★条件付き期待値

\(E(Y)=E(E(Y|X))\)

証明
\begin{align*}
E(E(Y|X))&=\int_{-\infty}^{\infty}E(Y|X=x)f_{X}(x)dx\\
&=\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}yf_{Y|X}(y|x)dy\right)f_{X}(x)dx\\
&=\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}y\frac{f_{X,Y}(x,y)}{f_X(x)}dy\right)f_{X}(x)dx\\
&=\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}yf_{X,Y}(x,y)dydx\\
&=\int_{-\infty}^{\infty}ydy\int_{-\infty}^{\infty}f_{X,Y}(x,y)dx\\
&=\int_{-\infty}^{\infty}yf_Y(y)dy=E(Y)\\
\end{align*}

気を付けたいこと:
\(E(Y|X)\)自体が(条件付き期待値の定義より)確率変数\(X\)の関数で,確率変数.

ルート計算

中学で学ぶルート計算について一言.

例えばこんな計算をしなければならないとしましょう.\[\sqrt{27\times 45}\]ルート計算を学び始めだと,このように計算すると思います.まず\(27\times 45\)を「ひっ算で」計算して,\[\sqrt{27\times 45}=\sqrt{1215}\]次に\(1215\)をまた「ひっ算で」素因数分解して,\[\sqrt{3\times3\times3\times3\times3\times5}\]よって,\[3\times3\sqrt{15}=9\sqrt{15}\]となります.さて,ここで行った計算を振り返ってみましょう.\[\text{ルートの中身を計算}\rightarrow\text{素因数分解}\rightarrow\text{2人いる因数を外に出す}\]つまり差し当たっての目標は\[\text{2人いる因数を探すこと}\]です.これが目的です.であるならば,最初からこれを行えばいいのではないでしょうか?なぜなら,最初のルートの中身が\(27\times 45\)という,「因数が見やすい」形なのですから.すると,ひっ算をするまでもなく,
\[
\begin{align*}
&27=9\times3\\
&45=5\times9
\end{align*}
\]
すなわち,\[\text{27には9が1人,45にも9が1人いる}\]ことが見えます.結局,\[\text{27}\times\text{45には}\text{9が2人いる}\]ことが分かります.したがって,ルートの外は9となり,5と3がルートの中に居残ることになります.よって答えは,暗算で\[9\sqrt{15}\]とすぐに答えられます.

最初に示した計算方法は,例えるならば,「目的はバラバラにすることなのに,そのバラバラのものを一度寄せ集めて一つにして,またまたバラバラにする」という,いわば二度手間をしているわけです.

・・・以上,このルートの例は単純な例ですが,このように計算する生徒が意外に少なくないように思います.

一般に,計算とは面倒なものです.そのような面倒な計算に出会ったとき,\[\text{面倒}\rightarrow\text{だけど我慢して行う}\]という姿勢は,「努力している」という意味では褒められるべきかも知れませんが,数学的にはあまり実り多き努力とは言えないと個人的に思います.それよりも,\[\text{面倒}\rightarrow\text{それを避ける何かうまい方法はないか}\]と考える癖をつけるのことの方が数学的成長の上で大切だと思います.

塾の場所について

ピアノ教室の看板がありますが以前姉が開いていた教室です(現在は田中前に引っ越しました!).今は数学塾です!

気仙沼市の松崎柳沢にあります.気仙沼バイパス沿いのケーズデンキから松岩中学校方面に向かって行った近くにあります.住宅街なので,ちょっとわかりにくいのですが・・・^^;

松岩地区,面瀬地区,ももちろん,田中前地区からも通いやすいと思います.無料の体験授業を随時受け付けておりますので,ご希望の際はお電話かまたはお問い合わせページからご連絡下さい^^

教室風景です.・・・ホワイトボードの謎の落書きは甥っ子たちが書き残していったものです^^;  ホワイトボードは増設予定!

数学が「得意」?

高校生の声でよく聞くのが「中学では数学が得意だったのに高校では全然できなくなった」という声です.なぜ,このようなことが起きるのでしょうか.ちょっと考えてみたいと思います.

ところで,「数学が得意」「数学ができる」とは,具体的にどういう力を指すのでしょうか.ここで数学の力について考えてみましょう.

