シグマ計算の工夫

教科書には次の式が公式として載っています.\[\sum^n_{k=1}ar^{n-1}=\frac{a(1-r^n)}{1-r}\]これは「公式」なのだから覚えるべきなのでしょうか?

結論から言えば,これは覚えるべき式ではありません.次のように考えましょう:

\[\sum\text{の後ろが\(r^{n}\)の形をしている}\]
ことからこれは等比数列の和であることが見て取れます.ここが最大のポイント.
等比数列の和の公式を思い出しましょう.等比数列の和の公式で必要な情報は,初項,公比,項数,の3つの情報でした.それらさえ分かればいい.\(\sum^n_{k=1}ar^{n-1}\)から読み取ってみましょう.

初項は?\(ar^{n-1}\)に\(n=1\)を代入すればよいでしょう.\(ar^{1-1}=ar^{0}=a\)です.

公比は?これは式の形からただちに\(r\)と分かります.

項数は?\(\sum^n_{k=1}\),すなわち項は\(1\)から\(n\)までありますから\(n\)個です.

したがって,等比数列の和の公式にこれらを代入し,\[\frac{a(1-r^n)}{1-r}\]が得られます.

練習に次の問題をやってみましょう.

\[(1)~\sum^{10}_{k=6}2\cdot 3^k\hspace{40mm}(2)~\sum^{2n-1}_{k=m}5^{2k-1}\]

\((1)\)

初項は?\(2\cdot 3^k\)に\(k=1\)と代入すればよいでしょう.\(2\cdot 3^1=6\)です.

公比は?式の形から,\(3\)です.

項数は?\(10-6+1=5\)です.

したがって,求める和は\[\frac{6(1-3^5)}{1-3}=\frac{6(3^5-1)}{2}=3^6-3=726\]となります.

\((2)\)

初項は?\(5^{2k-1}\)に\(k=m\)と代入すればよいでしょう.\(5^{2m-1}\)です.

公比は?\(5^{2k-1}=5^{2k}\cdot5^{-1}=\frac{1}{5}25^k\)であることに注意して,\(25\)です.

項数は?\((2n-1)-m+1=2n-m\)です.

したがって,求める和は\[\frac{5^{2m-1}(1-25^{2n-m})}{1-25}=\frac{5^{2m-1}(25^{2n-m}-1)}{24}\]となります.

以上,解答の過程に着目して欲しいのですが「\(\sum ar^{n-1}\)の公式」など必要ありませんし,覚えていても上ような形に添わないため使い物にすらなりません.

一般に,教科書が「公式」だと言っているから必ず覚えてなくてはならない,という訳では決してありません.教科書で「覚えろ」と言わんばかりの記述であっても,それが本当に覚える価値のある式なのか,それとも導出過程さえ押さえればいい式なのか,自分の頭で考え,疑う癖をつけることは数学を学ぶ上では非常に大事です.

法線ベクトル

\[
\begin{align*}
&ax+by+c=0\\
\Longleftrightarrow~&a\left(x+\frac{c}{2a}\right)+b\left(y+\frac{c}{2b}\right)=0\\
\Longleftrightarrow~&\left(\begin{array}{c}a\\b\end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c}x+\frac{c}{2a}\\y+\frac{c}{2b}\end{array}\right)=0\\
\Longleftrightarrow~&\left(\begin{array}{c}a\\b\end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c}x-\left(-\frac{c}{2a}\right)\\y-\left(-\frac{c}{2b}\right)\end{array}\right)=0\\
\end{align*}
\]
最後の式の主張は「点\((x,~y)\)と点\(\left(-\frac{c}{2a},~-\frac{c}{2b}\right)\)を結んだベクトルが,ベクトル\((a,~b)\)と垂直になる」ということ(内積が0ですから).そのような条件をみたす点\((x,~y)\)の集まりは当然,直線となるわけですが,同値変形の元の式を見ると,その直線は\(ax+by+c=0\)という直線です.したがって直線\(ax+by+c=0\)に垂直なベクトル(の1つ)が\((a,~b)\),であると言えます.

