解法と必然性 その2

前記事の証明は

証明
 
\(n=1\)のとき,\((3+i)^1=3+i\)は虚数.
\(n=2\)のとき,\((3+i)^2=18+26i\)より,実部と虚部を\(10\)で割った余りはそれぞれ\(8,6\)である.\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}ここで,
\begin{align*}
&3\alpha-\beta \equiv 3\cdot 8 -6=18\equiv 8\pmod{10}\\
&\alpha+3\beta \equiv 8 + 3\cdot 6=18\equiv 6\pmod{10}\\
\end{align*}
であるから,上の仮定のもとで\[(3+i)^{n+1}=\alpha^{\prime}+\beta^{\prime} i,~\alpha^{\prime}\equiv 8 \pmod{10},~\beta^{\prime}\equiv 6 \pmod{10}\]が成り立つ.したがってすべての\(n\in\{2,3,\cdots\}\)で\[(3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\]が成り立つ,よって\((3+i)^n\)は虚数となる.以上によりすべての\(n\in\mathbb{N}\)で\((3+i)^n\)は虚数となる.
 
証明終

となります。この解答の流れを図示すると,以下のようになります:


 
ここで「解法を覚える」ということはどういうことかを考えてみます。「解法を覚える」というと,上の図で示した解法を「パターン」として機械的に覚えるもの…と解釈する人は少なくないようです。しかし「パターン」として機械的に覚えるだけでは例えばなぜ冒頭でいきなり\(n=1\)と\(n=2\)をあのような形で別々に扱ったのか,なぜ\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定しようと思いついたのか,その動機がまったく不明瞭なままです。実際の試験場では当然ながら自分にヒントを与えてくれる人はおらず頼りになるのは自分しかいないわけですから,その解法自体を思いつくためのきっかけ(必然性)こそが重要なはずです。

そこで改めて上の解答に至った経緯を見直してみます。「\(\alpha\equiv 8,\beta \equiv 6\)」と仮定したのは幾度かの試行錯誤の末得られたものでした。そしてそれにより「\(n=2\)のとき別個に調べる」必要が生じました。図示すれば,以下のようになります。


したがって,覚えるべきは流れは以下のようになります。

 

冒頭の図で示したような直線的な流れではなく,紆余曲折があり,そこから必然性が生まれる,ということです。覚えるのならば,この必然性を含めて覚える。数学における「覚える」とはこのような姿勢でなければなりません。

尚,このような「必然性」は,一般には解答・解説には載っていません。指導してれる人がいない限り,基本自分でそれを読み取らなければならない。だから数学の解答を読む際は「なぜ?」と問いかけながら,あたかも本と対話するように読むことが重要です。もし本の解答解説が必然性が感じられない,天下り的なものであれば,自分の手で発見的な解答に作り直す,くらいの気持ちをもつべきだと思います。

解法と必然性 その1

数学で得点できるようにするためにはどうしたらいいか?という悩みに対して,僕はどの生徒に対しても「まず解法を覚え,手数を増やすこと」と指示しています。「『解き方』を次々と覚えることが『数学』の学習といえるのか」という点においては疑問の余地がありますが,しかし現実問題として中高数学においては「限られた時間内に点数を取りきる」という使命が課せられていますから,結局のところこの姿勢は十分ではないにせよ確実に必要です。

「覚える」というと,例えば歴史の年号暗記や人物名の暗記のような固有名詞の力技の暗記が連想されますが,しかし数学における「覚える」というのは,そのような単純な作業ではなく,「なぜそうしようと思うのか?」という理解をも含めて覚える,ということを意味しています。

次の問題を例に考えてみます。

\(i\)を虚数単位とする.以下の問いに答えよ.
 
\((1)\quad\)\(n=2,3,4,5\)のとき\((3+i)^n\)を求めよ.またそれらの虚部の整数を\(10\)で割った余りを求めよ.

\((2)\quad\)\(n\)を正の整数とするとき\((3+i)^n\)は虚数であることを示せ.
 

(神戸大)

\((1)\)は計算するだけです。

\begin{align*}
&(3+i)^2=8+6i\\
&(3+i)^3=(3+i)(8+6i)=18+26i\\
&(3+i)^4=(3+i)(18+26i)=28+96i\\
&(3+i)^5=(3+i)(28+96i)=-12+316i\\
\end{align*}
虚部を\(10\)で割った余りはすべて\(6\)

問題は\((2)\)です。これは「すべての\(n\)で」ということなので,まず数学的帰納法であろうと思いつきます。いつも通りやってみます。

\(n=1\)のとき,\((3+i)^1=3+i\)であるから主張は正しい.\(n\)のとき主張が正しい,すなわち\((3+i)^n\)が虚数であると仮定する.