「数学とは何か」というのはまさに深遠なテーマで,正直なところ僕ごときに語れる話ではありません.だけど,高校数学・受験数学という立場からは確証的に言えます.僕は以下の二つの力だと思っています.

    1. 演繹的に考える力
    2. 未知のもの,数値,条件を結び付ける力

1.について.「演繹」という言葉は聞きなれない言葉だと思います.「演繹的に考える」とは,簡単に言うと「理由付けしながら考察する」ということです.
これと対の考え方として「帰納」という言葉があります.これは簡単にいうと「具体例から予測する」という考え方です.

例えばこんな例を考えて貰えばわかりやすいと思います.ある学校の次回の数学のテスト内容についてA君とB君が話合っています.その内容は,次のテストで「問題\(\beta\)が出題されるか否か」という話題です.

A君はこう主張しました:
「先輩からもらった過去問10年分によると,10年連続で問題\(\beta\)は出題されている.だから今年も問題\(\beta\)が出るはずだ」

一方,B君はこう主張しました:
「範囲内の問題は全部で問題\(\alpha\)と問題\(\beta\)と問題\(\gamma\)から構成されている.しかし以前先生は「この範囲から問題\(\alpha\)と問題\(\gamma\)は出題しない」と言っていた.ということは,問題\(\beta\)が出題されるはずだ」

結論は両社同じく「問題\(\beta\)が出題される」ですが,その結論に至る過程が異なります.前者が帰納的な考え方で,後者が演繹的な考え方です.

2.について.問題(数値決定問題)は,必ず,求めるべき「未知のもの」,与えられた「数値」,そして「条件」で構成されています.
これらを数式,日本語,絵,表を用いて適切な言い換えを行い状況を正しく把握・理解し,そして整理して結びつける,という作業により問題は解決します(解けます).

さて,中学数学においてこの1.と2.に対応する分野はなんでしょうか.それは「証明問題」「文章問題」です.この分野で得られる力こそが,(とりあえず高校数学的立場から見た)「数学の力」と言っていいでしょう.

しかしながら,この分野は中学数学分野における小さな領域でしかありません.大部分をしめるのは機械的な「計算問題」です.「計算問題」が正確に出来さえすれば,ある程度の高得点が取れてしまう,ということです.ここに,生徒の「誤解」が生まれます.

つまり,冒頭で話した「数学が得意な」中学生とは,実は数学ではなく「計算が」得意なだけであった,ということで,ちょっと厳しめの言い方をすると「自分が数学が得意だと思い込んでいただけで,そもそも数学が得意ではなかった」ということです.このように考えれば「高校で数学ができなくなった,苦手になった」というのは当然の帰結であると言えます.

もちろん,「計算が正確に出来る」というのは数学を学ぶ上で超重要なスキルです.これが出来なければ数学はできない文字通りの基礎力ですし,ここをしっかり押さえた努力は褒めて然るべきです.しかし残念ながら,\[\text{数学ができる人}\Longrightarrow\text{計算が出来る人}\]は言えますが,\[\text{計算が出来る人}\Longrightarrow\text{数学が出来る人}\]は必ずしも言えません.

以上により,中学~高校と,数学の学習を連続的な視点でとらえた場合,中学数学を学ぶ際の「力点の置き方」が重要になることが分かります.こういった姿勢を早い段階で得ておくことが,高校へのスムーズな接続,ひいては将来的な第一志望大学合格へ繋がるものと当塾では考えております.

正射影ベクトル

ここに始点が揃った2つのベクトル\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)があります.\(\vec{a}\)による\(\vec{b}\)への落とした影となるベクトルを,「\(\vec{a}\)の正射影ベクトル」と呼びます.この\(\vec{a}\)の正射影ベクトルを求めてみましょう.

まず,\(\vec{b}\)と同じ向きの単位ベクトル\(\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}\)(下図青のベクトル)が1目盛りになるような軸(下図赤の軸)を設定します.このとき,正射影ベクトルの終点が指し示す場所の座標はいくらになるでしょうか.三角比の公式より,\(|\vec{a}|\cos\theta\)ですね.これは\(\theta\)が鈍角のときも成り立ちます.\[\text{正射影ベクトルの終点が指し示す座標は,}|\vec{a}|\cos\theta\text{で表される}\]

※ ここで「えっ?」と思った人は拡張された三角比の定義とそこから作られる定理(公式)が怪しい.定義を大切にしない人はこういうところで躓きます!※

したがって,単位ベクトル\(\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}\)に,この「座標」を掛けてやれば,正射影ベクトルが求まります.\[\text{正射影ベクトル}=\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}|\vec{a}|\cos\theta\]これで正射影ベクトルを表す式が手に入りました.