「\(ax+by\)という1次結合の形が現れたら,内積とみる」という視点は受験数学においても大切な視点です.

点と直線の距離の公式の証明

点と直線の距離の公式を証明してみましょう.

直線\(l:ax+by+c=0\)と,この直線上にない点を\(\mathrm{P}(x_0,~y_0)\),そして下図に示す直線\(l\)上の点を\(\mathrm{A}(p,~q)\)とします.

まず\(l\)の法線ベクトルを求め,図示します.法線ベクトルは\(x\)と\(y\)との係数から\((a,~b)\)でしたね(なぜ?).また,\(\overrightarrow{\mathrm{AP}}\)を図示しておきます.(下図では\((a,~b)\)を列ベクトルで表記しています.)

求めたいものも図示しておきましょう.それは,

上図の赤い線分\(\mathrm{AH}(=|\overrightarrow{\mathrm{AH}}|)\)ですね.

気づいたでしょうか?これはほかならぬ正射影ベクトル(の大きさ)です.ですから結局,「点と直線の距離は,正射影ベクトルを求めて,その大きさを求めればよい」と分かります.

ここで正射影ベクトルの公式の出番です!

正射影ベクトルを求めるために,ベクトル\((a,~b)\)を正規化(大きさを1にすること)しておきましょう:
\[\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}
\left(\begin{array}{c}
a \\
b \\
\end{array}\right)
\]
このベクトルを\(\overrightarrow{n}\)とおきます.すると,正射影ベクトルの公式から,\(\overrightarrow{\mathrm{AH}}\)は\[(\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{n})\overrightarrow{n}\]と書けますね.\[\overrightarrow{\mathrm{AP}}=\left(\begin{array}{c} x_0\\ y_0\end{array}\right)-\left(\begin{array}{c} p\\ q\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c} x_0-p\\ y_0-q\end{array}\right)
\]
ですから,計算すると
\[
\begin{align*}
&\overrightarrow{\mathrm{AH}}=(\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{n})\overrightarrow{n}\\
=&\left\{\left(\begin{array}{c} x_0-p\\ y_0-q\end{array}\right)\cdot\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}
\left(\begin{array}{c}
a \\
b \\
\end{array}\right)\right\}\overrightarrow{n}\\
=&\frac{a(x_0-p)+b(y_0-q)}{\sqrt{a^2+b^2}}\overrightarrow{n}
\end{align*}
\]
\(\mathrm{AH}=|\overrightarrow{\mathrm{AH}}|\)ですから,\(\left| \overrightarrow{n}\right|=1\)であることに注意して,
\[
\begin{align*}
\mathrm{AH}=&|\overrightarrow{\mathrm{AH}}|\\
=&\left|\frac{a(x_0-p)+b(y_0-q)}{\sqrt{a^2+b^2}}\overrightarrow{n}\right|\\
=&\frac{|ax_0+by_0-ap-bq|}{\sqrt{a^2+b^2}}|\overrightarrow{n}|\\
=&\frac{|ax_0+by_0-ap-bq|}{\sqrt{a^2+b^2}}
\end{align*}
\]
ここで,\((p,~q)\)は直線\(l\)上の点でしたから,\[ap+bq+c=0\quad \text{すなわち}\quad c=-ap-bq\]が成り立ちます.したがって,上の式は結局
\[\mathrm{AH}=\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\]となります.

この証明のいいところは,まず簡潔で記述量(計算量)が少ない(=かっこいい)という点,それにこの公式の三次元バージョンとでもいいますか「点の平面の距離の公式」を導出する際もまったく同じように応用できるという点です.他にも,数学検定1級1次の問題でこのアイデアが使える問題がありました.いずれ紹介したいと思います.

また,この証明を通して「正射影ベクトルの公式」の使いどころも感じて貰えたかと思います.