このとき,\((3+i)^{n+1}\)が虚数であることが示せればめでたしめでたし…なのですが上のような‘日本語による’仮定では計算ができず議論が進まないので,‘数式で’仮定しなおすことにします:

\(n\)のとき主張が正しい,すなわち\((3+i)^n=\alpha+\beta i\quad(\beta\neq 0)\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}

あとは\(\alpha+3\beta\)が\(0\)でないことが言えればいいのですが,しかし,手元の過程は\(\beta\neq 0\)のみであり,これだけでは\(\alpha+3\beta\)が\(0\)でないことは到底言えそうにありません。ここで,思わせぶりだった\((1)\)の結果:「\((3+i)^n~(n\in \{2,3,4,5\})\)の虚部を\(10\)で割った余りはすべて\(6\)」から,「\(\beta\neq 0\)」ではなく「\(\beta\)を\(10\)で割った余りが\(6\)である」と仮定すればよいのでは?と思いつきます(実際,\(\beta\equiv 6 \pmod{10}\)が言えれば,当然\(\beta \neq 0\)です):

\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}

しかし,虚部は\(\alpha+3\beta\)であり,相変わらず手元には\(\alpha\)についての仮定は何もありませんから,上のように仮定したところでやはり\(\alpha+3\beta\neq 0\)は言えません。\(\alpha\)について何か欲しい。うーん。。。そこで,再び\((1)\)を眺めます。実部に着目すると,こちらは「\(10\)で割った余りが\(8\)」であることが予想されます。おっと,じゃあ仮定を強めて\(\alpha \equiv 8\pmod{10},~\beta\equiv 6\pmod{10}\)と仮定すればいいのでは?と思いつきます。すると…

\((3+i)^n=\alpha+\beta i,~\alpha\equiv 8 \pmod{10},~\beta\equiv 6 \pmod{10}\)と仮定する.このとき,
\begin{align*}
(3+i)^{n+1}=&(3+i)(3+i)^n\\
=&(3+i)(\alpha+\beta i)\\
=&(3\alpha-\beta)+(\alpha+3\beta)i\\
\end{align*}ここで,
\begin{align*}
&3\alpha-\beta \equiv 3\cdot 8 -6=18\equiv 8\pmod{10}\\
&\alpha+3\beta \equiv 8 + 3\cdot 6=18\equiv 6\pmod{10}\\
\end{align*}
であるから,上の仮定のもとで\[(3+i)^{n+1}=\alpha^{\prime}+\beta^{\prime} i,~\alpha^{\prime}\equiv 8 \pmod{10},~\beta^{\prime}\equiv 6 \pmod{10}\]が成り立つ.

うまくいきました。これで証明終わり!といきたいところですが,仮定を強めたので,数学的帰納法の‘連鎖反応のスイッチ’,つまり\(n=1\)の調査をやり直さなければなりません。しかし\((3+i)^1=3+i\)で実部も虚部も\(\mod{10}\)で\(8,6\)ではありません。そこで\(n=2\)のときを‘連鎖反応のスイッチ’にすることにします(\((1)\)で記述していますが):

\(n=2\)のとき,\((3+i)^2=18+26i\)より,実部と虚部を\(10\)で割った余りはそれぞれ\(8,6\)である.

\(n=1\)は別枠で示しておけばいいでしょう。これで証明が完成しました。(つづく)

ベクトルの便利公式

\(\triangle{\mathrm{ABC}}\)において,\(\triangle{\mathrm{PBC}}:\triangle{\mathrm{PCA}}:\triangle{\mathrm{PAB}}=a:b:c~\)のとき,\[\overrightarrow{\mathrm{AP}}=\frac{1}{a+b+c}(b\overrightarrow{\mathrm{AB}}+c\overrightarrow{\mathrm{AC}})\]

 

 