・・・と,上の式を公式としてもいいのですが,見た目がちょっと汚いので,もう少し手を加えてみましょう.上の単位ベクトル\(\frac{\vec{b}}{|\vec{b}|}\)を\(\vec{e}\)と表すことにして,さらに\(|\vec{a}|\cos\theta\)が
\[
\begin{align*}
|\vec{a}|\cos\theta&=|\vec{a}||\vec{e}|\cos\theta\\
&=\vec{a}\cdot\vec{e}
\end{align*}
\]
と表せることに注意すると,結局正射影ベクトルは,\[(\vec{a}\cdot\vec{e})\vec{e}\]とシンプルに記述できることになります.この結果は記憶に値します.というか常識にしておきたい知識です.なぜなら,「正射影ベクトル」が欲しくなるシチュエーションは入試その他で頻出だからです.

後日,この正射影ベクトルが使われる例を紹介してみたいと思います.

問題演習

数学の演習問題って,大別すると,

  1. 既知の問題.解くのに必要な知識は揃っており,出題形式が多少違えどほとんど手が止まることのない問題.万が一解けなかったとしても,解答を見れば一目でその内容が理解できる問題.
  2. 未知の問題.解くのに必要な知識は揃っておらず,したがって解法を見つけるのに多くの時間を要する問題.ときに知識自体がないがゆえに解けない問題.解答を見てもその理解に時間を要する問題.

の2種類あると思う.それぞれの特徴をあげると,

(1.の長所)
・既に持っている知識がアウトプットされるため知識が実用レベルで定着する
・解いていて手が止まることがないのでストレスがない
・解けるので気分が高揚する.自己肯定感が湧く

(2.の長所)
・未知の知識が蓄積されることになるので,その知識をモノにできれば,確実に成長したことになる.
・既存の知識の範囲中で解決を図ることは,既存知識の運用法を学ぶことになる(俗にいう「思考力」).またその過程で既存知識の新たな側面を発見することがある.
・解けたら嬉しい

一方で,それぞれの演習における短所を挙げてみると,

(1.の短所)
・出来る(知っている)問題をいくらやっても実質的な成長にはならない
・とりあえず疲れはするので,それだけで満足(自己満足)になりがち

(2.の短所)
・とにかく時間がかかる
・基本的に解けないので,気持ちが萎える
・量がこなせないので,成長しているかどうか微妙

以上を鑑みると,この両者の勉強はバランスよく交えて学習していくことが望ましいと思う.ここで確実に言えるのは,

  • 勉強のし始めは1.レベルの演習から入った方がいい.なぜならとりあえず手が動くから自然と気持ちが前向きになる.
  • 1.のレベルの問題で満足せず,たとえ一問でもいいから,2.レベルの問題も毎日必ず触れる.

とくにひとつ目,「手が動かす」っていうのは精神衛生上非常に重要で,例えば一日の勉強を「悩む」こと(難しい問題)から始めると,気持ちは暗くなるし時間はダラダラ過ぎるしで僕の経験上からみてもあまりいいことがない.手も体の一部である以上,手を動かす=体を動かすということだから,手を動かす勉強から始めることは自然と精神が前向きになるなにかがあるようです.数学に限らず,例えば英語なら,英文や英単語帳を音読したりするのも有効です.

この過程で気分も高揚し,運動後のような一種の心地よい疲労感・達成感に満たされますが,ここで満足してはいけません.調子がついてきたところで,2.レベルの問題にも触り,頭に負荷をかけておいたり,新規知識を獲得したりすることもまた成長のためには不可欠です.

「定義にしたがう」ということ

数学は,論理によって演繹的に記述される学問です.したがって,何かしら判断を下したいときは,以前の取り決め;定義(やその取り決めから得られた他の結論;定理)を思い出し,それらから淡々と判断を下していけばいいだけのことです.この一連の流れを「定義に従って・・・」とよく言われます.