今回はとりあえずここまでにして,「点と平面の距離の公式」も後ほど記事にしてみたいと思います.

シグマ計算の工夫

問題
\(\displaystyle \sum^n_{k=1}(ak+b)\)を計算せよ.ただし\(a,b\)は定数.

これを計算せよと言われたら次のように計算すると思います.
\[
\begin{align*}
\displaystyle \sum^n_{k=1}(ak+b)&=a\sum^n_{k=1}k+\sum^n_{k=1}b&\Sigma\text{の分配法則}\\
&=a\frac{1}{2}n(n+1)+bn&\Sigma\text{の公式}\\
&=\frac{a}{2}n^2+\frac{a}{2}n+bn&\text{計算して}\\
&=\frac{a}{2}n^2+(\frac{a}{2}+b)n&\text{整理}
\end{align*}
\]

しかし,これは次のように計算するのが実戦的です.

\[
\begin{align*}
\displaystyle \sum^n_{k=1}(ak+b)&=\frac{n\left\{(a+b)+(an+b)\right\}}{2}\\
&=\frac{n(an+a+2b)}{2}
\end{align*}
\]

このように一行で済みます.これはどう考えたのかというと・・・

まず,\(\Sigma\)の後ろが\(k\)についての1次式\(ak+b\)であることから,聞かれているものが「等差数列の和」であることが見て取れます(ここを見抜くのがポイント).ですからあとは等差数列の和の公式を使えばいいだけです.等差数列の和の公式で必要な要素は項数,初項,末項でしたが,これらは暗算ですぐに調べられます:

項数は?今,\(\sum^n_{k=1}\),つまり\(1\)番から\(n\)番までの和,ですから項数は\(n\)個です.

初項は?\(ak+b\)の\(k\)に\(k=1\)と代入すればいいでしょう.\(a\cdot 1+b=a+b\).

末項は?\(ak+b\)の\(k\)に\(k=n\)と代入すればいいでしょう.\(a\cdot n+b=an+b\).

このように,項数\(n\),初項\(a+b\),末項\(an+b\)とすぐに分かりますから,あとはこれらを等差数列の和の公式に当てはめ,\[\frac{n\left\{(a+b)+(an+b)\right\}}{2}=\frac{n(an+a+2b)}{2}\]と即答できるわけです.

練習問題
\(\displaystyle \sum^{3n-1}_{k=7}(3k+2)\)を計算せよ.

これも,

\[
\begin{align*}
\displaystyle \sum^{3n-1}_{k=7}(3k+2)=&3\sum^{3n-1}_{k=7}k+\sum^{3n-1}_{k=7}2\\
=&3\left(\sum^{3n-1}_{k=1}k-\sum^{6}_{k=1}k\right)+\left(\sum^{3n-1}_{k=1}2-\sum^{6}_{k=1}2\right)\\
=&\cdots
\end{align*}
\]

として計算するのは悪手です.

上のように,\(\Sigma\)の後ろが\(k\)についての1次式であることから,等差数列の和であることを見抜き,項数,初項,末項を調べます.

項数は?今,\(\sum^{3n-1}_{k=7}\),つまり\(7\)番から\(3n-1\)番までの和,ですから項数は\((3n-1)-7+1=3n-7\)個です(\(+1\)に注意!).

初項は?\(3k+2\)の\(k\)に\(k=7\)と代入すればいいでしょう.\(3\cdot 7+2=23\).

末項は?\(3k+2\)の\(k\)に\(k=3n-1\)と代入すればいいでしょう.\(3\cdot (3n-1)+2=9n-1\).

よって,等差数列の和の公式より,
\[
\begin{align*}
\displaystyle \sum^{3n-1}_{k=7}(3k+2)&=\frac{(3n-7)\left\{23+(9n-1)\right\}}{2}\\
&=\frac{(3n-7)(9n+22)}{2}
\end{align*}
\]

と即答できます.