証明

直線\(\mathrm{AP}\)と辺\(\mathrm{BC}\)との交点を\(\mathrm{D}\)とおくと,\(\triangle{\mathrm{PCA}}:\triangle{\mathrm{PAB}}=b:c\)より\(\mathrm{BD}:\mathrm{DC}=c:b\)であるから,内分の公式により\[\overrightarrow{\mathrm{AD}}=\frac{b\overrightarrow{\mathrm{AB}}+c\overrightarrow{\mathrm{AC}}}{c+b}\]
また,凹四角形\(\mathrm{ABPC}\)と\(\triangle{\mathrm{PBC}}\)の面積比が\(b+c:a\)であることから\(\mathrm{AP}:\mathrm{PD}=b+c:a\)だから\[\overrightarrow{\mathrm{AP}}=\frac{b+c}{a+b+c}\overrightarrow{\mathrm{AD}}\]
この\(2\)式により
\begin{align*}
\overrightarrow{\mathrm{AP}}=&\frac{b+c}{a+b+c}\overrightarrow{\mathrm{AD}}\\
=&\frac{b+c}{a+b+c}\frac{1}{b+c}(b\overrightarrow{\mathrm{AB}}+c\overrightarrow{\mathrm{AC}})\\
=&\frac{1}{a+b+c}(b\overrightarrow{\mathrm{AB}}+c\overrightarrow{\mathrm{AC}})
\end{align*}

証明終

幾何の問題でおなじみ「底辺が等しければ面積比=高さの比」を利用します。この公式は例のあの問題で役立ちます:

\(\Delta \mathrm{OAB}\)において,辺\(\mathrm{OA}\)の中点を\(\mathrm{C}\),辺\(\mathrm{OB}\)を\(2:1\)に内分する点を\(\mathrm{D}\)とし,線分\(\mathrm{AD}\)と線分\(\mathrm{BC}\)の交点を\(\mathrm{P}\)とする.\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\overrightarrow{a},\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\overrightarrow{b}\)とするとき,\(\overrightarrow{\mathrm{OP}}\)を\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}\)を用いて表せ.

解答

\(\mathrm{OC:CA}=1:1\)であるから,\(\triangle{\mathrm{PBO}}:\triangle{\mathrm{PBA}}=1:1\)
また,\(\mathrm{OD:DB}=2:1\)であるから,\(\triangle{\mathrm{PAO}}:\triangle{\mathrm{PAB}}=2:1\)
よって,\(\triangle{\mathrm{PAO}}:\triangle{\mathrm{PAB}}:\triangle{\mathrm{PBO}}=2:1:1\)
上の公式により,
\begin{align*}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}=&\frac{1}{2+1+1}(1\overrightarrow{\mathrm{OA}}+2\overrightarrow{\mathrm{OB}})\\
=&\frac{1}{4}\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\frac{1}{2}\overrightarrow{\mathrm{OB}}
\end{align*}

解答終

というように早くて楽…なんですが,しかしこれは教科書に載っていないため,試験で使ってよいかというと微妙なところだと思います。(証明を含めてかけばもちろん問題はないけど,それだと時間がかかり本末転倒)

なので,検算に用いるとよいと思います。

積の和

実数\(x,y\)が\(|x|\leq 1\)と\(|y| \leq 1\)を満たすとき,不等式\[0 \leq x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\leq 1\]が成り立つことを示せ.

(大阪大学 文系)

積の和の形\(ax+by\)を\(\left(\begin{array}{c} a \\ b \\ \end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c} x \\ y \\ \end{array}\right)\)とみると事態が好転することが少なくない気がします。

証明

\(2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\)という項に着目し,中辺は\(\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2\)の展開式ではないかと疑う.実際,展開してみると\begin{align*}
&\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2\\
=~&y^2(1-x^2)+2xy\sqrt{1-x^2}\sqrt{1-y^2}+x^2(1-y^2)\\
=~&x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}
\end{align*}ゆえに\[x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\geq 0\]を得る.また,
\begin{align*}
&y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\\
=&~\left(\begin{array}{c} y \\ x \\ \end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c} \sqrt{1-x^2} \\ \sqrt{1-y^2} \\ \end{array}\right)\\
=&~\sqrt{x^2+y^2}\sqrt{1-x^2+1-y^2}\cos \theta\\
=&~\sqrt{x^2+y^2}\sqrt{2-(x^2+y^2)}\cos \theta\\
=&~\sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\cos \theta\\
\end{align*}より
\begin{align*}
&-\sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\leq y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2} \leq \sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\\
\Longleftrightarrow&~\left|y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right|\leq\sqrt{2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2}\\
\Longleftrightarrow&~\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2\leq 2(x^2+y^2)-(x^2+y^2)^2
\end{align*}
ここで\(x^2+y^2=t\)とおくと,\(0\leq t \leq 2\)より
\begin{align*}
2t-t^2=-(t-1)^2+1\leq 1
\end{align*}であるから\[\left(y\sqrt{1-x^2}+x\sqrt{1-y^2}\right)^2 \leq 1\]すなわち\[x^2+y^2-2x^2y^2+2xy \sqrt{1-x^2} \sqrt{1-y^2}\leq 1\]を得る.