例えるならば,スポーツで判定に迷う際どいプレーがあったとします.その際,下すべき判定は何に依るでしょうか.過去の判例でしょうか.選手や観客の投票でしょうか.その場の雰囲気でしょうか.いいえ,単純に「ルール」でしょう.それと同じです.

この「定義にしたがって判断する」という姿勢は数学を学ぶ上では「当たり前」なのですが,中学生だけでなく高校生もこれを意識している人は少ない気がします.

【例1】
教科書の「集合」において,\[A=B\text{が成り立つことは,} A\subset{B} \text{かつ}B\subset{A}\text{が成り立つことと同じである.}\]と書いてありますが,もしこれを証明せよ,と言われたらどうしますか.ほとんどの高校生は何をすべきか途方に暮れるのではないでしょうか.こんなとき考えるべきことは,\(A=B\)と\(A\subset{B}\)の定義に戻ることです;\(A=B\)は,\[\forall x [x\in{A}\Longleftrightarrow x\in{B}]\]と定義されています.他方,\(A\subset{B}\)と\(B\subset{A}\)はそれぞれ,\[\forall x [x\in{A}\Longrightarrow x\in{B}],~\forall x [x\in{B}\Longrightarrow x\in{A}]\]と定義されています.したがって,\(A\subset{B}\land B\subset{A}\)とは,\[\forall x [x\in{A}\Longrightarrow x\in{B}]\land\forall x [x\in{B}\Longrightarrow x\in{A}]\]ということですから結局\[\forall x [x\in{A}\Longleftrightarrow x\in{B}]\]となって上で示した\(A=B\)の定義と一致します.

【例2】
「マイナス\(\times\)マイナスはプラスになる」ことをどうやって説明(証明)しますか.ここで,中学で習うような「後ろ向いて後ろを向くと前を向くから」とか「否定文の否定は肯定文になるでしょ」とかいった説明は,説明のようで説明になっていない,いわば「誤魔化し」です(現実世界の現象が数学の世界の判断根拠にはならない!).これも,「定義にしたがって」淡々と証明すればいいだけです.まず,\(0\)と負数の定義を確認しましょう.\(0\)は,\[\forall x\in\mathbb{R} [x+a=a+x=a]\]を満たす数\(a\)として定義されました.この\(a\)を\(0\)と書くことにします.次に,この\(0\)に対して,\[\forall x\in\mathbb{R} [x+a=a+x=0]\]を満たす数\(a\)を,\(-x\)と書くと定義されています.つまり\[\forall x\in\mathbb{R}[x+(-x)=(-x)+x=0]\]この定義において,\(x\)は任意ですから,\(-x\)を代入することにします.すると,\[-x+(-(-x))=0\]が得られます.両辺に\(x\)を加えることで\[-(-x)=x\]が得られます.

【例3】
\[\int_a^bf(x)dx=-\int_b^af(x)dx\]はどうやって理解すればいいでしょう.これもやはり,定義にしたがえばいいだけです;まず,(高校教科書における)定積分の定義を思い出しましょう.それは,\[\int_a^bf(x)dx=F(b)-F(a)\]でした.したがって,
\[
\begin{align*}
\text{左辺}&=\int_a^bf(x)dx\\
&=F(b)-F(a)\\
&=-(F(a)-F(b))\\
&=-\int_b^af(x)dx=\text{右辺}
\end{align*}
\]

となってあっさり終わります.ちなみに,定積分は「リーマン和の極限」と定義した方が直観的理解のためにも望ましいと個人的には思います.よくある「定積分は足し算だから云々」という説明は,この定義を意識した説明だと思いますが,しかし定積分を「原始関数の差」と定義した以上,上記のように説明するのが論理的です.

・・・このように,「判断に困ったらとりあえず定義に戻る」という姿勢は数学ではとても大事です.「問題が解ければいい」「点数さえ取れればいい」といった姿勢ではこういった視点はまず身につかないと思います.だけれども,こういった演繹的な考え方を身に付けることこそ数学を学ぶひとつの意義だと思うし,また,ハイレベルな問題を解けるようには,こういった思考を日常的に行うことが一見遠回りのように見えても結果的な近道であるような気がします.

不定方程式の解法

不定方程式の解法について考察してみます.

不定方程式\[49x-23y=1\]の解となる最小の自然数\(x\)を答えよ.