 

部分分数分解

数学Bで学びますが,この話題が教科書の例題や練習題に登場する際は,部分分数分解済の式が問題文中で天下りに与えれるのみで,肝心の「どう部分分数分解」するのかには全く触れていません.しかし,実戦では部分分数分解済の式が与えられることなどまずなく,自分で部分分数分解しなければなりません.そこで,ここでは「部分分数分解の仕方」について書いていきたいと思います.

・・・ところで,そもそもなぜ部分分数分解をするのでしょうか?というか,なぜ部分分数分解をしようと思うのでしょうか?方法論の前に,まずこの点にから見ていこうと思います.

少し話が飛びますが,\(\Sigma k^2\)や\(\Sigma k^3\)の公式を導出する際にどんなアイデアを使ったかを思い出しましょう.前者は\((k+1)^3-k^3=3k^2+2k+1\)という恒等式を,後者は\((k+1)^4-k^4=4k^3+6k^2+4k+1\)という恒等式を考え,\(k\)を\(1\)から\(n\)まで変えて辺々足し加えた,つまり

\[
\begin{align*}
&\sum^n_{k=1}\{ (k+1)^3-k^3\}=\sum^n_{k=1}(3k^2+2k+1)\\
&\sum^n_{k=1}\{ (k+1)^4-k^4\}=\sum^n_{k=1}(4k^3+6k^2+4k+1)
\end{align*}
\]

を計算することで例の公式\(\Sigma k^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\)や\(\Sigma k^3=\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^2\)が得られたのでした.

なぜうまく計算ができて,このような公式をつくることができたのしょうか?

左辺の\(\Sigma\)のうしろ\((k+1)^3-k^3\)を見てみましょう.\(f(k)=k^3\)とおくと,\(f(k+1)=(k+1)^3\)となりますから\((k+1)^3-k^3\)は\(f(k+1)-f(k)\)と表せます.

\((k+1)^4-k^4\)についても同様に\(f(k)=k^4\)とおくと,\(f(k+1)=(k+1)^4\)となりますからやはり\((k+1)^4-k^4\)も\(f(k+1)-f(k)\)と表せます.

どうやら,「\(\Sigma\)の後ろを\(f(k+1)-f(k)\)という形にする」というところに秘密がありそうです.実際,\(\sum (f(k+1)-f(k))\)を計算してみると

\[
\begin{align*}
&\sum^n_{k=1}(f(k+1)-f(k))\\
=&(f(2)-f(1))+(f(3)-f(2))+(f(4)-f(3))+\cdots+(f(n+1)-f(n))\\
=&f(n+1)-f(1)
\end{align*}
\]

となって途中項同士が打ち消しあい,いわば「中抜け」現象がおきて生き残りが\(f(n+1)\)と\(f(1)\)だけになってくれるという,とても嬉しいことが起きます.

このように,\(\Sigma k^2\)や\(\Sigma k^3\)の公式を教科書で導出する際は\((k+1)^3-k^3=3k^2+2k+1\)や\((k+1)^4-k^4=4k^3+6k^2+4k+1\)という恒等式が天下りに与えらえていましたが,どちらも実は「\(f(k+1)-f(k)\)という形を作りたい」という積極的な動機のもとに用意する式だった,と言えます.

\(\Sigma\)計算はその背景に「\(f(k+1)-f(k)\)という形を作りたい」という気持ちがある,ということが分かりました.この点を踏まえた上で,改めて部分分数分解を眺めてみましょう.

例えば\(\sum^n_{k=1}\frac{1}{k(k+2)}\).これもやはり\(f(k+1)-f(k)\)という形を作りたいわけですから,「\(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2}\)と部分分数分解できたら嬉しいなあ・・・」と予想(というか願望?)します.なぜなら\(f(k)=\frac{1}{k}\)とおけば\(\frac{1}{k+2}\)は\(f(k+2)\)と表せることになり,\(f(k)-f(k+2)\)が現れるからです(\(f(k+1)-f(k)\)でなく\(f(k)-f(k+2)\)でいいの?と思った人.大丈夫,これらに本質的な違いはありません,どちらも「中抜け現象」がおきますから).