証明終

昔こういった手法を「そんなものは受験テクニックだ!」と言ってやたら否定する人がいたけど高校数学や受験数学で「テクニック」と呼ばれるものが大学数学で再登場するということが少なくない気がする。(てか,それが元ネタ?)実際,上の\[a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_n x_n\]を\(1\)次結合といい,上でしたような変形は大学で学ぶ線型代数学ではよく見られるものです。

「存在することを示せ」と言われたら 

(数学A,数学B)

「ツチノコの存在を証明しろ」と言われたら,どうすればいいか。
…それは簡単,ツチノコを捕まえて連れてくればOK!

ここで,数学Aの「整数の性質」で登場した「整数の割り算」について見てみます。

一般に,次のことが成り立つ。

整数\(a\)と正の整数\(b\)について\[a=qb+r,~0\leq r < b\]となる整数\(q,r\)はただ\(1\)通りに定まる。

『高等学校 数学A』数研出版

 
「定まる」とは要は「存在する」ということですが,いずれにせよ初めて学んだときは感覚的に当たり前すぎて疑問にすら思わなかったと思います。しかし,いざこれを証明しろと言われたらどうしたらいいでしょう…?

ずばり,実際にもってこよう!(以下では簡単のために\(a\geq 0\)とし,また一意性の部分はカットします)

\(a,b\)を\(a \geq 0,b>0\)を満たす整数とする.このとき,
\[a=qb+r,~0\leq r < b\tag{\(\ast\)}\]を満たす整数\(q,r\)が存在することを示せ.

証明

\(b(>0)\)を固定して,任意の\(a(\geq 0)\)について主張が成り立つことが示せればよい.

\(a < b\)であるとき:
\(q=0,r=a\)とすればよい.

\((0 <)b \leq a\)であるとき:
数学的帰納法で示す.\(a\)より小さい非負の整数で主張が成り立つとする.\(b>0\)より\(b \leq a \Leftrightarrow 0 \leq a-b (< a)\)であるから,\(a-b\)は\(a\)より小さい非負の整数である.したがって仮定により,\begin{align*}
&\exists q^{\prime},r^{\prime}\in \mathbb{Z}[a-b = q^{\prime}b+r^{\prime},0 \leq r^{\prime} \leq b]\\
\Longleftrightarrow~&\exists q^{\prime},r^{\prime}\in \mathbb{Z}[a = (q^{\prime}+1)b+r^{\prime},0 \leq r^{\prime} \leq b]
\end{align*}よって\((\ast)\)を満たす\(q,r\)として\(q=q^{\prime}+1,~r=r^{\prime}\)ととればよい.
これで,\(a\)より小さい非負の整数で主張が成り立てば,\(a\)でも主張が成り立つことが分かった.
\(a=0\)のときは,\(q=0,r=0\)とすればよい.

以上により任意の\(a(\geq 0)\)に対して\((\ast)\)を満たす\(q,r \in \mathbb{Z}\)が存在することが示せた.

証明終

現物もってくれば文句ないだろっていう。

こんなところで数学Bで学んだ(学ぶ)数学的帰納法が登場するのも面白いですね。しかも直前の番号のみを仮定する教科書の定番タイプではなく,直前以前の番号すべてを仮定するタイプの帰納法です。

パズルみたいな学校数学もまあまあ面白いけど,個人的にはこういう緻密な調査の方がすきだなあ。点数にならないけど。

 

三角不等式

次の不等式を証明せよ.
\[\displaystyle \sum_{i=1}^{n}|x_i+y_i|^p \leq \sum_{i=1}^{n}|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+\sum_{i=1}^{n}|y_i||x_i+y_i|^{p-1}\]

高校数学の範囲的には数学Ⅰ(絶対値),数学Ⅱ(不等式の証明,三角不等式),数学B(シグマ計算)あたりかな?