(2019 センター試験数学Ⅰ・A 改題)

定石的には,ユークリッドの互除法により特殊解を見つけて,それを代入したものを辺々引いて・・・という手順を踏みますが,合同式を利用すれば

【解答】

以下,\(\mathrm{mod} 23\)とする.

\[
\begin{align*}
&49x-23y\equiv1\\
&49x\equiv1\\
&3x\equiv1\\
&24x\equiv8\\
&x\equiv8\\
\end{align*}
\]

したがって,一般解は\(x=23k+8\)(\(k\)は任意の整数)であるから答えは\(8\)

【解答終】

・・・と,このようにスピーディーに解答できるので,ぜひマスターしておきたいところです.変形のイロハについてもいずれ記事にしたいと思ってます.塾でも希望者には合同式講座を開催しますので,ぜひ参加してください^^

極限の有名問題

数学Ⅲ極限の有名問題の論理的側面について考えてみます.

次の等式が成り立つように,定数\(a,~b\)の値を求めよ.\[\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}+b}{x-1}=2\]

(数研出版 数学Ⅲ「関数の極限」より抜粋)

\(x\rightarrow1\)とすると,左辺は\(\frac{a+b}{0}\)となり,もし\(a+b\neq 0\)とすると左辺は発散してしまいますが,この式は「左辺の極限は2に限りなく近づく(収束する)」ということを主張した式ですから矛盾してします.したがって,\(a+b=0\)であることが必要です(必要条件).そして\(b=-a\)を元の式に代入して極限計算すると・・・というおなじみの問題です.

ここでふとギモン.必要条件なのに教科書の解答では逆の考察をしていません.必要条件は逆の考察をしなければならないんじゃなかったの・・・??

これはどういうことか,論理式を用いて考察してみます.

【解答】
\begin{align*}
&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}+b}{x-1}=2\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}+b}{x-1}=2 \land a+b=0 \quad\cdots(\ast)\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a\sqrt{x}-a}{x-1}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a(\sqrt{x}-1)}{(\sqrt{x}-1)(\sqrt{x}+1)}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{a}{\sqrt{x}+1}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&\frac{a}{2}=2 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&a=4 \land b=-a\\
\Longleftrightarrow&a=4 \land b=-4\\
\end{align*}
【解答終】

模式的にかくと,\(P_1\Longrightarrow P_2\)のとき,\[P_1\Longleftrightarrow P_1\land P_2\]という同値関係が成り立つから(上の\((\ast)\))逆の考察をしなくてもいいのです.

\(a=4,~b=-4\)と答えるだけなら,上記の話は全く必要のない知識でしょう.これで正答ですし.しかし,他の記事でも書いたように,分野を超えて,それも教科書レベルの問題にすら論理の話題は潜んでいるということに注目すべきです.もっとも,数学は論理によって記述されるわけですから,当然と言えば当然ですが・・・.このような背景を理解しておくことは受験だけでなくその後の数学学習に大いに役立つと思います(例えば,数学系大学1年生を苦しめるかの悪名高き\(\epsilon\delta\)論法も,結局,高校のカリキュラムに述語論理が含まれていないがためだと個人的に思います).

ちなみに,このような\(\land,~\lor,~\Rightarrow,~\lnot\)(論理積,論理和,含意,否定)といった論理記号は,教科書では主に「ベン図」により理解したと思います.しかし正確には「真理値表」という表によって定義されます.上で言った「\(P_1\Longrightarrow P_2\)のとき,\(P_1\Longleftrightarrow P_1\land P_2\)が成り立つ」という事実も,真理値表により確かめられます.

係数比較法と数値代入法

等式
\[a(x+1)(x-1)+bx(x+1)+cx(x-1)=3x-1\]
が\(a\)についての恒等式となるように,定数\(a,~b,~c\)の値を求めよ.