しかしあくまでこれは「予想」なので,確かめてみる必要があるわけです.予想した\(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2}\)を計算して\(\frac{1}{k(k+2)}\)になるか確かめてみましょう.

\[\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2}=\frac{(k+2)-k}{k(k+2)}=\frac{2}{k(k+2)}\]

失敗しました.欲しいのは\(\frac{1}{k(k+2)}\)であって,\(\frac{2}{k(k+2)}\)ではありません.しかし,これは実りある失敗です.なぜなら,今得た式

\[\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2}=\frac{2}{k(k+2)}\]

は,ちょっと細工すれば,すなわち両辺を2で割ってやれば

\[
\begin{align*}
&\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2}\times\frac{1}{2}=\frac{2}{k(k+2)}\times\frac{1}{2}\\
&\frac{1}{k(k+2)}=\frac{1}{2}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2}\right)
\end{align*}
\]

が得られます.\(\frac{1}{2}\)がついているものの,ちゃんと\(f(k)-f(k+2)\)という形になっています.これならうまくいきそうです.

このように,部分分数分解は,「\(f(k+1)-f(k)\)のような形を作りたい」という動機がまず最初にあり,その気持ちから然るべき予想をし,「予想を計算,その結果をあとで微調整」と考えるのが肝というわけです.

練習問題
\(S_n=\sum^{n}_{k=1}a_k\)とする.このとき,
\[\sum^n_{k=1}\frac{a_{k+1}+a_{k+2}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}\]を\(S_1,~S_2,~S_{n+1},~S_{n+2}\)で表せ.

\(\sum\)のうしろを\(f(k+1)-f(k)\)や\(f(k+2)-f(k)\)のような形にしたいという気持ちから,\(\frac{a_{k+1}+a_{k+2}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}=\frac{1}{S_{k+2}S_{k+1}}-\frac{1}{S_{k+1}S_{k}}\)ではないか?と予想します(\(f(k)=\frac{1}{S_{k+1}S_{k}}\)とおくと\(f(k+1)=\frac{1}{S_{k+2}S_{k+1}}\)となって\(f(k+1)-f(k)\)という形が現れますから).

この予想が正しいか,計算して確認してみます.

\[
\begin{align*}
&\frac{1}{S_{k+2}S_{k+1}}-\frac{1}{S_{k+1}S_{k}}=\frac{S_{k}-S_{k+2}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}\\
=&\frac{(a_1+a_2+\cdots+a_k)-(a_1+a_2+\cdots+a_k+a_{k+1}+a_{k+2})}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}\\
=&-\frac{a_{k+2}+a_{k+1}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}
\end{align*}
\]

すなわち

\[\frac{1}{S_{k+2}S_{k+1}}-\frac{1}{S_{k+1}S_{k}}=-\frac{a_{k+2}+a_{k+1}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}\]

を得ます.\(-\)(マイナス)が邪魔ですね.両辺に\(-1\)を掛けて微調整しましょう.

\[\frac{a_{k+2}+a_{k+1}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}=\frac{1}{S_{k+1}S_{k}}-\frac{1}{S_{k+2}S_{k+1}}\]

よって,

\[\sum^{n}_{k=1}\frac{a_{k+2}+a_{k+1}}{S_kS_{k+1}S_{k+2}}=\sum^{n}_{k=1}\left(\frac{1}{S_{k+1}S_{k}}-\frac{1}{S_{k+2}S_{k+1}}\right)\]

「\(f(k)-f(k+1)\)」という形が作れたので,これでうまく「中抜け現象」を作り出せそうですね(以下解答は割愛).