証明
\begin{align*}
|x_i+y_i|^p = &|x_i+y_i||x_i+y_i|^{p-1} \\
\leq &(|x_i|+|y_i|)|x_i+y_i|^{p-1}\\
= &|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+|y_i||x_i+y_i|^{p-1}
\end{align*}

この不等式の\(i\)を\(i=1 \cdots n\)とかえて辺々加えて\[\displaystyle \sum_{i=1}^{n}|x_i+y_i|^p \leq \sum_{i=1}^{n}|x_i||x_i+y_i|^{p-1}+\sum_{i=1}^{n}|y_i||x_i+y_i|^{p-1}\]を得る.

証明終

Minkowskiの不等式の証明で使うのでここにnoteしておきます。

高校数学の証明問題としても使えると思いますが三角不等式って高校数学ではそれほど使用頻度が高くないので意外と詰まっちゃう高校生も多い気がします。

外積の分配法則

\[\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{c}\]

\(\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{c}\)を証明します。

図のように,空間上に\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b},\overrightarrow{c}\)があったとしましょう。

\(\overrightarrow{a}\)の始点を通り,\(\overrightarrow{a}\)に垂直な平面を\(\alpha\)とし,\(\overrightarrow{b},\overrightarrow{c}\)からその平面\(\alpha\)への正射影ベクトルをそれぞれ\(\overrightarrow{b^{\prime}},\overrightarrow{c^{\prime}}\)とおきます。

このとき,下図のような位置関係があることに注意しておきます。

図を動かしてイメージしてみてください(右クリックを押しながらドラッグすると動きます)。

さて,このとき,\begin{align*}
\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=&\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})\tag{1}\\
=&\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{c^{\prime}}\tag{2}\\
=&\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{c}\tag{3}
\end{align*}が言えます。順にみていきます。

\((1)\)について:
\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c},\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}}\)は同一平面上にありますから,まず\(\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})\)と\(\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})\)の向きは同じであることが分かります。そして,\(\overrightarrow{a}\)と\(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}\)が作る平行四辺形の面積と,\(\overrightarrow{a}\)と\(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}}\)が作る平行四辺形の面積は等しいので(等積変形),\(\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})\)と\(\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})\)の大きさも等しい。したがって\[\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})\tag{1}\]です。

\((2)\)について:
\(\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b^{\prime}},\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{c^{\prime}},\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})\)の向きはどれも\(\overrightarrow{a}\)を軸に\(90^{\circ}\)回転させた向きになります。そして大きさは(どれも\(\overrightarrow{a}\)と直交していることに注意すれば)それぞれ\(|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b^{\prime}}|,|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{c^{\prime}}|,|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}}|\),すなわちどれも自分の大きさを\(|\overrightarrow{a}|\)倍したものです。

(上の図は見やすさのため\(\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})\)だけ図示)これを,真上から見たものが下の図がです。

この図から,\[\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{c^{\prime}})=\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b^{\prime}}+\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{c^{\prime}}\tag{2}\]であることが分かります。

\((3)\)について:
\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b},\overrightarrow{b^{\prime}}\)は同一平面上にありますから,まず\(\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}\)と\(\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b^{\prime}}\)の向きは同じであることが分かります。そして,\(\overrightarrow{a}\)と\(\overrightarrow{b}\)が作る平行四辺形の面積と,\(\overrightarrow{a}\)と\(\overrightarrow{b^{\prime}}\)が作る平行四辺形の面積は等しいので(等積変形),\(\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b}\)と\(\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b^{\prime}}\)の大きさも等しい。したがって\[\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b}=\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b^{\prime}}\tag{3}\]です。

\(\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{c}=\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{c^{\prime}}\)も同様です。

以上により証明が完了しました。

点と平面の距離

平面\(ax+by+cz+d=0\)と点\(P(x_0,y_0,z_0)\)との距離の公式を作ってみます。

平面\(ax+by+cz+d=0\)と点\(P(x_0,y_0,z_0)\)との距離は\[\frac{|ax_0+by_0+cz_0+d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\]で与えられる.