(東京書籍 数学Ⅱ「式と証明」より抜粋)

この定番問題には2つのアプローチがあります。係数比較法と数値代入法です。教科書等の解答を見ると,「数値代入法」では「逆に~」という記述がある一方,「係数比較法」ではその種の記述は見当たりません。なぜか?これを論理式を用いて考察してみます。

(係数比較法)
\[
\begin{align*}
&a(x+1)(x-1)+bx(x+1)+cx(x-1)=3x-1\text{が恒等式}\\
\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}~&\forall x\in \mathbb{R}[a(x+1)(x-1)+bx(x+1)+cx(x-1)=3x-1]\\
\Longleftrightarrow~& \forall x\in \mathbb{R}[(a+b+c)x^2+(b-c-3)x-a+1=0]\\
\overset{(\ast)}{\Longleftrightarrow}~& a+b+c=0 \land b-c-3=0 \land -a+1=0\\
\Longleftrightarrow~& a=1 \land b=1 \land c=-2\\
\end{align*}
\]

どの行を眺めても,恒等式の定義(どんな\(x\)についても式が成り立つ)と単純な計算による変形なので同値性は崩しておらず,問題ありません。
強いて言えば\((\ast)\)の\(\Rightarrow\)でしょうか。気になるのは。念のため証明してみます:

\((\ast)\)の\(\Rightarrow\)の証明

背理法で考える.
\begin{align*}
&\neg (\forall x\in \mathbb{R}[(a+b+c)x^2+(b-c-3)x-a+1=0]\\
&\Rightarrow a+b+c=0 \land b-c-3=0 \land -a+1=0)\\
\Longleftrightarrow~&\forall x\in \mathbb{R}[(a+b+c)x^2+(b-c-3)x-a+1=0]\\
&\land (a+b+c\neq 0 \lor b-c-3\neq 0 \lor -a+1\neq 0)\\
\end{align*}
すると\((a+b+c)x^2+(b-c-3)x-a+1=0\)の左辺は\(2\)次関数または\(1\)次関数または定数関数(ただし\(0\)でない)となるが,いずれにしてもすべての\(x\)で\(0\)と等しくなることなく,矛盾する.

証明終

次に数値代入法で考えてみます。

(数値代入法)

与式を\(f(x)=g(x)\)とおきます。

\[
\begin{align*}
&a(x+1)(x-1)+bx(x+1)+cx(x-1)=3x-1\text{が恒等式}\\
\Longleftrightarrow~&\forall x\in \mathbb{R}[f(x)=g(x)]\\
\overset{(\ast)}{\Longrightarrow}~& f(-1)=g(-1) \land f(0)=g(0) \land f(1)=g(1)\\
\Longleftrightarrow~& a+b+c=0 \land b-c-3=0 \land -a+1=0\\
\Longleftrightarrow~& a=1 \land b=1 \land c=-2\\
\end{align*}
\]

\((\ast)\)で同値性を崩しているので,逆(十分性)を確認する.すなわち,\[a=1 \land b=1 \land c=-2~\Longrightarrow \forall x\in \mathbb{R}[f(x)=g(x)]\]を確認しなくてはなりません:

\(a=1 \land b=1 \land c=-2\)のとき,\(f(x)=g(x)\)は,

\[
\begin{align*}
&f(x)=g(x)\\
\Longleftrightarrow~&(x+1)(x-1)+x(x+1)-2x(x-1)=3x-1\\
\Longleftrightarrow~& x^2-1+x^2+x-2x^2+2x=3x-1\\
\Longleftrightarrow~& 3x-1=3x-1\\
\end{align*}
\]

と変形でききますが,これは明らかにすべての\(x\)で成り立ちます。したがって恒等式です。十分性が確認できたので,\(a=1, b=1 , c=-2\)は必要十分条件であることが確認できました。

「『どんな\(x\)でも成り立つ』のなら都合のいい\(x\)を代入してやれ~」の精神で\(-1,~0,~1\)を代入するわけですが,そうして得られた命題はあくまで「\(-1,~0,~1\)という\(x\)で\(f(x)=g(x)\)成り立つ」ことを主張しており,「すべての\(x\)で\(f(x)=g(x)\)が成り立つ(\(f(x)=g(x)\)が恒等式である)」ことを主張してはいません。つまり必要条件にしか過ぎない。だから,逆の調査が必要なのです。以前紹介した\[P_1\Longrightarrow P_2\Longrightarrow P_3\Longrightarrow\cdots \Longrightarrow P_n\]と変形してから,\[P_1\Longleftarrow P_n\](十分性)を確認する,という考え方ですね。

これは教科書の問題ですが,こういった教科書例題レベルの問題にはこういった論理が潜んでいます。学び始めは,テスト等で点数を取るために「とりあえず展開して係数を比較すればいい!」と「解法」を記憶することで一杯一杯だと思いますが,このような背景にも目を向けておくこともまた大切だと思います。

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