基本ベクトルの外積

同じ基本ベクトル同士の外積は,\(\overrightarrow{0}\)になります.なぜなら,同じベクトルですからその2つのベクトルが作る平行四辺形の面積は0であるから,外積の大きさも0(外積の定義ⅲを参照),したがって\(\overrightarrow{0}\)です.

異なる基本ベクトル同士の外積ならどうでしょうか.たとえば,\(\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_2}\)を考えてみます.

\(\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_2}\)とは,外積の定義ⅰとⅱにより,図1に示す赤いベクトルであるといえます.さらに,\(\overrightarrow{e_1}\)と\(\overrightarrow{e_2}\)が作る平行四辺形は,正方形ですから,その面積は\(1\times1=1\)です.したがって,先ほどの赤いベクトル\(\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_2}\)の大きさは\(1\)である,と言えます(図2参照).

以上により,\(\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_2}\)は上の図の赤いベクトルで,しかもその大きさは\(1\)であることが分かります.このベクトルはほかならぬ\(\overrightarrow{e_3}\)ですね.同様に考え,\(\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_3}\)や\(\overrightarrow{e_3}\times\overrightarrow{e_2}\)なども導出できます.

ベクトルの外積

外積を定義します.

外積

    1. \(\overrightarrow{a}\)と\(\overrightarrow{b}\)に対して垂直で,
    2. その向きが,\(\overrightarrow{a}\)から\(\overrightarrow{b}\)へねじを回したときにねじが進む向きと一致し,
    3. その大きさが,\(\overrightarrow{a}\)と\(\overrightarrow{b}\)が作る平行四辺形の面積と一致する

ようなベクトルを「外積(outer product)」と呼び,\[\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b}\]と表す.

ことにします.上図の赤いベクトルですね.定義しただけでは役に立たないので,実際にこの外積を求めてみましょう.\(\overrightarrow{a}=(a_1,~a_2,~a_3),~\overrightarrow{b}=(b_1,~b_2,~b_3)\)とおくことにします.

まず,\(\overrightarrow{a}\)は基本ベクトル\(\overrightarrow{e_1}=(1,~0,~0),~\overrightarrow{e_2}=(0,~1,~0),~\overrightarrow{e_3}=(0,~0,~1)\)を用いて,
\[
\begin{align*}
\overrightarrow{a}=
&\left(
\begin{array}{c}
a_1\\
a_2\\
a_3
\end{array}
\right)
=
\left(
\begin{array}{c}
a_1\\
0\\
0
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{c}
0\\
a_2\\
0
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{c}
0\\
0\\
a_3
\end{array}
\right)\\
&=a_1\left(
\begin{array}{c}
1\\
0\\
0
\end{array}
\right)
+
a_2\left(
\begin{array}{c}
0\\
1\\
0
\end{array}
\right)
+
a_3\left(
\begin{array}{c}
0\\
0\\
1
\end{array}
\right)\\
&=a_1\overrightarrow{e_1}+a_2\overrightarrow{e_2}+a_3\overrightarrow{e_3}
\end{align*}
\]

と\(e_1,~e_2,~e_3\)の1次結合で表すことができます.同様にして

\[\overrightarrow{b}=b_1\overrightarrow{e_1}+b_2\overrightarrow{e_2}+b_3\overrightarrow{e_3}\]

したがって外積\(\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}\)は

\[\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}=(a_1\overrightarrow{e_1}+a_2\overrightarrow{e_2}+a_3\overrightarrow{e_3})\times(b_1\overrightarrow{e_1}+b_2\overrightarrow{e_2}+b_3\overrightarrow{e_3})\]

と書けることになります.これを「計算」してみればよい.しかしここでひとつ問題があります.「\(\times\)」に関する計算法則を,まだ私たちはなにも知りません(普段使っている「掛ける」とは見た目が同じだけで別物です).したがって,まずこの「\(\times\)」がどのような計算法則を持つのか,調べなくてはなりません.