証明

\((a_0,b_0,c_0)\)を平面上の点とする.点\(P\)から平面へおろした足を\(H\)とおけば,線分\(PH\)の長さは正射影ベクトル\((\overrightarrow{AP}\cdot \overrightarrow{e})\overrightarrow{e}\)の大きさと等しい.したがって
\begin{align*}
PH=&\left|(\overrightarrow{AP}\cdot \overrightarrow{e})\overrightarrow{e}\right|\\
=&\left|\left(\begin{array}{c} x_0-a_0 \\ y_0-b_0 \\ z_0-c_0 \end{array}\right)\cdot\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\left(\begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array}\right)\right|\\
=&\frac{|a(x_0-a_0)+b(y_0-b_0)+c(z_0-c_0)|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\\
=&\frac{|ax_0+by_0+cz_0-aa_0-bb_0-cc_0|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\\
\end{align*}\((a_0,b_0,c_0)\)は平面上の点なので,\(aa_0+bb_0+cc_0+d=0\)すなわち\(d=-aa_0-bb_0-cc_0\)が成り立つことから\[\frac{|ax_0+by_0+cz_0+d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}\]を得る.

証明終

おもしろポイント:
・お馴染み点と直線の距離の公式\(\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\)に似てること
・なんかすごいかんたんに導けること
正射影ベクトルきもちいい

平面の方程式

平面の方程式を作ってみます。

ここでは,平面はその平面の垂直方向とその平面が通る1点が定まれば決定することに着目します。平面の法線ベクトルを\(\overrightarrow{n}=(a,b,c)\),平面が通る1点の座標を\(A(a_0,b_0,c_0)\),平面上の任意の点を\(P(x,y,z)\)とおくことにします。\begin{align*}
&\overrightarrow{AP} \cdot \overrightarrow{n} = 0\\
\Longleftrightarrow~ &\left(\begin{array}{c} x-a_0 \\ y-b_0 \\ z-c_0 \end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array}\right)= 0\\
\Longleftrightarrow~ &a(x-a_0)+b(y-b_0)+c(z-c_0)=0\\
\Longleftrightarrow~ &ax+by+cz-aa_0-bb_0-cc_0=0\\
\Longleftrightarrow~ &ax+by+cz+d=0
\end{align*}よって,平面の方程式は\(ax+by+cz+d=0\)と書けること,そしてその法線ベクトルが\((a,b,c)\)で表されることが分かりました(途中,\(-aa_0-bb_0-cc_0=d\)とおきました)。直線の方程式が\(ax+by+c=0\)と書けること,そしてその法線ベクトルが\((a,b)\)で表されることにそっくりですね。

斜交座標

\(\Delta \mathrm{OAB}\)において,辺\(\mathrm{OA}\)の中点を\(\mathrm{C}\),辺\(\mathrm{OB}\)を\(2:1\)に内分する点を\(\mathrm{D}\)とし,線分\(\mathrm{AD}\)と線分\(\mathrm{BC}\)の交点を\(\mathrm{P}\)とする.\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\overrightarrow{a},\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\overrightarrow{b}\)とするとき,\(\overrightarrow{\mathrm{OP}}\)を\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}\)を用いて表せ.

定期考査に必ず出題される定番中の定番の問題です。教科書のような例の解法のほかにも様々な解法が考えられますが,個人的には以下のように考えるのが好きです。

解答

\(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}\)を基底とする斜交座標を考える.この斜交座標における直線\(AD\)の方程式は\(x+\frac{3}{2}y=1\),直線\(\overrightarrow{BC}\)の方程式は\(2x+y=1\)(下図参照).この2式を連立して\(x=\frac{1}{4},y=\frac{1}{2}\).したがって\[\overrightarrow{OP}=\frac{1}{4}\overrightarrow{a}+\frac{1}{2}\overrightarrow{b}\]を得る.

解答終

高校2年生の問題が,中学1年生レベルの単純な連立方程式の問題に帰着します。直線は\(y=ax+b\)だけじゃなく\(\frac{x}{a_0}+\frac{y}{b_0}=1\)(切片型)と書けることは常識にしておきましょう。

この教科書の超基本問題はこのように面白い解法がいくつかあって,教科書の解法だけで終わらせるにはもったいない問題。ゆっくり立ち止まって色々と学んでおきたい問題です。もちろん教科書の解法も重要(※)です。

※ 重要なんだけど問題はその学び方。この解法を「\(s:1-s\)とおいて\(t:1-t\)とおいて~」みたいなこの問題「特有の」手順として学ぶひとが多い。そんな頭の解法ストックに+1するだけの理解(暗記?)だけではなく,これはベクトル方程式と絡めた視点(ベクトル方程式を立てているという認識)をも学ぶべき。そうすればこの一連の手続きは「解法」なんて仰々しいものじゃない,極めて自然でかつ汎用性のある(=模試レベルでも使える)知識になります。

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