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4x^2-8xy+10y^2=1 \\ k\neq 0 \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x=y=0 \\ 4x^2-8xy+10y^2=1 \\ k=0 \end{cases} \lor \begin{cases} x^2+y^2=k \\ 4kx^2-8kxy+10ky^2=k \\ k\neq 0 \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)x^2-8kxy+(10k-1)y^2=0 \\ k \neq 0\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)x^2-8kxy+(10k-1)y^2=0 \\ k \neq 0\end{cases} \land (y=0 \lor y \neq 0)\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)x^2-8kxy+(10k-1)y^2=0 \\ k \neq 0 \\ y=0 \end{cases} \right.\\
&\left.\lor \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)x^2-8kxy+(10k-1)y^2=0 \\ k \neq 0 \\ y\neq 0 \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2=k \\ (4k-1)x^2=0 \\ k \neq 0\\ y=0 \end{cases} \lor \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)x^2-8kxy+(10k-1)y^2=0 \\ k \neq 0 \\ y\neq 0 \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2=k \\ (4k-1)k=0 \\ k \neq 0\\ y=0 \end{cases} \lor \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)\left(\frac{x}{y}\right)^2-8k\frac{x}{y}+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \\ y\neq 0 \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&\exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2=\frac{1}{4} \\ k=\frac{1}{4} \\ k \neq 0\\ y=0 \end{cases} \lor \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)\left(\frac{x}{y}\right)^2-8k\frac{x}{y}+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \\ y\neq 0 \end{cases}\right]\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2=\frac{1}{4} \\ y=0 \end{cases} \lor \exists x \exists y\begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)\left(\frac{x}{y}\right)^2-8k\frac{x}{y}+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y\begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)\left(\frac{x}{y}\right)^2-8k\frac{x}{y}+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \left[\begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)\left(\frac{x}{y}\right)^2-8k\frac{x}{y}+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \end{cases} \land \exists t \left[\frac{x}{y}=t\right]\right]\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \exists t \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)\left(\frac{x}{y}\right)^2-8k\frac{x}{y}+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \frac{x}{y}=t\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \exists t \begin{cases} x^2+y^2=k \\ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0 \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \frac{x}{y}=t\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~&k=\frac{1}{4} \lor \exists x \exists y \begin{cases} x^2+y^2=k \\ k \neq 0 \land y\neq 0 \\ \exists t \left[ (4k-1)t^2-8kt+(10k-1)=0\land \frac{x}{y}=t \right]\end{cases}\tag{\(\ast\)}\
\end{align*}
\]
ここで,\(\exists x [p(x) \land q(x)] \Longrightarrow \exists x p(x) \land \exists x q(x)\)であることに注意して,(つづき

◆円と放物線(別解その2)

\(y=x^2+k\)(\(k\)は定数)と円\(x^2+y^2=4\)について,
\((1)\)異なる\(4\)つの共有点をもつとき,定数\(k\)の値の範囲を求めよ.
\((2)\)放物線と円が接するとき,定数\(k\)の値を求めよ.

円と放物線が共有点をもつときの\(k\)の範囲を\(\mathcal{D}\)とおく.
\begin{align*}
&k\in\mathcal{D}\\
\Longleftrightarrow~ &\exists x \exists y \begin{cases}x^2+y^2=4 \\ y=x^2+k\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~ &\exists x \exists y \begin{cases}x^2+y^2=4 \\ y=(4-y^2)+k\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~ &\exists x \exists y \begin{cases}x^2=4-y^2 \\ y^2+y-4-k=0\end{cases}\\
\Longleftrightarrow~ &\exists y\left[\exists x [x^2=4-y^2] \land y^2+y-4-k=0 \right]\\
\Longleftrightarrow~ &\exists y\left[-2 \leq y \leq 2 \land y^2+y-4=k \right]\\
\Longleftrightarrow~ &\exists y\left[-2 \leq y \leq 2 \land \left(y+\frac{1}{2}\right)^2-\frac{17}{4}=k \right]\\
\Longleftrightarrow~ &-\frac{17}{4} \leq k \leq 2 \tag{\(\ast\)}
\end{align*}
\((2)~\)上の結果と下図から,接するとき,\(k=\pm 2\)または\(k=-\frac{17}{4}\).


\((1)~\)\((2)\)の考察と上図から,異なる\(4\)つの共有点をもつとき,\(-\frac{17}{4} < k < -2\).

\((\ast)\)の考察は下図による(文字定数は分離せよ,の方針).

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