結論から先に述べますと,

\[
\begin{align*}
&\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}=-\overrightarrow{b}\times\overrightarrow{a}\tag{A}\\
&k(\overrightarrow{a}\times \overrightarrow{b})=(k\overrightarrow{a})\times \overrightarrow{b}=\overrightarrow{a}\times (k\overrightarrow{b})\tag{B}\\
&\overrightarrow{a}\times(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{c}\tag{C}
\end{align*}
\]

が成り立ちます(\(\mathrm{(A)}\)は定義より明らか.\(\mathrm{(B)}\),\(\mathrm{(C)}\)).注意したいのは,1つ目,「交換するとマイナスがつく」ということです.外積という新しい定義を導入したわけですから,当然,これまでの常識(交換法則)が通用するとは限らないわけです.

では,これらの計算法則に従って,計算してみましょう(実際に紙に書いて手を動かしてみることをおすすめします).

\[
\begin{align*}
&~\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}\\
=&~(a_1\overrightarrow{e_1}+a_2\overrightarrow{e_2}+a_3\overrightarrow{e_3})\times(b_1\overrightarrow{e_1}+b_2\overrightarrow{e_2}+b_3\overrightarrow{e_3})\\
=&~a_1\overrightarrow{e_1}\times b_1\overrightarrow{e_1}+a_1\overrightarrow{e_1}\times b_2\overrightarrow{e_2}+a_1\overrightarrow{e_1}\times b_3\overrightarrow{e_3}\\
&+a_2\overrightarrow{e_2}\times b_1\overrightarrow{e_1}+a_2\overrightarrow{e_2}\times b_2\overrightarrow{e_2}+a_2\overrightarrow{e_2}\times b_3\overrightarrow{e_3}\\
&+a_3\overrightarrow{e_3}\times b_1\overrightarrow{e_1}+a_3\overrightarrow{e_3}\times b_2\overrightarrow{e_2}+a_3\overrightarrow{e_3}\times b_3\overrightarrow{e_3}\\
=&~a_1b_1(\overrightarrow{e_1}\times \overrightarrow{e_1})+a_1b_2(\overrightarrow{e_1}\times \overrightarrow{e_2})+a_1b_3(\overrightarrow{e_1}\times \overrightarrow{e_3})\\
&+a_2b_1(\overrightarrow{e_2}\times \overrightarrow{e_1})+a_2b_2(\overrightarrow{e_2}\times \overrightarrow{e_2})+a_2b_3(\overrightarrow{e_2}\times \overrightarrow{e_3})\\
&+a_3b_1(\overrightarrow{e_3}\times \overrightarrow{e_1})+a_3b_2(\overrightarrow{e_3}\times \overrightarrow{e_2})+a_3b_3(\overrightarrow{e_3}\times \overrightarrow{e_3})
\end{align*}
\]

ここで,

\[
\begin{align*}
&\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_1}=\overrightarrow{e_2}\times\overrightarrow{e_2}=\overrightarrow{e_3}\times\overrightarrow{e_3}=\overrightarrow{0} \\
&\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_2}=\overrightarrow{e_3},\quad\overrightarrow{e_1}\times\overrightarrow{e_3}=-\overrightarrow{e_2}\\
&\overrightarrow{e_2}\times\overrightarrow{e_1}=-\overrightarrow{e_3},\quad\overrightarrow{e_2}\times\overrightarrow{e_3}=\overrightarrow{e_1}\\
&\overrightarrow{e_3}\times\overrightarrow{e_1}=\overrightarrow{e_2},\quad\overrightarrow{e_3}\times\overrightarrow{e_2}=-\overrightarrow{e_1}
\end{align*}
\]

ですから(なぜ?),結局外積\(\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}\)は
\[
\begin{align*}
\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}
=&~a_1b_1\cdot \overrightarrow{0}+a_1b_2\overrightarrow{e_3} -a_1b_3\overrightarrow{e_2}\\
&-a_2b_1\overrightarrow{e_3}+a_2b_2\cdot \overrightarrow{0}+a_2b_3\overrightarrow{e_1}\\
&+a_3b_1\overrightarrow{e_2}-a_3b_2\overrightarrow{e_1}+a_3b_3\cdot \overrightarrow{0}\\
=&~(a_2b_3-a_3b_2)\overrightarrow{e_1}+(a_3b_1-a_1b_3)\overrightarrow{e_2}+(a_1b_2-a_2b_1)\overrightarrow{e_3}\\
=&~(a_2b_3-a_3b_2)\left(
\begin{array}{c}
1\\
0\\
0
\end{array}
\right)
+
(a_3b_1-a_1b_3)\left(
\begin{array}{c}
0\\
1\\
0
\end{array}
\right)
+
(a_1b_2-a_2b_1)\left(
\begin{array}{c}
0\\
0\\
1
\end{array}
\right)\\
=&~\left(
\begin{array}{c}
a_2b_3-a_3b_2\\
a_3b_1-a_1b_3\\
a_1b_2-a_2b_1\\
\end{array}
\right)
\end{align*}
\]

を得ます.この結果は覚えておくとよいでしょう.以下のように覚えるのがおすすめです.

\[\overrightarrow{a}\times\overrightarrow{b}=\left(
\begin{array}{c}
a_2b_3-a_3b_2\\
a_3b_1-a_1b_3\\
a_1b_2-a_2b_1\\
\end{array}
\right)\]

内積(inner product)と言葉自体は似ているのですが,内積はスカラー量であるのに対して,外積はベクトル量であることに注意してください.

注意
高校数学においても垂直なベクトルを求めるシーンは多いのですが,高校範囲外なので,テストや模試等では検算にとどめておくのが無難かも知れません.

正射影ベクトル

ここに始点が揃った2つのベクトル\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)があります.\(\vec{a}\)による\(\vec{b}\)への落とした影となるベクトルを,「\(\vec{a}\)の正射影ベクトル」と呼びます.この\(\vec{a}\)の正射影ベクトルを求めてみましょう.

まず,\(\vec{b}\)と同じ向きの単位ベクトル\(\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}\)(下図青のベクトル)が1目盛りになるような軸(下図赤の軸)を設定します.このとき,正射影ベクトルの終点が指し示す場所の座標はいくらになるでしょうか.三角比の公式より,\(|\vec{a}|\cos\theta\)ですね.これは\(\theta\)が鈍角のときも成り立ちます.\[\text{正射影ベクトルの終点が指し示す座標は,}|\vec{a}|\cos\theta\text{で表される}\]

※ ここで「えっ?」と思った人は拡張された三角比の定義とそこから作られる定理(公式)が怪しい.定義を大切にしない人はこういうところで躓きます!※

したがって,単位ベクトル\(\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}\)に,この「座標」を掛けてやれば,正射影ベクトルが求まります.\[\text{正射影ベクトル}=\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}|\vec{a}|\cos\theta\]これで正射影ベクトルを表す式が手に入りました.

・・・と,上の式を公式としてもいいのですが,見た目がちょっと汚いので,もう少し手を加えてみましょう.上の単位ベクトル\(\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}\)を\(\vec{e}\)と表すことにして,さらに\(|\vec{a}|\cos\theta\)が
\[
\begin{align*}
|\vec{a}|\cos\theta&=|\vec{a}||\vec{e}|\cos\theta\\
&=\vec{a}\cdot\vec{e}
\end{align*}
\]
と表せることに注意すると,結局正射影ベクトルは,\[(\vec{a}\cdot\vec{e})\vec{e}\]とシンプルに記述できることになります.この結果は記憶に値します.というか常識にしておきたい知識です.なぜなら,「正射影ベクトル」が欲しくなるシチュエーションは入試その他で頻出だからです.

後日,この正射影ベクトルが使われる例を紹介してみたいと思います.